強制労働の禁止

公開日 2008.12.15 あした葉経営労務研究所



●「強制労働の禁止」とは、憲法18条「奴隷的拘束及び苦役からの自由」の趣旨を労働関係において具体化したもので、労働基準法第5条において規定されている。
 我が国の近代史において、前借金制度や違約金制度、賠償額予定契約、強制貯蓄などの手段によって、労働者を拘束し、強制的に働かせるという封建的悪習が残存していたが、それを一掃することを目的として本規定は制定された。

●労働基準法5条で規定する「暴行、脅迫、監禁」は、刑法上の犯罪行為と同じであると解釈されているが(昭23.3.2 基発381)、これらの行為が強制労働の手段として用いられた場合は、反社会性がより強調され、労働基準法上最も重い罰則(1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金)が適用となる。この罰則は刑法の罰則よりも重い。

●本条では、暴行、脅迫、監禁以外の手段でも、精神または身体の自由を不当に拘束し労働者の意思に反して労働させることを禁止している。

●また、労働基準法には「経済的足止め策」を禁じる趣旨から、本条以外にも賠償予定の禁止(16条)、前借金相殺の禁止(17条)、強制貯金の禁止(18条)の規定が置かれている。
なお、国際労働機関(ILO)においても「強制労働の禁止」の条約が採択されている(1930年の29号条約、1957年の105号条約)。

■関連用語
賠償予定の禁止
前借金相殺の禁止
強制貯金の禁止

(あした葉経営労務研究所 代表/株式会社キャリア・ブレーン 認定キャリア・コンサルタント 本田和盛)