強制貯金の禁止

公開日 2008.12.15 あした葉経営労務研究所



●労働基準法18条1項は「使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、または貯蓄金を管理する契約をしてはならない」と規定している。本条は使用者が労働者の賃金を強制的に管理することによる、不当な身分拘束の防止と労働者の財産を保全することを目的としている。

●「労働契約に付随して」とは、貯蓄をすることが労働契約締結や労働契約存続の条件となっていることであり、具体的には以下のような場合は本条違反となる。
・労働契約の中に貯蓄をするべきことが定められている場合
・貯蓄契約をすることが雇い入れの条件となっており、これを拒んだときは雇い入れないであろうことが客観的に認められる場合
・雇い入れ後に貯蓄の契約をしなければ労働契約を存続せず解雇するという場合
・任意貯蓄として貯蓄している場合でもその貯蓄をやめれば解雇する、または貯蓄金の返還を請求すれば解雇する場合

●「貯蓄の契約をさせ」とは、労働者に使用者以外の第三者と貯蓄の契約をさせることであり、使用者が指定する銀行や金融機関との貯蓄契約はすべて含まれる。ただし、労働者の意思で貯蓄をすることについて、使用者が便宜を図り特定の銀行等と契約させることは本条違反に該当しない。

●本条が禁止するのは「労働契約に付随して」行われる貯蓄金管理であって、労働者全員に拠出が義務付けられていても、それが労働者相互の共済互助活動を目的とした掛け金であり、慶弔金など特定事由が発生した労働者にのみ拠出されるようなものは、その拠出金を使用者が管理していても本条違反とはならない。

■関連用語
強制労働の禁止
任意貯蓄金の管理

(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)