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採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント [2020.01.07]

2020年1月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 いよいよ今年は、世界最大のスポーツの祭典が日本で開催されますね。多くの日本のアスリートが代表の座を争って戦う姿を見ていると、すでに胸躍るドラマが始まっているといえます。一方で、協会、監督、コーチのパワハラ問題がさまざまなところで起こっています。これは、単に一部の特別な人が引き起こした問題ということではなく、スポーツの世界でも、これまでの組織と個人、上司・部下の関係性が大きく変わってきていることも大きな原因ではないでしょうか。
 組織と個人、企業と働く人の関係性は、世界でも大きく変わってきているといわれていますが、日本ではその影響が他の国よりはるかに大きいのではないか、と私は思っています。なぜかと言えば、少子高齢化が世界最速で進んでいること、多くの企業(特に大手企業)でグローバルビジネスの発展が急務であること、そして、これまで日本の強さを支えてきたメンバーシップ型雇用がジョブ型雇用に(まだら模様に)変わっていこうとしていることなどがあるからです。
 大きな環境の変化は、ピンチでもありチャンスでもあります。私たちHR総研は、企業の皆さまにお役に立てる情報の提供を積極的に行い、日本の持続的発展に少しでも寄与できればと思います。本年も何とぞよろしくお願いいたします。

半数以上が「経団連の就活ルールの廃止」に賛否保留

 さて今回は、前回に引き続き、2019年11月にクチコミサイト「就活会議」を運営する株式会社リブセンスとHR総研が共同で実施した2021年卒業予定の就活生を対象とした「インターンシップ及び就活意識調査」の結果を報告します。「経団連の就活ルールの廃止」や「ジョブ型採用(職種別採用)の拡大」「一律初任給の廃止」の動きについて、あるいは就職ナビ「リクナビ」の閲覧履歴に基づく内定辞退率予測データの提供問題を学生はどう捉えているのかを見ていきたいと思います。
 まずは、「経団連の就活ルールの廃止」について見ていきます。2021年卒学生からが対象となる「経団連の就活ルールの廃止についての賛否」を聞いたところ、文系・理系ともに「どちらとも言えない」が51%となっており、「賛成」は文系24%、理系33%、「反対」は文系25%、理系16%となっています[図表1]。文系学生より理系学生の賛成派がやや多いものの、半数以上の学生が「経団連の就活ルールの廃止」の影響をイメージしづらく、賛否を判断しかねる状況であることがうかがえます。

[図表1]経団連の就活ルールの廃止について

資料出所:HR総研×就活会議「2021年卒学生のインターンシップ及び就活意識調査」
(2019年11月。以下図表も同じ)

 「経団連の就活ルールの廃止についての賛否」の理由としては、賛成派は「もともと形骸化しているルールが撤廃されるだけだから」「自分に適したタイミングで就活ができる」という回答が多く、影響を感じない、または就活スケジュールの自由度が上がると感じていることがうかがえます。ただ、「就活ルールの廃止=通年採用」と誤解している学生も見受けられます。一方、反対派は「前年までの事例を参考にできない」「情報収集が追い付かない」という回答が多く、ルールの撤廃により就活スケジュールをつかみづらくなると捉え、より一層の就活戦線の複雑化に対する不安を感じていることがうかがえます。さらに、最も回答者が多い賛否保留派(どちらとも言えない)は、「影響が分からない」「決まったものは仕方がない」など、諦めの姿勢で経団連の就活ルールに対する関心の薄い学生が多いことがうかがえます。

【賛成】

・自分が就活を行いたい時期に自由に決められることは、大学生活全体のプランを立てる上で自由度が大きく向上するため(旧帝大クラス・理系)

・すでにルール自体が形骸化しているほか、そもそも経団連に加盟していない企業には制約にもなっていなかったため(旧帝大クラス・理系)

・チャンスが増えるから。同じ時期に行わないことは、たくさんの企業を受けることができるので(その他国公立大・理系)

【反対】

・ルールがあったほうが、選考時期が分かりやすい。また、ルール廃止により選考が早期化すると、大学院生などインターンに参加しづらい人にとっては不利だと思う(旧帝大クラス・文系)

・前年までの例を参考にできないのは非常に困るから(早慶大クラス・文系)

・ただでさえフライングしている企業もあるのに、早いところは早すぎて情報が追い付かない(その他私立大・理系)

【どちらとも言えない】

・撤廃されたところで、今すでに内々定や囲い込みは存在しているので、それが表に出てくるだけなのでは?という感じだから(中堅私立大クラス・文系)

・そもそも現状のルールを把握していない(上位国公立大・理系)

・すでに就活を始めているので、決まってしまっているものは仕方がない(旧帝大クラス・理系)

