中間搾取の排除

公開日 2008.12.15 あした葉経営労務研究所



●労働基準法6条は「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と規定する。本条は、第三者が労働者と使用者の直接的労働関係の開始または存続に介入し、手数料などの名目で中間搾取を行うことを禁止している。

●本条は、「個人の人格の尊重、基本的人権の確立を旨とする日本国憲法の理念にのっとり、我が国の労働関係に残っている封建的弊習である親分子分の従属関係や、労働者の人格を無視した賃金のピンハネ等を排除し、労働関係の開始・存続を労働者と使用者の直接関係によって決定する」ことを目的としている(昭23.3.2 基発381)。

●「何人も」とは、他人の就業に介入して利益を得る第三者であって、本条の適用を受ける事業主に限定されず、個人・団体または公人であるか私人であるかを問わず(昭23.3.2 基発381)、法人の場合には、当該法人のために実際の介入行為を行った行為者である従業員が処罰される(昭34.2.16 基収8770)。

●「業として」とは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいい、1回の行為でも、反復継続して利益を得る意思があれば業に該当する(昭23.3.2 基発381)。

●「利益」とは、手数料、報償金、金銭以外の財産等の如何なる名称であるかを問わず、有形無形であるかを問わない。また、使用者から利益を得る場合だけに限らず、労働者または第三者から利益を受ける場合も含む(昭23.3.2 基発381)。

●「法律に基いて許される場合」とは職業安定法および船員職業安定法の規定に基づき、厚生労働大臣または国土交通大臣の許可を得て行う有料職業紹介業、委託募集、労働者供給事業のことをいう。なお、職業安定法および船員職業安定法により許された場合であっても、それぞれの法律で認められている手数料、報酬等の他に利益を受けるときは、本条に違反する。

●労働者派遣は、違法とされた労働者供給事業の一部を取り出して適法化したものだが、派遣元と労働者との間の労働契約関係および派遣先と労働者との間の指揮命令関係を合わせたものが全体としての労働関係となるものであり、労働関係の外にある第三者が他人の就業に介入するものではなく、中間搾取とはならない。

●本条に違反した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処され、労働基準法で2番目に重い罰則が適用される。

■関連用語
強制労働の禁止

(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)