公開日 2011.03.01 和田東子(HRDジャーナリスト)
活動理論(かつどうりろん)
活動理論とは、行動の分析単位を「活動」「行為」「操作」の3水準に分け考察した理論である。旧ソ連時代のロシアで誕生した心理学の一派。最も有名なのは、1920年代から1930年代のわずか10年間に活躍し、37歳の若さで夭折したレフ・ヴィゴツキー(1896〜1934)である。
ヴィゴツキーは、学習を「子どもと教師が対等な立場で相互作用を起こし、協働することで成されるものであり、相互作用を通じて子どもが歴史的・文化的・哲学的な文脈を受容し、同時にその文脈を変容させていく活動」であるとした。
ここからヴィゴツキーは、子どもが教師や周囲の他者の支援を得て、課題を解決していく動的な力こそが、真の意味での「能力」であると述べている。子どもは、周囲との教育的な相互作用を起こすことで、無限に発達する可能性をもつのだ。
ヴィゴツキーのこの指摘は、教育現場における「能力観」「子ども観」を根底から変革するインパクトをもっていたといえる。ただしこのような評価がなされたのは、ヴィゴツキーの死後、約50年を経た1980年代以降である。アメリカでは心理学者のデューイなどによる再評価が行われ、今日の企業内教育の主流理論の1つである状況学習論にも影響を与えた。
例えば企業現場においては、上司と部下による一対一のOJTや、座学による研修という限られた枠組みのなかで考えていた学習観に、組織構成員内で発生する相互作用のなかで発生する学びに目を向けさせる契機となったのである。
ヴィゴツキーの理論では、「最近接発達領域」(「発達の最近接領域」ともいう)が有名である。子どもは一人で問題解決を行うよりも、大人から助言や援助を受けたり、仲間と協力して問題解決をした場合のほうが、より多くのことを達成できる。この差異をヴィゴツキーは「最近接発達領域」(zone of proximal development)と呼んだ。
■参考文献
『ヴィゴツキー入門』 柴田 義松著(子どもの未来社、2006)
『思考と言語』 ヴィゴツキー著(明治図書出版、1962)
■関連用語
インストラクショナルデザイン