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Point of view [2021.09.10]

第188回 櫻井 将

なぜ管理職の1on1スキルは高まらないのか?

櫻井 将 さくらい まさる
エール株式会社 代表取締役

横浜国立大学 経営システム科学科卒業。ワークスアプリケーションズ、GCストーリーの両社でGPTW「働きがいのある会社」ベストカンパニー受賞。2017年にエール入社。社外人材によるオンライン1on1サービス「YeLL」、1on1力向上プログラム「YeLL|聴くトレ」の開発・販売に携わる。2018年から慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の研究員。

1on1スキル向上に、今必要なのは「知識」ではなく「関心」

 このタイトルを見て、文章を読んでくださる方の会社では、おそらく1on1ミーティングを制度として既に行っているのではないだろうか。もしくは、これから行おうとしている状況かもしれない。

 1on1を導入する目的は会社によってさまざまである。一方で、1on1をうまくできる管理職とうまくできない管理職がいる、というのはどの会社でも共通していることだと思う。
 多くの会社では研修を提供し、1on1の必要性を説き、傾聴スキルを知識として伝えている。ただ、そこまでしても、1on1がうまくできるようになる管理職が少ない、というのが実態ではないだろうか。

 1on1スキルは、Excelの関数のように「分かりさえすれば使える」というものではない。理解に加え、実践・振り返りを何度も繰り返さないと身に付かないスキルである。自転車やスポーツと同じように、繰り返しトレーニングしないと上達しないのが1on1スキルなのである。
 この繰り返すという根気のいる作業を支えるのは、1on1への「関心」である。「このスキルを身に付けたい」「このスキルを身に付けることでこんなことを起こしたい」といった関心がなければ、何度も繰り返そうという動機は生まれない。自転車でも最初は転んで痛い思いをする。スポーツも最初からうまくできることはない。それでも繰り返し練習をするのは、「このスキルを身に付けたい」という強い関心があるからだ。
 多くの会社では研修などを通して、既に知識の提供は十分に行われていることが多い。そんな状況だからこそ、管理職の1on1スキルを向上させるのに必要なのは、1on1スキルを向上させたいという「関心」を生み出すことなのだ。

部下の話を聴くことに「関心」がない管理職

「部下の話を丁寧に聴くなんて、弱いマネージャーのすることだ」
「部下の話を聴いたって、成果は上がらない」
「聴くのが大切なのは分かるけど、実際の現場では使えない」

 管理職の方々のこんな本音を聞くことがある。現在の管理職世代がまだメンバーだったころ、1対1で会社の会議室で上司にじっくり話を聴かれる、というシチュエーションはあまりなかったのではないだろうか。「仕事は背中を見て盗め」「3年は歯を食いしばって付いてこい」そう言われて、自ら学び、吸収して育ってきた。そうして、必死で成長し、管理職になった今、今度は「部下の話をちゃんと聴いてください」と言われている。こんな背景の中で、聴くことに関心が持てない管理職がたくさんいることを、私は仕方がないことだと思っている。

 では、関心というのはどのようにして生まれるのだろうか。私は、「良質な体験」か、「致し方のない環境」が関心を生み出すと考える。美味しいトルコ料理を食べたことがない人は、トルコ料理がいかに美味しいかという知識を伝えたところで、作ろうとは思わない。もしこの人にトルコ料理を作りたいという強い関心を生みたいのであれば、とても美味しいトルコ料理を食べるという良質な体験をしてもらうとよい。もしくは、今日はトルコ料理以外は食べてはいけません、という致し方のない環境に追い込むことでも達成できるだろう。
 1on1スキルを上げたいというときには、できれば後者ではなく、前者のアプローチを取りたい。「1on1ができなかったら降格です」という環境を与えられたら、確かに必死になって1on1スキルを高めようとするかもしれない。でも、そのようなアプローチよりは、自分自身が1on1をされ、自分の話をじっくり聴かれること。それによって、考えがまとまり、キャリアにおいて自分が大切にしていることに気づき、実際の仕事のパフォーマンスが上がり、周囲の人との関係が良くなる。そんな"良質な聴かれた体験"を通して「自分も良い1on1ができるようになりたい」と、1on1への関心が高まっていくことを望む人事の方が多いのではないか。

「関心」を生み出す良質な体験は、利害が少ない関係のほうがつくりやすい

 では、どのようにして"良質な聴かれた体験"を管理職にしてもらうのか。方法は大きく三つあると考える。一つは社内。もう一つは社外。三つ目は過去。

 一つ目の「社内」は分かりやすい。対象である管理職の上司や、管理職同士でのピア1on1などがあり、それが良い体験となれば、自分がされたように自分の部下にも良い1on1をしたいという関心が生まれる。
 二つ目の「社外」は、エグゼクティブコーチングや当社のような外部サービス、また個人でメンターやコーチ・カウンセラーを見つけて話を聴いてもらうことができる。
 上記二つについてのポイントは、利害が少ない相手・状況のほうが良い体験になりやすいということである。1on1スキルの中でも重要な傾聴とは、Judgementをせずに話を受け止める、という行為である。利害関係があればあるほど、Judgementというのは生まれやすい。「それはいいね」「だからダメなんだよ」「いつもそんなこと言ってるから…」とJudgementされることは、自分の考えや気持ちをオープンに話すことを阻害する。上司部下や近くで仕事をする関係というのは、Judgementが生まれやすい構造がある。この構造が働きづらい相手、利害が少ない相手との1on1を持つことで良い体験になる可能性が高まるのである。
 そして、三つ目の「過去」というのは、自分の過去の体験である。上記では、「今の管理職は良質な聴かれた体験が少ない」と書いたが、誰しも聴かれた体験は持っている。少なくとも言葉が話せない赤ちゃんのときには必ず人は聴かれている。仕事を始めてからでいえば、1on1ではなくとも、飲み屋やランチ、喫煙所、給湯室などで聴かれていることも多い。そういった自分の中にある良質な聴かれた体験を振り返り、聴かれることで自分にどんな素晴らしい変化があったのか? を思い出せると、「良い1on1をしたい」「1on1スキルを高めたい」という関心が高まっていくのである。

 みなさんの会社では、管理職の関心を高めるために何ができるだろうか?
 知識を提供する研修が充実していればいるほど、管理職の1on1への関心が高まることでの効果は大きいはずだ。

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