ナレッジマネジメント

公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)

ナレッジマネジメント(なれっじまねじめんと)

知識創造をさまざまな形での企業価値向上に結びつけていく経営手法のこと。あるいはそのために、組織メンバーがもつ知識を抽出、蓄積、相互活用していくプロセスを体系的にマネジメントする管理手法のこと。

経営学者のピーター・ドラッカー(Peter F. Drucker)は1950年代に「知識労働者」という言葉を作り出した。ドラッカーは1993年の『ポスト資本主義社会』において、世界は資本主義社会から知識社会に移行しつつあること、そこでは「基礎的な経済資源」はヒト・モノ・カネといった資本や労働力でもなく「知識」であり、「知識労働者」が中心的役割を果たすと述べた。

知識社会における企業の競争は、組織内のあらゆる活動を絶え間なく改善し、知識によって企業価値を創出し続ける力の巧拙(こうせつ)によって決定する。そのため古い知識を捨て去り、新しい知識を創造し身につけ、活用し、また新たな知識に変えていくというプロセスを、組織の活動として体系化することが不可欠となる。

ドラッカーが示したコンセプトを、実践的モデルとして示したのが野中郁次郎と竹内弘高によるSECI(セキ)モデルである(1995年)。野中、竹内は日本企業の研究をベースに、共同化(Socialization)→表出化(Externalization)→連結化(Combination)→内面化(Internalization)という4つのプロセスをスパイラルアップしていくことで、知の再生産と創造が継続的に発生することを示した。

このプロセスにおいて、組織メンバーがもつ暗黙知が形式知に変換され(個人知から組織知への変換)、個人と組織の相互作用の中で再び個人の暗黙知に転換し、その中で個人の経験や知恵が付加され、新たな形式知へと変換されるという、暗黙知と形式知の変換から知識が創造されることも示され、大きなインパクトを与えた。

SECIモデルの登場によってナレッジマネジメントが現実的な経営手法として注目を集めるようになった。2000年代に入り多くの企業がデータベースやグループウエア等のITシステムを導入し、知識の共有・再活用を目指したのはそのためである。


■参考文献
『知識創造企業』野中 郁次郎 、竹内 弘高 著(東洋経済新報社、1996)
『流れを経営する』遠山 亮子、平田 透、 野中 郁次郎 著(東洋経済新報社、 2010)
『ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか』P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社、1993)
『すでに起こった未来~変化を読む眼』P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社、1994)

ナレッジマネジメント_SECIモデルのイメージ