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Point of view [2021.04.09]

第178回 平賀充記

テレワーク推進を阻む壁を乗り越えよ

平賀充記 ひらが あつのり
ツナグ働き方研究所 所長

リクルートにて、FromA、タウンワーク、とらばーゆ、ガテン、はたらいくなど、主要求人メディア編集長を歴任、メディアプロデュース統括部門執行役員を経て、人と組織の研究家に転身。現在は人材コンサルティング会社のシンクタンク「ツナグ働き方研究所」主宰。専門は人材採用領域と組織開発領域。近著に『パート・アルバイトの応募が殺到! 神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)がある。

コロナ起因で普及したテレワークの現状

 2020年、新型コロナウイルスのパンデミックでテレワークが進んだ。テレワークはビフォーコロナの時代、「働き方改革」の文脈から推奨され、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会中の交通混雑緩和策としても期待されていた。しかし、その導入が順調に進んだとは言い難く、この新しい働き方を推し進める原動力となったのがコロナ禍であったというのは皮肉な話だ。

 東京都産業労働局が2020年6月に実施した「都内企業のテレワーク導入実態調査」(※企業対象)によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は57.8%。2019年の調査(25.1%)と比べ倍以上になった。
 一方では、こんな調査結果もある。民間のパーソル総合研究所が2020年11月に実施した「第4回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(※従業員対象)では、正社員のテレワーク実施率を都道府県別で見ると、最も多かったのが東京都(45.8%)で、最も少なかったのが和歌山県。その実施率は、わずか3.5%にとどまっている。また企業規模別(全国平均)では、従業員数1万人以上の企業では45.0%と高い割合となった一方、100人未満では13.1%と低い割合になり、約3.4倍もの差が見られた。
 コロナ禍でテレワークが一気に進んだのは、実は"都市部の大企業"に限定された事象であり、その普及には極めて濃淡があるというのが実情のようだ。

マネジメントが難しい

 同調査では、テレワークをしていない理由についても聞いている。(同じ調査を時系列で行っていることから)5月調査と11月調査を比べると、「テレワークで行える業務ではない」が52.9%(5月調査)から7.8ポイント減少の45.1%(11月調査)と大きく下がっている一方で、「会社がテレワークに消極的で、実施しにくい」が8.1%(5月調査)から2.3ポイント上がって10.4%(11月調査)になっている。
 パーソル総合研究所では、組織としてテレワーク推奨を継続するというメッセージが明示されていなかったり、上司・同僚の出社により同調圧力が生まれたりして、不要な出社が増えているのでは、と指摘する。
 この背景には、テレワーク管理に対する心理的な障壁がある。実際のところテレワークのマネジメント難易度は低くない。モニター越しでの業務進捗確認、コミュニケーション不全の問題など、リモート下での組織管理は想像以上に負荷がかかる。昇進・昇格や社内異動希望への影響の懸念などキャリア不安を抱える部下も少なくなく、そういったフォローも必要だ。「テレワーク慣れ」という状況が進む中で、会社としてテレワークに消極的になっているのは、トップも含めたマネジメント層の「やってみたらすごく大変だ」という意識に他ならない。

リモートネイティブの登場

 しかし、そんなことを言っていられない状況が、実はすぐそこに来ている。今年の就職活動を経て来年の4月に社会人となる22年新卒は、コロナ禍でオンライン授業が主となるキャンパスライフを経験した、第一世代なのだ。
 彼らは「リモートネイティブ」と呼ばれる。通常の講義が激減、オンライン授業も、ライブ授業と録画された講義を視聴する(eラーニングのような)オンデマンド授業の2種類となり、複合的な授業パターンを経験してきた。
 ただ聴くだけの大教室での授業は、絶対オンラインのほうがいい。取りたい授業がかぶってもオンデマンドだったら履修できるから便利。学校に行ったほうがいいのは、ゼミとか少人数で議論する授業だけ。彼らの脳内には、リモートの利便性がしっかりと刻まれている。その上で、リモートがいいか対面がいいか、目的やシーンによって使いわける日々を、既に過ごしているのだ。
 授業だけではない。生活全般においてリモートが当たり前になり、モニター越しのコミュニケーションもポジティブに楽しむ。オンライン飲みでも盛り上がれる工夫をし、友達同士で同時に同じミュージシャンの曲を聴いてリモートライブを共有体験とする。
 こうした特質をもつ彼らが社会に出てきた時、リモートワークを志向しないはずがない。自社の従業員に出社してもらうために、合理的な「意味」を問われる。そんな日が来るのも、そう遠くないかもしれないのだ。

 経営環境の変化への対応、生産性向上、コスト削減、BCP対策。企業がテレワークを導入する効果は多岐にわたる。通勤時間の削減やワーク・ライフ・バランスの観点からテレワーク継続を希望する人は約8割にも及ぶ、そんな調査結果もある。リモートネイティブの登場も含め、テレワークは人材の維持・確保の観点からも欠かせなくなる。
 これらを踏まえると、企業としてはテレワーク推進に今一度注力するほか解はない。本稿で示したテレワーク時のマネジメント課題を改善することはもちろん、トップメッセージの発信、出社承認制の導入・維持など実効策を明示すべきだ。そしてワクチン普及後も視野に入れた中期的なテレワーク方針や社内制度・施策の検討も進めておくべきだろう。

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