ホーソン実験

公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)

ホーソン実験(ほーそんじっけん)

ハーバード大学のエルトン・メイヨー、フリッツ・レスリスバーガーらによって実施された大規模な実験調査。シカゴ郊外にある電機工場(ホーソン工場)で、準備実験は1924年から、本格的な実験は1927年から1932年まで実施された。

この実験の背景には、従来の管理手法の行き詰まりがあった。20世紀初頭に一般的だったのは、賃金と懲罰によって労働者をコントロールし、生産性を向上させるという経営手法であった。

ところが第一次世界大戦以降、工業化が急速に進展すると、生産体制の大規模化とさらなる生産性向上が求められるようになった。その中で賃金と懲罰によるマネジメントが限界を迎えたことから、メイヨーらハーバード大学のチームは、労働者のモチベーションを決定する要因を探り、どうすればモチベーションを強化して生産性を向上できるのかを探ろうとしたのである。

ホーソン実験では照明の明るさや室内の温度、休憩の回数などの労働条件を変え、生産性の変化を調べた。この実験調査から、労働者の生産性には物理的条件よりも、リーダーとの関係性やチーム内の人間関係のほうが大きな影響を与えていることが明らかになった。また労働者が「先進的な実験に参加している」と感じていることが、生産性向上にプラスに作用していることも示された(これを「ホーソン効果」という)。

この実験以降、モチベーションを理解するには、賃金や懲罰といった労働条件(生理的動機)だけではなく、「仲間に存在を認められ、仲よく行動をともにしたい」という欲求(親和的動機)に注目する必要があると考えられるようになった。

■参考文献
『組織行動のマネジメント』ステファン・P・ロビンス著(ダイヤモンド社、1997)
『企業内人材育成入門』中原 淳 編著(ダイヤモンド社、2006)

■関連用語
モチベーション理論