公開日 2009.09.18 あした葉経営労務研究所
●年次有給休暇(以下、年休)が発生した当該年度にその権利を行使せずに残った年休は、労働基準法115条の規定により、2年間の時効が認められる(昭22.12.15 基発501)。時効の起算日は、年休が取得可能となった時点からとなり、年休の発生日が当該年度の初日である場合、翌年度の最終日をもって年休権は時効によって消滅することとなる。繰り越しされた分と当該年度分の両方の年休権を有する労働者が年休権を行使する場合、繰り越しされた年休を先に消化したこととして処理することもあるが、年休制度の趣旨からも違法ではない。
●年休は労働者の健康で文化的な生活に資するため、毎年一定日数の休日を有給で与え、労働による心身の疲労を回復させることを趣旨としているものであり「年休の買上げの予約をし、これに基づいて労働基準法39条の規定により請求し得る年休の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法39条の違反である」(昭30.11.30 基収4718)とされている。
●年休の権利を行使せず、結果的に時効、退職等により年休が消滅するような場合に、その日数に応じて手当を支給することは違法ではない。この場合の手当の額については、年次有給休暇の賃金額(労働基準法39条6項)とは無関係に定めてよい。また将来の傷病欠勤に充当する企業もある。
●ただし、年休の買上げ等の取り扱いによって年休の取得を抑制する効果をもつようになることは好ましくなく、むしろ、年休を取得しやすい環境を整備することが重要である。
■関連用語
年次有給休暇の発生要件
年次有給休暇の比例付与
年次有給休暇の賃金
年次有給休暇の計画的付与
(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)