公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
KT法(けいてぃーほう)
アメリカの社会心理学者チャールズ・ケプナーと社会学者ベンジャミン・トリゴーが体系化した問題解決と意志決定の手法。2人の頭文字をとって「KT法(ケプナー・トリゴー法)」と呼ばれる。2人はさまざまな組織の成功した管理者や経営者の思考プロセスの調査を行い、その過程をモデル化、「KT法」として整理した(『The Rational Manager』1965年)。2人はこの手法をもとにアドバイスを行うコンサルティング会社(Kepner-Tregoe社、KT社)を1958年に設立した。
KT法は「状況把握」「問題分析」「決定分析」「潜在的問題・潜在的好機分析」という4つのプロセスからなる。最大の特徴は組織における問題解決の重要な一プロセスとして、意志決定プロセスが組み込まれている点にある(決定分析)。社会学という共通のバックボーンをもつ2人の研究者は、厳しい現実に直面し、正しく問題を把握したとしても、必ずしも最善の決定が下されるとは限らないことに気づいていた。2人は合理的な意志決定プロセスを示すことで、よりよい意志決定が実現できると考えたのである。KT法では合理的な思考力(クリティカル・シンキングプロセス)とは、よりよい意志決定を伴う思考力であると明示されている。
KT法はこの点において、現在の主流な経営戦略の1つであるナレッジ・マネジメントにも影響を与えたといえる。ナレッジ・マネジメントでは情報を知識に変え、知識活用とイノベーションをめざす。情報を活用し新たな知識とする際に、KT法で示されたよりよい意志決定プロセスが大きな示唆を与えた。
現在KT法について学ぶと目新しさを感じないかもしれない。しかしそれはKT社の2人の創業者が半世紀以上も前に示した手法が、それだけ現在の諸理論の基盤理論となって生き続けてきたことの証左に他ならないのだ。
■参考文献
『問題解決と意志決定「ケプナー・トリゴーの思考技術」』(クイン・スピッツァ、ロン・エバンス 著(ダイヤモンド社、1998)