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労働法令編

Ⅰ 法令・通達とは?

(1)法令

 「法令」とは、「法律」と「命令=政令・省令」を合わせて呼ぶ用語です。しかし、一般的には、法律と命令のほか「条例や規則」などを含めて幅広く「法令」と呼んでおり、個々の用例に則して、その範囲を決めることになります。

法令 法律 国会で制定
狭義の法令
広義の法令
命令=政令・省令 国の行政機関で制定
条例や規則 地方公共団体などで制定

 「法律」は、国会での民主的な手続きを経て制定されるもので、特に国民の権利を制限するような場合には、法律に根拠となる規定がなければならないとされています。

 「命令」は「政令」と「省令」をいい、法律の委任を受けて、法律を実施するための細目を定めるものです。

 「政令」は、内閣の閣議を経て制定されるもので、法律で定めるほどではないが、国民の権利義務に関わる重要な事項を定めています。○○法施行令とか、○○に関する政令などという名称です。

 「省令」は、法律または政令の委任を受けて、各大臣が法律を実施するためのさらなる細目を定めるものです。○○法施行規則などという名称です。

(2)告示と通達

 「告示」は、法令に基づいて、ある事項について定めるものですが、地域や時期によって相違や変更の余地がある場合に、その内容を告示で定めることが多く見受けられます。

 「通達」は、行政機関として下級機関に法令の解釈や内部手続を示すものです。各省庁の内部規則といえます。

(3)法令等の優先関係

 法令等の優先関係については、おおむね次のようになっています。

法律 > 政令 > 省令 > 告示( > 通達)

 また、原則として地方より国の法令が優先します。

国の法令 > 条例 > 規則

 

(4)労働法の体系

 近代市民社会では「契約自由の原則」がありますが、労働者を保護するために「労働法」によるこの原則の修正(規制)があります。しかし、労働法という名前がついた法律があるわけではなく、労働に関するたくさんの法律を総称して労働法と呼んでいます。

 労働法を形づくる主な法律は次のとおり(法律名には略称を含む)です。

①労働条件の確保に関する法律
労働基準法 労働条件の最低基準を定め、労働条件の向上を図るための法律
最低賃金法 賃金の最低額を保障することにより、労働者の生活の安定を図るための法律
労働安全衛生法 職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な作業環境を整備するための法律
賃金の支払の確保等に関する法律 企業経営の悪化などにより労働者に賃金が支払われない場合に、賃金の支払いなどの適正化を図るための法律
②労働契約に関する法律
労働契約法 労働契約に関する民事的なルールを明らかにし、個別の労働関係の安定を図るための法律
③雇用の確保・安定のための法律
雇用対策法 労働力の需要・供給の均衡を促進し、労働者の職業の安定と経済的・社会的地位の向上などを図るための法律
職業安定法 労働者が雇用先を求めて就職するに際して、職業安定機関が提供するサービスに関する法律
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法) 定年退職者などの再就職を促進し、高年齢者の安定した雇用の確保を図るための法律
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法) 身体障害者または知的障害者の雇用を促進し、職業の安定を図るための法律
職業能力開発促進法 労働者に対する職業訓練および職業能力検定に関する法律
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法) 労働者派遣事業の適正な運営の確保と、派遣労働者の就業に関する条件の整備などを図るための法律
④労働保険・社会保険に関する法律
労働者災害補償保険法 業務上または通勤による労働者の負傷・死亡などに対して保険給付等の保護を行うための法律
雇用保険法 労働者が失業した場合などに必要な給付を行い、生活の安定と就職の促進を図るための法律
健康保険法 被保険者・被扶養者の業務外の疾病・負傷・死亡および分娩について保険給付を行うための法律
厚生年金保険法 労働者の老齢・障害または死亡に対する年金等の給付および厚生年金基金の給付に関する法律
⑤労働者福祉の増進に関する法律
中小企業退職金共済法 独自には退職金制度を導入できない企業のための中小企業退職金共済制度に関する法律
勤労者財産形成促進法 勤労者の計画的な財産形成を促進し、勤労者の生活の安定を図るための法律
勤労青少年福祉法 働く若者に対する職業指導・職業訓練・福祉施設の設置などを促進するための法律
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法) 雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保を図るための法律
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法) パートタイム労働者について、適正な労働条件の確保や雇用管理の改善などを図るための法律
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法) 育児休業・介護休業・子の看護休暇などに関する法律
⑥労働組合に関する法律
労働組合法 労働組合を組織することなどを通じ、労働者が使用者との交渉において対等な立場に立つことを促進し、労働者の地位向上を図るための法律
労働関係調整法 労使関係の公正な調整を図り、労働争議の予防・解決などを図るための法律
⑦個別労働紛争の解決に関する法律
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働関係紛争解決促進法) 労働条件などに関する個々の労働者と事業主との紛争を、あっせん制度などにより迅速かつ適正な解決を図るための法律
労働審判法 個々の労働者と事業主との間の民事紛争について、迅速・適正かつ実効的な解決を図る労働審判制度に関する法律

 

(5)法源

 権利や義務は何によって根拠づけられるのか、言いかえれば、どのような根拠がある場合に他者から強制されるのか、この根拠のことを「法源」と言います。

 近代市民社会では「契約自由の原則」があり、まず、当事者間の合意により成立する「契約」が法源となります。次に、国家の統治機能として、国民が選出した代表者によって定められた「法律」が法源になります。そして、労働者を保護するために労働法の強行規定によって、契約自由の原則の修正(規制)が行われています。

 広い意味では、法律または契約に基づく法源として、「命令」「慣習」も加わり、さらに労働関係に固有の法源として「労働協約」「就業規則」も加わります。

労働関係の法源(権利・義務の源) 法令(法律と命令等)、労働協約、就業規則、労働契約、慣習

 さらに、確立した「判例」も法源に値するといわれています。
 ※「労働協約」とは、労働組合と使用者が結ぶ契約をいいます。

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