パス・ゴール理論

公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)

パス・ゴール理論(ぱす・ごーるりろん)

■パス・ゴール理論
ロバート・ハウスが1971年に発表した条件適合理論。パス・ゴール理論は1940年代後半に行われたオハイオ州立大学のリーダーシップ研究と、動機づけ理論の一つである期待理論をベースにしている。

この理論によれば、メンバー(フォロワー)の目標達成を助けることはリーダーの仕事であり、メンバー各人の目標達成に必要な方向性や支援を与えることは組織の全体的な目標にかなう※。

ハウスはリーダーシップスタイルを次の四つに分類している。

●指示型リーダーシップ
部下に自分の期待をはっきり示し、仕事のスケジュールを設定し、仕事の達成方法を具体的に指導する

●支援型リーダーシップ
部下のニーズに配慮し、親しみやすい

●参加型リーダーシップ
決定を下す前に部下に相談し、彼らの提案を活用する

●達成志向型リーダーシップ
困難な目標を設定し、メンバーに全力を尽くすよう求める


ハウスはリーダーシップスタイルの違いがどのような結果(満足や業績)をもたらすかは、次の3要素から決定されると考えた。

①リーダーが選択するリーダーシップスタイル
②リーダーがコントロールする諸要因(これは状況に応じて変化する)
③部下側の状況

②の「リーダーがコントロールする諸要因」とは、職位上の権限、チーム編成などであり「環境的条件即応要因」と呼ぶ。③の「部下側の状況」は、部下の能力や経験、仕事への参画度などであり「部下の条件即応要因」と呼ぶ。

この理論にのっとれば、リーダーはフォロワーや業務環境に欠けているものを見極め、提供することで、フォロワーの業績と満足感を向上させることができる。逆にいえばその見極めをはずすと、有効なリーダーシップを発揮することはできない。

例えばタスクが明白でフォロワーがタスクを処理する十分な能力をもっているときには、支援型リーダーシップは「ありがた迷惑」だと感じられる可能性が高い。また不確定要素が多く困難なタスクや人間関係に摩擦(まさつ)が多い場合には、指示型リーダーシップがよい結果をもたらす可能性が高いのだ。

パス・ゴール理論の重要な特徴は、リーダーは状況に応じて、上で示した四つのリーダーシップスタイルのいずれも取る可能性があると考えている点だ。個人のリーダーシップスタイルは変わらないと考えたフィードラーとの大きな違いである。


※『組織行動のマネジメント』(ステファン・P・ロビンス著、ダイヤモンド社、1997、P226参照)

■関連用語
リーダーシップ理論