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Point of view [2020.04.24]

第155回 清水令奈

女性活躍推進法施行から4年
なぜ組織での女性活躍推進が進まないのか

清水令奈 しみず れな
株式会社CHANCE for ONE 代表取締役社長

立命館大学経済学部卒業後、㈱リクルートコスモスに入社し経営トップの秘書として従事。2002年マンパワー・ジャパン㈱に移りキャリアコンサルタントとして人材マッチングに従事。その後、㈱コーチ・エィにてビジネスコーチとしてビジネスリーダー、マネジメントへのコーチング、企業研修に従事。2010年個人事務所設立を経て、2012年㈱CHANCE for ONEを設立し代表取締役社長就任。

 多くの日本企業では、女性活躍推進の取り組みを開始してから数年が経過したと思う。しかしながら、それなりにやっているにもかかわらず、思うような成果が見られないという企業も多いのではなかろうか。
 今回は、組織での女性活躍推進がうまくいっていないという企業で、よくありがちな三つのケースについて紹介したい。

ケース1:課題と施策が合っていない

 筆者が某企業の人事担当役員と実際にしたやりとりである。

人事担当役員(以下、役員):「女性社員の意欲が低くて困っている。管理職候補になれる人材もいない」
私:「そうですか。では、御社では意欲が低い女性社員を採用されていらっしゃるということなのでしょうか」
役員:「そんなことはない。むしろ意欲の高い女性を積極採用している」
私:「では、入社した時点では、意欲の高い女性社員が、御社に入社すると意欲がなくなってしまうのですね。」
役員:「・・・・・・」
私:「彼女たちをそうさせてしまっている原因は、一体、何なのでしょうか?」
役員:「うーん・・・・・・」

 入社時点から意欲が低い女性社員を採用しているならば、それは「採用の課題」といえるだろう。しかしながら、このケースでは、入社時点では意欲が高かった女性社員が、社歴を重ねるとともに意欲が低くなるということなので、どうやら、女性への関与の仕方や職場環境に問題があるように思われる。
 このような状況にある場合、まず取り組むべきことは「女性の意欲が下がっている原因を明らかにすること」である。また、「管理職候補になる女性がいない」という前に、そもそも「女性に対して管理職になるために必要な経験の機会を与えているのか」という点についての見直しも行ったほうがよいだろう。その結果、やるべきことは「女性部下を育てることのできない上司のトレーニング」や「性別による業務分担の見直し」ということになるかもしれない。
 しかしながら、こちらの企業では、女性の意欲が低いからという理由で「女性社員限定の研修」を熱心に行っているらしい。研修を通じて一時的に女性社員の意欲を高めることに成功したとしても、日常業務で彼女たちの成長につながる機会が与えられないならば、期待するような結果が伴わないのは当然のことであろう。

ケース2:影響力を持っていない人に任せっぱなし

 少数派が活躍できる風土づくりには、「組織の多数派」の意識改革や協力が欠かせない。これは女性の活躍だけにとどまらず、心身にハンディのある方や外国人の方など、あらゆる少数派の活躍のためには、先に多数派の理解が欠かせないのと同様のことだ。
 つまり、女性活躍推進の実現には、多くの組織で多数派であるはずの男性社員が主体的になることが欠かせないのだが、なぜか多くの企業では「女性活躍推進」の取り組みを、当事者である女性社員(かつ若手社員であることが多い)に任せきり──というケースをよく見掛ける。
 筆者は推進担当を任されている彼女たちの求めに応じて、組織での女性活躍推進の進め方について相談に乗るケースも多いのだが、任せられた彼女たちだって、その能力を発揮した活躍ができず、これからのキャリアに思い悩んでいる当事者なのである。
 そして残念ながら、影響力を持っていない彼女たちの発信は、組織の多数派には届きにくい。むしろ、そのような「影響力のない社員」に推進役を任せていることによって、組織が本気で取り組む気がないというメッセージを与えている可能性すらはらんでいる。
 女性活躍推進には「採用」「定着」「登用」といったあらゆる段階での取り組みと、かつ「機会を与える」「制度を整える」「意識を高める」といった幅広い領域へのアプローチが必要であり、そして、成果が出るまでにも時間がかかる。このような難易度の高い取り組みは、経営トップか人事担当役員等の、組織の多数派に対して大きな影響力を持つ層のリーダーシップなく実現することはあり得ないのである。

ケース3:「子どもを持つ人」だけが注目されるような取り組みをしている

 「結婚して子どもを持っていても活躍できる」環境整備は必要であるが、一方で、そうした社員ばかりが注目されるような進め方をしているケースもしばしば見受けられる。
 女性社員の中にも多様な価値観があり「結婚をしない」と決めている人にとっては、ロールモデル像を押しつけるありがた迷惑な話であり、また、結婚をしていても「子どもを持たない」もしくは何らかの事情で「子どもを持てない」人にとっては、ただ辛いことでしかない。
 女性活躍推進の目的は、「結婚」や「出産」の奨励ではなく、時間的な制約条件があっても、十分にその意欲や能力を発揮できるような環境や制度や仕組みを整え、あらゆる女性の一層の活躍を促していくことだ──という認識に立った上で、自社での取り組みが誤ったメッセージ発信につながっていないか、今一度、見直していただきたい。

 最後になるが、そもそも組織での女性活躍推進は、短期間で著しい成果が見えるようなものではなく、10~20年といった長い時間がかかる根気の必要な取り組みである。女性活躍推進法施行から4年たった今、組織での持続的かつ継続的な活動の在り方を、あらためて考えてみてはいかがだろうか。

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