通勤手当の額が大きいほど、残業代もたくさんもらえるの?

そもそも通勤手当って、給料なの?

イラスト1 会社に通勤するための電車賃やバス代等を、交通費や通勤手当として支給している会社は多いと思います。しかし、これらは、そもそも「給料」といえるのでしょうか?

答えは、Yesです。

通勤定期券や切符等の購入に使ってしまい、自分の財布にお金が残るわけではないのでピンと来ないかもしれませんが、働いたことの対価として支給されるもの(第3回第6回参照)には違いないので、通勤手当も、れっきとした給料です。
したがって、例えば、岡本君と横山君の基本給が20万円で同額だとしても、通勤手当の金額が岡本君1万円、横山君2万円と異なると、それぞれの月給は、岡本君21万円、横山君22万円となり、給料の総額では、横山君のほうが高いということになります。

さらにくわしく... 毎月の通勤に掛かる通勤手当は「給料」ですが、会社の指示で出張に行く場合等の交通費はどうでしょうか?
これは通常、「旅費」として、会社の旅費規程等に基づいて支給されますが、実費弁償分と考えられますので、「給料」には当たりません。

給料から控除される金額にも違いがある?

イラスト2 基本給やその他の手当の合計額が同じでも、通勤手当が違うと、そこから引かれる雇用保険料や健康保険料、厚生年金保険料等の社会保険料や源泉所得税(第6回参照)にも違いが出るのでしょうか?

まず、社会保険料は、通勤手当も含めた給料の総額に掛かりますから、基本的には、この金額が高いほど社会保険料も高くなると考えられます。ただし、健康保険料や厚生年金保険料は、毎月の給料の額ではなく、あらかじめ標準的な1カ月の給料額(標準報酬月額)を決めて、それを基に保険料を計算するため、金額に差が出ない場合もあります。

源泉所得税は、「通勤手当」については、原則、課税されません。しかし、「10万円まで」という限度があります(非課税限度額)ので、10万円を超える高額な通勤手当が支給されている場合は、その10万円を超えた分について課税されます。

さらにくわしく... 岡本君と横山君の場合で、雇用保険料と社会保険料の金額を比較してみましょう。

雇用保険料は、あらかじめ決められた被保険者が負担する率を賃金総額に乗じて得た額となります。先ほどの例をもとに計算してみると、岡本君が1カ月1050円であるのに対して、横山君は1カ月1100円となり、横山君のほうが月50円、年間にして600円、岡本君よりも多く支払うことになります。
一方、健康保険料や厚生年金保険料については、毎月の給料の月額を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額に基づいて計算します。給料の月額が「21万円以上23万円未満」のときは、保険料の算定基礎となる「標準報酬月額」を「22万円」とすることになっています。
したがって、総額は岡本君21万円、横山君22万円ですが、2人とも保険料を計算する「標準報酬月額」は「22万円」に該当するので、保険料の額は同じになります。

つまり、通勤手当の額が違うと、給料から控除される雇用保険料の額も異なり、健康保険料や厚生年金保険料についても、標準報酬月額が変動すれば、それぞれの保険料の額も違ってくることになります(第6回参照)。

通勤手当の額が大きいと、残業代も高くなる?

イラスト3 それでは、岡本君よりも通勤手当の額が多い横山君のほうが、残業代が高くなるのでしょうか? もし、そうならば、遠方から通勤するほうが得になるということでしょうか。
答えは、Noです。通勤手当の額の多寡は、残業代に影響しません。

月給制等の場合、残業代や休日出勤手当、深夜労働等の割増賃金を計算する際は、まず、時間単価を算出しなければなりません。この割増賃金を計算するときに基礎とする賃金については、次の①から⑦に該当するものを除いて計算することになっています。

①~⑤については、個々の事情によって支払われるもので、労働の内容とは直接関係しないからです。「家族が多いから」「家が遠いから」という理由で残業代が高くなる、ということでは不合理ですものね。また、⑥、⑦については、月々の賃金の計算に入れることが適切でないことから、割増賃金の基礎から除いて計算することになっているのです。

したがって、岡本君も横山君も、残業代の単価を計算するときには、それぞれの通勤手当の金額を除いた20万円(①~⑦以外の手当ももらっていないと仮定します)を基に計算します。

さらにくわしく... これらの手当については、その名称にとらわれず、あくまで実質で取り扱うことになっています。いうなれば、名目上は上記①~⑦に該当していても実質がそぐわない場合には、割増賃金の算定基礎額から除外することはできません。

例えば、「家族手当」という名称でも、扶養家族数に関係なく一律に支払われているものは、計算の基礎に含めなければなりません。
また、「住宅手当」は、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうのであって、全員に一律で支給されるものや、住宅以外の要素で定率・定額で支給される手当の場合は、いずれも割増賃金を計算するときの基礎に含めることになります。

監修者プロフィール プロフィール写真
望月 由佳(もちづき ゆか)
特定社会保険労務士 社会保険労務士 望月由佳事務所 代表
平成2年10月 社会保険労務士資格取得
平成7年9月 社会保険労務士望月由佳事務所設立
労働保険・社会保険関係業務全般の手続き業務やコンサルティング業務のほか、研修会・講習会での講師も務める。
著書・執筆『労務・社会保険コンパクトブック』(TAC出版)、『年金ミラクルガイド』(同、共著)、「ビジネスガイド」、開業社会保険労務士専門誌「SR」、社会保険労務士受験雑誌「社労士V」(以上、日本法令)ほか

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