「ペイペイ」や「楽天ペイ」といったスマートフォンの決済アプリなどを使い、賃金をデジタルマネーで支払う制度の解禁に向け、厚生労働省は26日の審議会で、関連する省令の改正案を了承した。厚労省によると、改正省令は2023年4月に施行される見通し。導入には労働者の同意が条件で、企業は労使協定を結ぶ必要がある。厚労省によるアプリ事業者の審査にも時間がかかり、実際に運用が始まるのは施行から数カ月後となりそうだ。
賃金の支払先となるアプリの口座残高は上限100万円で、労働者はそのまま買い物や家族への送金に利用できるようになる。
政府は成長戦略としてキャッシュレス決済の普及を目指しており、企業による幅広い活用を期待する。入金額は労働者が決める仕組みで、買い物などに必要な額をアプリに入れ、貯金に回す分は従来通り金融機関の口座振り込みとする利用法を想定している。
賃金のデジタル払いを巡っては、アプリを運営する「資金移動業者」が破綻しても、銀行のように元本1千万円まで保護される預金保険制度の適用外で、リスクを指摘する声もあった。
厚労省は9月の審議会で、アプリ口座の残高上限を100万円とし、超えた場合はすぐ銀行口座へ移せるようにする、破綻時や不正取引で損失が出た際に全額補償する、といった事業者の指定要件を提示。ATMでの現金化を少なくとも月1回、無料でできることも要件とした。
銀行口座とのひも付けを必要とし、入金額を制限するなど利便性を制約した結果、労働組合側は安全面で改善がみられたと一定評価。導入を容認する形となった。
労働基準法では賃金は現金支給が原則。省令改正により、デジタル払いは銀行振り込みと同様に労働者の同意を得て例外的に認められる。資金移動業者は今年9月末時点で全国に85あり、厚労相の指定事業者のアプリが支払先となる。
(共同通信社)