公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
リーダーシップ理論(りーだーしっぷりろん)
●リーダーシップ理論の変遷
リーダーとリーダーシップに関する論考は、偉大なリーダーに共通する特徴を探すことから始まった。このアプローチを「特性理論」と呼ぶ。プラトンの『国家』やマキャベリの『君主論』なども特性理論の一つであり、20世紀前半までリーダーシップ論の主流であった。
しかし実際にリーダーを調べてみると、リーダーは多種多様であり、どんなリーダーにも共通するパーソナリティは存在しないことが分かった。そこで次に、リーダーに共通する行動を探そうとするアプローチが登場した。これを「行動理論」と呼ぶ(1940年代~1960年代)。
しかし行動理論も特性理論と同様、共通項を見つけることはできなかった。これらの失敗から「リーダーに一定のスタイルはなく、状況に応じてそのスタイルは異なる」という教訓が得られた。そこで次に、成功するリーダーシップと状況との関係性に目を向けるアプローチが盛んになっていった。
このように、どのような状況でどのようなリーダーシップが適切なのかを解明する研究が「条件即応理論」である(1960年代後半~)。このアプローチは一定の成果を収め、リーダーとチームとの関係性について(一部ではあるが)実証できる理論も打ち立てられた。
しかし条件即応理論では状況を説明することはできても、「それで、どうしたらいいの?」という疑問に答えることはできなかった。そこでいくつかの主張や理論を経て、1990年代にはリーダーをいかに育成するかを論じる「リーダーシップ開発論」が盛んになり、現在に至っている。
●注目すべき動き
条件即応理論からリーダーシップ開発論をつなぐ動きとして、二つのトピックスを押さえておきたい。1970年代に登場し、1990年代に大流行した「コンピテンシー」と、1980年代以降の今日的リーダーに関する各種論考である。
コンピテンシーは高業績者の行動を統計的に抽出し、採用、配置転換、評価等に活用するものである。コンピテンシーそのものに関する評価は分かれるが、実際に導入している企業は多い。コンピテンシーは、従来エピソードの記述や態度・能力としてしか把握できなかった仕事に必要な力を、定性的な形でスケール化し、計測・検証を可能にした。リーダーシップの要件もその一部として扱われている。能力の計測・検証についてのこの方法論が、実務的なリーダーシップ開発論の土台を作ったのである。
経済の低迷や国際競争の激化などを背景に、1980年代以降、「今求められているリーダーとは何か」を論じる動きが活発化している。多くの人をひきつけるカリスマ的リーダーを論じる「カリスマ的リーダー論」、現状を打破し、変革を起こすリーダーを論じる「変革的リーダー論」、従来のリーダー像を大きく転換する「サーバントリーダー論」、リーダーとチームの関係性をより掘り下げた「フォロワーシップ論」などが代表的なものである。
■参考文献
『組織行動のマネジメント』ステファン・P・ロビンス著(ダイヤモンド社、1997)
『ハイ・フライヤー』 モーガン・マッコール著(プレジデント社、2002)
『9つの黄金則』 ロバート・E・ケリー著(PHP研究所、1999)
『Works No.38』2000年2-3月号
『Works No.47』2001年8-9月号
『ハーバード・ビジネス・レビュー・ブックス リーダーシップ』(ダイヤモンド社、2002)