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Point of view [2020.07.10]

第160回 林 哲也

感染症によるパンデミックを想定した企業のメンタルヘルスケア

林 哲也 はやし てつや
合同会社ライムライト 代表
東京タワーヴュークリニック麻布十番 院長

信州大学医学部卒。医師として自律神経失調、渡航医療、精神科(さいとうクリニック)の外来診療を担当。合同会社ライムライトではヒューマン・コンサルティングサービス(産業医、メンタルヘルス・発達障害相談、グリーフカウンセリング、医療通訳・翻訳等)を提供している。日本薬科大学客員教授兼任。著書:『障害者雇用の実務』(労務行政研究所)など多数。

 21世紀はウイルスの時代という予言が、新型コロナウイルスの出現により現実の危機となった。この危機の到来を想定していた企業は皆無であり、大きな打撃により所属員も含め企業全体がメンタル不全に陥ったといえよう。今後も起こり得る感染症のパンデミック(世界的大流行)を乗り越えるため、企業が行うべきメンタルヘルスケアについてまとめてみたい。

正しい知識は安心の(いしずえ)

 ウイルスなどの病原体を恐れるのは、得体(えたい)の知れない極小の見えざる相手だからだ。このような危機的状況に陥る恐怖と不安によりデマが流布し、身内をも含めあらゆる人が信じられなくなる。特に最近はSNS等で根拠のない情報も即座に拡散し行動化を促すため、不信感はますます増強してしまう。あふれる情報に踊らされず、真実を見抜き、自ら冷静に判断するために、感染症について正しい知識を身につけておきたい。知識が備わっていれば相手が見えずとも自律的に行動でき、不安は確実に軽減するはずである。
 これまで企業の事業継続計画(BCP)は感染症を想定しておらずパンデミックには無力だった。想定内を増やし不要な恐怖と不安を抱かないためにも、感染症を正しく知る従業員教育の機会をBCP対応にぜひ加えてほしい。

危機から学ぶ新・働き方改革

 あらゆる危機は社会に大きな喪失と変化をもたらす。今回のパンデミックで提言された新しい生活様式(NEW NORMAL)もその一つであり、この変化への順化には一定期間(3~6カ月程度)が必要である。その間は常に強いストレスを受けているのだが、自覚できない場合が多い。今までにない心身の不調や持病の悪化が生じたら、ストレスを意識して感じてほしい。
 一方で、危機はさまざまな教訓をわれわれに与えてくれる。皆さまも普段とは違う気づきが多かったのではないだろうか。すべてを元に戻せばよいという思考では、危機が繰り返された際に同じ結果に至るだけである。NEW NORMALに適した新しい働き方への移行は痛みも伴うが、次の危機的状況が訪れたときのストレス対策として避けては通れない。個人任せにせず、新・働き方改革に企業一丸となり取り組んでほしい。

感染症を視野に入れた健康経営

 感染症は治療よりも予防が重要である。病原体への抵抗力を保つために、十分な睡眠と栄養(食事)、適度な運動(身体活動)とストレス発散ができる時間を日常的に確保してほしい。健全な精神は健全な肉体に宿るといわれるように、身体の健康を保つことは、感染症の予防だけでなく、心の安定にもつながるはずだ。健康経営の一環として、ワーク・ライフ・バランスをより重視した働き方を目指したい。また、予防接種は心身の抵抗力を増強すると同時に安心感をもたらす。ワクチンがあることの貴重さは今回特に身に染みたと思うので、既に開発されている麻疹(はしか)、風疹、インフルエンザなどのワクチン接種を企業も積極的に推奨してほしい。

オンラインストレスへの気づきと対応

 人間のコミュニケーションの9割は非言語情報により成り立っている。在宅勤務では伝達手段が限られるため、言語情報に偏ってしまい、情報量不足によるストレスを感じる場面が増えている。また、オンライン画面を見つつ(目)会話し(口)、文字をタイプする(手指)という複雑な作業を同時に行うのはかなりのストレスである。さらにクラウド上の仮想空間で公開講座や展示会などに参加する機会も増えている。
 このような新しい作業環境におけるコミュニケーション技法の習得には一定期間を必要とし、かつ個人差も大きい。その間は過剰なストレスに対し、積極的かつ具体的なストレス軽減策を講じることが必要不可欠だ。ストレスについて正しい知識を身につけ、オンラインストレスを見逃がすことなく対処していこう。

対人関係への新しい処方箋

 自粛生活の奨励とSocial Distancingにより、他人との距離が遠くなり、直接相対して会話する機会が極端に減っている。一方で、在宅勤務や休校・休園・休暇等により同居者との距離が近くなり過ぎ、普段であれば何気ない一言が相手を刺激し、要らぬ緊張や暴言・暴力(極端な場合は家庭内暴力〔DV〕)を生み出している。
 これは自分のパーソナルスペースに適した対人距離が保てず、知らず知らずの間に蓄積されたストレスをうまく対処できていない証拠である。この機会に自分のパーソナルスペースと、自分にとり適切な対人距離を再確認してみよう。同居者とは、スープの冷めない程よい距離を保ち、親しき仲にも礼儀ありで相手を思いやる気持ちを忘れないようにしよう。時には同居を一時的に解消することも効果的だ。
 また、他人とは関係が疎になり不安を感じているかもしれない。このような時には、あいさつをしっかりすることが大切だ。この機会にぜひオアシス運動(おはよう・ありがとう・失礼します・すみません、の頭文字を取ったあいさつ運動)を職場など自分が所属する場所で取り入れ実践してほしい。声を出してあいさつするだけでも心が落ち着くと思う。

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