公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
モチベーション理論(もちべーしょんりろん)
動機づけ理論
モチベーション理論はさまざまなものがある。大ざっぱに三つの時期に区切ると全体像を把握しやすい。
【黎明期】
「社会的存在としての人間観」が誕生するまで
19世紀末から20世紀初頭には、労働者は報酬と賞罰によって適切に条件づければ、生産性を上げると考えられていた。
1930年代になると、労働者のモチベーションには周囲の人々との関係性が大きくかかわっていることが明らかにされた。欧米で高揚した労働運動の影響も受けて、労働者を、感情をもった社会的存在としてとらえる人間観が形成されていった。
【発展期】
モチベーション理論花盛り
1950年代の約10年間は、「マズローの欲求段階説」「XY理論」「動機づけ要因と衛生要因の理論」という三つの有名理論が発表された。特にマズローの欲求段階説は今日でも引用されることが多く、最も有名なモチベーション理論である。
ただし注意が必要だ。この三つの理論はその名声に反して、有効性を実証する調査データを結局得ることができなかったからだ。多くの研究者が調査を試みたが、調査をすると理論と矛盾する結果が導き出された。そのためこの有名なモチベーション理論は、今日では「歴史的意義は認めるが、実際には使えない」との評価が(専門家の間では)定着している。
とはいえ、これらの理論が複雑な人間の欲求を多角的にとらえ、心理学や社会学の成果をマネジメントに持ち込む重要な視点を提供したことは間違いない。
【実用期】
現在の人材マネジメントの基盤理論の登場
1960年代から70年代以降、ビジネスパーソンに対する実証調査をもとにして、いくつものモチベーション理論が発表された。発展期ほど知名度がないが、より「使える理論」が登場したのである。
マクレランドの三つの欲求理論、目標設定理論、期待理論など、今日の人材マネジメントや能力開発に、これらの理論は重要な影響を与えている。
■参考文献
『動機づける力』DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部(ダイヤモンド社、2005)
『組織行動のマネジメント』ステファン・P・ロビンス著(ダイヤモンド社、1997)