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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2020.10.20]

[192]『企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医』

(尾林誉史/木下翔太郎/堤 多可弘 著 祥伝社新書 2020年6月)

 

 企業におけるメンタルヘルスの問題は深刻化・多様化していますが、本書では、従業員のメンタルヘルスの維持・増進は、今や企業経営の最重要テーマであるとし、専門の産業医の立場から、企業のあるべき姿について、具体例を挙げてアドバイスしています。

 第1章では、メンタルヘルス問題の歴史と変遷をたどるともに、最近の動向として、働き方の変化や世の中の変化がメンタルヘルスに与えている影響を紹介しています。この中では、ある企業で「残業時間を半減させたら、全員の所定労働時間を8時間から7時間に減らす」という取り組みを社長が発表したら、見事に残業時間が半減したという例も紹介されており、また、ITを活用して負荷の少ない働き方を実現する際のコツなども解説されています。

 第2章では、うつ病、パニック障害、ADHD(注意欠陥・多動症)など症例別に六つのケースを取り上げ、それぞれの症状、産業医のアプローチ法、上司や同僚が現場でできるサポートなどを解説しています。ここでは、かつては自閉症やアスペルガー症候群と呼ばれたASD(自閉スペクトラム症)や、最近注目されているPMDD(月経前不快気分障害)についても取り上げています。

 第3章では、経営戦略の中にメンタルヘルス予防を取り入れ、「健康経営」を実践していくことのメリットを解説しています。「健康経営」とは、経済産業省HPによれば、「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高めるための投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」であり、本書では、健康経営のメリットを、①生産性の向上、②従業員の活力向上、③企業の業績・外部評価の向上など七つの側面から解説しています。

 第4章では、メンタルヘルス問題の予防と対応のためのエッセンスを紹介しています。ここでは、産業保健体制をどのように整備するか、さらに、衛生委員会をどう活用すべきかを解説し、例として、メンタル不調者が出たときの対応から、休業開始時・休業中のケア、職場復帰の判断、復帰プランの作成、復帰の決定までの流れを解説しています。

 第5章では、経営戦略としての健康投資について解説しています。健康投資とは、「健康経営の理念に基づく取組に要する資金や人的作業・労力を『経営資源』として投入すること」(経済産業省HP)を指し、これを進めるメリットとして、外部評価の向上に直結し、外部からの投資を引き出せることを挙げています。ここでは、「健康投資管理会計」という考え方や、経産省ヘルスケア産業課が公表している「企業の『健康経営』ガイドブック」を紹介するとともに、どのような健康投資が有効かについて、福利厚生を例に解説しています。また、健康投資はやり方次第では投資額以上の即時的なリターンをもたらすという意味で、もっと注目されるべきだとしています。

 メンタルヘルス問題への対応を、経営戦略としての健康投資という観点から解説した良書だと思います。各章末にコラムがあり、例えば「レジリエンス」について、メンタルの観点とキャリアの観点から解説されていたりもします。人事パーソンにとって、メンタルヘルス問題に関する〈知識〉をリニューアルし、〈意識〉をブラッシュアップする上で手頃な本です。
 どれだけ実践に結びつけるか、経営陣の意識改革はどうするか、といった課題はまだ残るかと思いますが、まずは自身の意識改革から始めるべきかもしれません。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2020年6月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー

 


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