公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
コンピテンシー(こんぴてんしー)
■コンピテンシー
コンピテンシー・ディクショナリー、コンピテンシー評価
高業績者が恒常的に示す、成果につながる行動、考え方、態度などのこと。アメリカの心理学者デイビッド・マクレランドが1973年に提唱したもので、採用、配置転換、育成に活用する評価手法として開発された。
スタートとなった研究は、1970年代にマクレランドとマックバー社がアメリカ外交官に対して実施した大規模な調査研究である。この調査でマクレランドは、外交官たちが実際に行っている行動をインタビュー形式で収集し、成果につながる行動を抽出、分類を行った。
マクレランドの独自性は、ハイパフォーマーの行動を統計的に抽出し、さらにその発揮度合いを、やはり行動をベースにスケール化した点にある。従来の採用や評価基準が「積極性」「協調性」などの潜在的・顕在的能力であったのに対し、具体的な行動を計測可能なものにした点で画期的であった。
例えば多くのハイパフォーマーのインタビューから、彼らは平均的なパフォーマーに比較して、「成果に強くこだわる」ことが明らかになった。この強いこだわりは「仕事には熱心に取り組むが成果の基準を明確にできないレベル」、「達成について自分独自の基準をつくるレベル」など、定性的なスケールとして整理された※。
マクレランドが抽出した重要項目とそのスケールの一覧を「コンピテンシー・ディクショナリー」と呼ぶ。採用場面で面接官が応募者の話をうまく引き出し、かつ応募者が正直に話しているとすれば、コンピテンシー・ディクショナリーと応募者の話を照らし合わせることで、彼が将来自社で成果を上げる人物かどうかかなり正しい予測がつけられることになる。
コンピテンシーは「どんなに前職の業績や学歴が華々しい候補者を採用しても、その後もめざましい活躍をしてくれるとは限らない」という採用の現実に強い不満を抱いていた企業に、魅力的な概念として受け入れられた。しかし運用場面では強い批判が上がった。
大きな理由は、コンピテンシー・ディクショナリーの作成やコンピテンシー面談は、非常に労力がかかるからだ。コンピテンシー・ディクショナリーは、自社独自であることはもちろん、部門ごと、職種ごとに作成するのが原則となる。また、面談はインタビュー形式で時間をかけ複数人数で行う必要がある。
さまざまな批判はあるものの、コンピテンシー評価は業績評価の偏りを吸収する評価方法として定着している。特に昇進・昇格を含むアサインメントや、育成と連動させた評価基準として、多くの企業が導入している。
※実際にはもっと細かい記述で表現されるのが普通。
■参考文献
『コンピテンシーマネジメントの展開』ライル・M・スペンサー、シグネ・M・スペンサー著(生産性出版、2001)
『「コンピテンシー」企業改革』 マイケル・ズウェル著(東洋経済新報社、2001)
『コンピテンシーラーニング』 古川久敬 監修 (日本能率協会マネジメントセンター、2002)
『ハイ・フライヤー』 モーガン・マッコール著(プレジデント社、2002)
■関連用語
リーダーシップ理論