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Point of view [2021.05.28]

第181回 平田麻莉

70歳就業法で求められるキャリア自律支援

平田麻莉 ひらた まり
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
代表理事

慶應義塾大学在学中にPR会社ビルコム(株)の創業期に参画。人材企業や組織開発コンサルティング企業の広報支援を通じて企業と個人の関係性に対する関心を深める。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院への交換留学を経て、2011年に慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。現在はフリーランスで広報支援等を行う傍ら、2017年1月設立のプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会で活動する。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」受賞。政府検討会の委員・有識者経験多数。

 2021年4月から改正高年齢者雇用安定法(通称「70歳就業法」)が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となった。これは人事労務のプロである読者には釈迦に説法だが、決して70歳まで雇用延長すべしという話ではない。
 企業が取り得るオプションは、雇用延長(①定年引き上げ、②継続雇用制度の導入、③定年廃止)に加え、創業支援等措置として④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に社会貢献事業等に従事できる制度の導入が認められた。

誰もがフリーランスになり得る

 これが何を意味するかというと、人生100年時代といわれ、"終身"雇用では全うしきれないほどに長寿化した労働寿命の活かし方として、フリーランスとして働き続けるセカンドキャリアが想定されているということだ。
 それを裏付けるかのように、今年3月に策定された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の冒頭では、策定の背景として「フリーランスについては、多様な働き方の拡大、ギグ・エコノミー(インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く就業形態)の拡大による高齢者雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などに貢献することが期待される」との記述がある。
 このガイドラインの必要性が議論され、策定が閣議決定された全世代型社会保障検討会議は、その名のとおり、少子高齢化が進む中で、少しでも多くの人が「支える側」として活躍し、能力に応じた負担ができるように社会保障各制度の見直しを行い、すべての世代が公平に支え合う「全世代型社会保障」への改革を進めることを基本的な考え方としている。
 少々乱暴に言えば、個人の生活と健康を、労働寿命ギリギリまで終身雇用で支えた後、年金や高齢者医療制度にバトンタッチして支えるというこれまでの構造が、企業にとっても政府にとってもこれ以上踏ん張り切れない負担となり制度疲労が生じているので、今後はセカンドキャリアにおいてはなるべく雇用によらず、自律して働くことが期待され始めているという話だ。無論、誰に期待されるでもなく、個人にとっても、それが一番のリスクヘッジとなる。
 実際、企業人事の立場からすれば、従業員の年齢構成の偏りから生じる諸問題はもはや役職定年制だけでは解消しきれないレベルとなり、50代を中心に早期退職者を募集する企業も増えている状況だ。70歳までの雇用延長というオプションは選択し難いというのが大半の本音かもしれない。

必要なのは知識と心構えと助走期間

 ただし、70歳就業法で創業支援措置を導入するには、過半数労働組合等の同意が必要(雇用延長措置と併設の場合は、同意が望ましい)とされている。従業員が安心・納得して、前向きにセカンドキャリアに踏み出すためのサポートは必須である。では、具体的にどのようなサポートが求められているのだろうか。
 今の時代、独立の障壁は一昔前と比べて大いに下がっている。ギグ・エコノミーに限らず、ビジネスプロフェッショナルの領域でも、業務委託での人材活用が広がって多種多様のジョブマッチングサービスが生まれているため、特殊な専門性や資格、人脈を持たないごく普通のビジネスパーソンであっても、フリーランスとして活躍する余地は大いにある。
 スマートフォンやノートパソコンさえあれば、無料利用できるクラウドサービスやコワーキングスペースなど、スモールビジネスを支えるサービスが充実しているため、創業資金はさほど必要ない。
 それでも、何十年にもわたって会社のために一心不乱に働いてきて、それ以外の環境を知らない人にとっては、サラリーマンとして安定した給与をもらうことと、会社の看板を外して自分自身の信用力とアイデアで稼ぐことは、天と地ほどの差に感じられ、不安があるだろう。新たな働き方について、相応の知識と心構えと助走期間が必要だ。

 知識とは、労働者ではなく事業者として働く上での法的知識や値決めの考え方、確定申告ノウハウ、社会保障や公的支援制度、ロールモデルなどの情報である。心構えとは、それまで組織のビジョンや目標に従って走ってきたことに代わり、自分しか意思決定者がいない状況でさまざまな決断・選択をするために自分なりの軸を定めるなど、経営者マインドと自律型の行動スタンスを醸成することだ。そして、助走期間として、副業やプロボノ(職業上の専門知識や技能を生かして参加する社会貢献活動)を通じた社外での価値提供に挑戦することも、不安解消の後押しになる。

「黄昏研修」に代わる、50代からのキャリア自律支援を

 こうしたキャリア自律支援の代表例として、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会では、座学研修や副業マッチング、キャリアコンサルティングなど、企業のニーズに応じた支援を組み合わせる「50代からの自律志向人材育成プログラム」を提供している。4万8000人を超えるフリーランスやフリーランス志望者(副業ワーカー含む)のコミュニティとして蓄積された知見や情報に基づき、独立も視野にセカンドキャリアを模索するベテラン層をサポートする法人研修だ。
 例えば、某大手商社の労働組合で実施した副業研修は、組合史上最高人数の300名を超える参加申し込みの反響があり、事後アンケートの満足度は80%以上で、「会社にしがみつかなくても多様な生き方・働き方があるということを知った」「第一歩を踏み出せる勇気と確信を得た」等といった前向きな感想が多く寄せられたという。
 研修後に実施したフリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー資格保有者によるキャリアコンサルティングも、希望者が多く抽選形式となったものの、自分自身のセカンドキャリアのイメージと取り得るアクションが具体的に見えて、不安からワクワクへマインドチェンジできたと相談者は感じたようだ。
 シニア人材向け支援といえば、現在は、俗に「黄昏(たそがれ)研修」と呼ばれる定年退職者向けライフプランニング講座や、シルバー人材向け再就職支援会社の紹介にとどまっている企業が大半だ。早期退職制度の場合は割増退職金もあるが、実質的には退職の示談金とも受け取られている。しかし、せっかく労働寿命が長くなっているのだから、本人たちはもちろん、後続にも不安を与えるような後ろ向きな支援ではなく、生き生きと充実したセカンドキャリアに踏み出すための前向きな支援が拡がることを願っている。

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