公開日 2008.12.15 あした葉経営労務研究所
●労働契約に付随して労働者に社内預金をさせることは、強制貯金の禁止を定めた労働基準法18条に違反する。しかし、労働者の委託を受けて貯蓄金を管理することは、労働者の福祉にも寄与する。そこで労働基準法18条2項から7項において、使用者が労働契約に付随することなく労働者の委託を受けて、その貯蓄金を管理する場合の規制を定めている。この規制は、労働者の預金の安全と保護を図ることを目的としている。
●労働者の任意に基づく貯蓄金管理には、①使用者自らが直接労働者の預金を受け入れて管理する「社内預金」と、②使用者が受け入れた労働者の預金を労働者個人の名義で銀行その他の金融機関に預け入れ通帳を保管する「通帳保管」があるが、いずれの場合も適法に行うためには以下の要件を満たす必要がある。
・労働者の過半数を代表する者もしくは労働組合と労使協定を締結し、それを行政官庁に届け出る(2項)
・貯蓄金管理規程を制定し労働者に周知する(3項)
・社内預金の場合には、一定利率(現行0.5%)以上の利子をつける。なお、この利率は金融機関の利率を考慮して厚生労働省令で定められる(4項)
・労働者からの返還請求があれば遅滞なく応じる(5項)
・労働者の返還請求に対して使用者が応じない場合で、貯蓄金管理を使用者に継続して行わせることが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁は、その中止を命ずる権限を有する。(6項)
・使用者は行政官庁から貯蓄金管理の中止命令が出たときは、遅滞なく、貯蓄金を労働者に返還する(7項)
・社内預金の場合には、使用者は毎年、3月31日以前1年間における預金管理状況を、4月30日までに定められた様式に基づいて、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならない(労基則57条)
■関連用語
強制労働の禁止
(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)