公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
期待理論(きたいりろん)
人がどのような心理的プロセスを経て動機づけられるのかを示したモデル。それまでのさまざまなモチベーション理論の統合を目指したもので、1960年代半ばから1970年代にかけて完成された。
最初に期待理論を示したのはビクター・ブルームである(1964年)。ブルームは結果(outcome)、誘意性(valence)、用具性(instrumentality)、期待(expectancy)の4要素で、モチベーションが喚起されるプロセスをモデル化した。
ブルームは、人のモチベーションは
①努力をすればどれだけのことが達成できるか(期待)
②達成できることと、手に入るものとにどれだけ価値があると感じるのか(誘意性)
③それが達成できたら、何が結果として手に入るのか(用具性)
という三つの変数によって決定すると考えた。
ブルームの期待理論をより分かりやすい形で修正しモデル化したのが、レイマン・ポーターとエドワード・ローラー三世である(1968年)。ポーターとローラーが示したモデルを単純化すると以下のようになる。
個人が何かをしようとするモチベーションは、
①本人が自分の目標達成をどの程度信じているのかによって、投入する「努力の大きさ」が決定する
②その努力の大きさによって、目標を達成した場合に得ることが期待できる「業績の大きさ」が決定する
③その業績に応じて、得られる「報酬の大きさ」が決定する。
④その報酬が満たすだろうと期待する個人的な目標の満たされ度合い、すなわち「満足の大きさ」が決定する。
④でもたらされる満足の大きさによって、モチベーションが決定する。②と③で得られる業績と報酬の関係と、④で得られる「満足の大きさ」はフィードバックされ、次の努力の大きさ(①)を決定する。
このモデルは組織への高い帰属意識によって動かされるケースや、理想を求めて努力するケースを説明できない、時間的スパンのとらえ方が不明瞭、外的報酬に偏っているといった批判がある。期待理論が人の合理性を前提としていることを、限界と見なす意見も多い。
しかしこのモデルは、経営現場でどのように人をマネジメントすべきかを考えるうえで有効な指針となり得る。その点において今日でも高く評価されている。
■関連用語
モチベーション理論