休日・時間外及び深夜労働の割増賃金

公開日 2019.4.1 あした葉経営労務研究所

●使用者が法定労働時間を超えて労働させた場合、法定休日に労働させた場合、深夜労働(午後10時から午前5時の間)を行わせた場合には、通常の労働時間または賃金額に法所定の割増率で計算した割増賃金を支払わなければならない。割増率は、休日・時間外労働は2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率、深夜労働の場合は2割5分以上と定められている(労働基準法37条)。

●政令で定める率は、労働者の福祉、時間外休日労働の動向、その他の事情を考慮して定められるとされており、現在、法定時間外労働は2割5分、法定休日労働は3割5分とされている(労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

●時間外労働が深夜労働と重なる場合は5割以上、休日労働と深夜労働が重なる場合は6割以上の割増賃金を支払わなければならない(労働基準法施行規則20条)。

●休日労働日には、休日労働に関する規制のみが適用され(昭23. 4.5 基発537)、時間外労働に関する規制は及ばないため、休日労働日に8時間以上の労働をしても深夜労働に該当しない限り3割5分以上の割増賃金を支払えばよいとされている。

●ただし、長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と家庭の調和(ワーク・ライフ・バランス)を図ることを目的として、限度時間を超えて時間外労働をさせる場合は2割5分を超える割増率とするよう務めなければならず(労働基準法37条1項)、さらに月の時間外労働が60時間を超えた場合は、その分の割増率を5割以上とすることが義務づけられている(同法37条1項ただし書き)。なおこの60時間超の時間外労働の割増率の適用について中小事業主はこれまで猶予されてきた(同法附則138条)が、2023年4月1日よりこの猶予措置が廃止されることが決まっている(同法附則1条3号)。

●所定労働時間が7時間の事業所において、1時間の時間外労働をした場合、就業規則等に別段の定めがない限り、通常の労働時間の賃金を支払うもの(昭23.11. 4 基発1592)とされ、割り増し計算が必要となるのは法定労働時間を超えた時間についてである。

●割増賃金の算定基礎に含めない賃金として、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われる賃金、⑦1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金の七つが限定列挙されている(労働基準法施行規則21条)。
 ただし、これらも名称にかかわらず実質によって取り扱う(昭22. 9.13 基発17)とされ、例えば、扶養家族がある者に対しその家族数に関係なく一律に支給される手当は算定の基礎に入る(昭22.11. 5 基発231)となっている。

(あした葉経営労務研究所 代表 本田和盛)