二重就業の禁止義務

労働基準法-二重就業の禁止義務

公開日 2009.02.06 あした葉経営労務研究所

二重就業の禁止義務
にじゅうしゅうぎょうのきんしぎむ

●労働契約締結に基づく付随義務である「誠実義務」の一つに、労働者が他社で二重に就業しないという義務(二重就労禁止義務)がある。多くの企業において、就業規則等において使用者の許可なく兼職することを禁止し、違反者に対して懲戒規定を定めている。

●就業規則における兼業規制の合理性について争われた判例として、小川建設事件(東京地裁 昭57.11.19判決)がある。建設会社の事務員がキャバレーの会計係などをしていたケースで、裁判所は、「兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の兼業の許否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえでの会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたい」として、普通解雇を容認した。

●他方、「会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度のものは含まれないと解する」とした裁判例もある(平仙レース事件 浦和地裁 昭40.12.16判決)

●一般的に、労働時間以外の自由時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるため、兼業規制については、具体的状況に応じた柔軟な対応が求められよう。またワーキングプワーに代表されるような、二重就労せざるを得ない低賃金労働者が増加していくと、兼業規制は合理性を失う。

●非正規社員の増加等、就業構造の変化により、二重就業者が増えている実態に対応するため、平成18年4月1日より、複数就業者の通勤災害の保護を目的とした改正労災保険法が施行されている。


■関連用語
労働契約
秘密保持義務
競業避止義務

(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)