使用者性

労働基準法-使用者性

 

公開日 2008.10.03 あした葉経営労務研究所

使用者性(しようしゃせい)

●雇用形態、就労形態の複雑化により、労働契約を締結した当事者以外の者が、実質的に使用者としての影響力を行使するケースが増えている。使用者の概念が拡張してきているのだ。

●「使用者性」の判断については、企業内で使用者責任をだれに負担させるかという問題と、直接労働契約関係にない企業外の者であっても、労働関係に事実上の影響力を与える場合は、使用者性を認めるべきではないかという問題がある。

●構内下請け労働者の使用者は下請け企業であるが、実際は親企業の構内において、親企業の指揮命令に基づき就労するケースがある。これは労働者供給事業として違法だが、労働基準法や労働安全衛生法上の使用者責任は親企業が負うことになる。

●また、業務処理請負会社の労働者も、発注者から直接指揮命令を受けることで偽装請負となるが、この場合に、業務処理請負会社が使用者としての役割を果たしておらず、発注者と労働者との指揮命令関係が明確であれば、請負関係が形骸化しているとして、発注者と労働者との間で、黙示の労働契約が成立していると判断されることもある。

●在籍型出向の場合、労働者は出向元、出向先双方に労働契約があり、出向元における身分、出向先での待遇等は三者間での取り決めによって定められる。定められた内容に基づき、双方の使用者に応分の使用者責任がある。これに対し、転籍出向の場合は、労働者は出向先との間に労働契約があるため、出向先の使用者のみが使用者となる。

●派遣労働者は派遣元に労働契約関係があることから、原則として派遣元に使用者責任がある。しかし、実態として派遣先の指揮命令を受けて就業することから、労働者派遣法44条(労働基準法の適用に関する特例等)において、派遣先も労働時間、休憩、休日等についての使用者責任を負担することになっている。

■関連用語
 使用者

(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)