「ジョブ型採用の拡大」に反対は1割以下

 次に、「ジョブ型採用(職種別採用)の拡大」の動きについての意見を見てみましょう。文系・理系別に見ると、文系では「賛成」が47%、「どちらとも言えない」が43%、「反対」が10%となっています。対して理系では、「賛成」が67%、「どちらとも言えない」が28%、「反対」が5%となっており、明確な反対派は1割以下で、理系学生のほうがジョブ型採用に対して寛容であることが分かります[図表2]。能力やスキルに関する企業のニーズに対し、より直接的にアピールしやすい専門知識や技術を学ぶ理系学生は、ジョブ型採用が自身の就職活動に有利に働くと予測していることがうかがえます。

[図表2]ジョブ型採用(職種別採用)の拡大について

 賛否の理由を見ると、賛成派は「入社後のミスマッチを防げる」「選考時に強みをアピールしやすい」など、すでに自身の適性や強みを認識していると思われる学生の意見が多くなっています。一方、反対派は「視野が狭くなりそう」「一通りの職種を経験した上で自分に合う職種を見つけたい」など、現時点で職種を固定せず、自分の可能性を広げた上で慎重に考えたい学生が多い傾向がうかがえます。さらに賛否保留派は、「専門知識を持つ人や希望職種が決まっている人はよいが、そうでない人は困る」「入社後に職種変更が可能であれば賛成」など、ジョブ型採用のメリットとリスクの両面を考慮し、現時点では賛否の判断をしかねていると推測されます。
 新卒ジョブ型採用には、賛否問わずさまざまな不安を抱える学生がいることが見えてきました。したがって、より柔軟な制度設計やきめ細やかな情報提供により、就活生の不安感を払しょくし、応募者のニーズに合った採用制度として機能させる必要があるのではないでしょうか。

【賛成】

・総合職採用で入った後どうなるか分からないよりも、入るときから分かっていたほうがミスマッチが少なそうだから(上位私立大・理系)

・自分の専攻を生かせる、やりたいことがやりやすい。しかし、これまで日本はジョブ型採用に消極的だったのに、その姿勢を変えられると戸惑う(上位私立大・理系)

・入社した後の仕事がイメージしやすくなるから(上位国公立大・文系)

【反対】

・社会人として一通り職業経験を積んだ上で、自分の適性に合った職種を選ぶ形の働き方を希望しているため(旧帝大クラス・理系)

・文系の学部では、専門的知識の習得が不十分であり、そのため就活時に職種別に募集したところで内定後に新卒の想像と実際の仕事にギャップが生じるから(上位私立大・文系)

・視野が狭くなりそう(その他国公立大・理系)

【どちらとも言えない】

・やりたいことが決まってから入社するならいいが、マッチする職種を人事に選んでもらいたいという新卒もいると思う(旧帝大クラス・文系)

・ジョブ型採用がよく分からない。学生の間であまり認知されていないのではないだろうか(上位私立大・文系)

・特に専門的知識を持つ人にとってはよいと感じる。しかし、実際働いてみて不向きだったと感じた際にどうなるか、不安である(その他国公立大・理系)

8割の学生が「一律初任給の廃止」に理解

 続いて、新卒の新入社員でも特別なスキル・能力を持つ人材には特別の処遇を提示する「一律初任給の廃止」の動きについて、学生の賛否を見てみましょう。文系では「賛成」が78%、「どちらとも言えない」が18%、「反対」が4%であり、理系では「賛成」が81%、「どちらとも言えない」が12%、「反対」が7%となっており、文系・理系ともに8割が賛成派であることが分かります[図表3]

[図表3]新卒新入社員の一律初任給の廃止について

 記入があった賛否の理由を見ると、賛成派は「能力のある人材がより多くの報酬を得るのは当たり前だから」「会社に有能な人材が集まるから」「モチベーションが上がるから」など、組織力の強化や自身の能力開発に向けて前向きな意見が多くなっています。一方、反対派の意見は、「先輩社員の目が気になる」「自分の能力・スキルが低い」など、自分の立ち位置に自信が持てず不安を持つ意見が多く見られます。さらに、賛否保留派は、「処遇を判断する基準が大事」「制度はいいが、自分の能力に自信がない」など、制度の思想には賛成する反面、判断基準の明確化など不安要素の解決が必要と思われます。
 この結果から、自分の適性や強みを生かした就職により、その能力に見合った報酬を求める学生が多い傾向にあることがうかがえます。今後、一律初任給の廃止は新卒ジョブ型採用に連動して導入され、評価基準を明確に示すことで、就活生に対し訴求力のある採用制度として広がることが見込まれます。

【賛成】

・年功序列制よりも、スキル・能力を発揮した人たちに良い処遇を提供すべきだと考えるから(その他私立大・文系)

・能力がある人がそれ相応の対価を受け取ることでより多くの人材が集まってくるだけではなく、会社としても人材流出を防ぐ意味で非常に有効な方法だといえるため(旧帝大クラス・理系)

・モチベーションにつながるから(上位国公立大・文系)

【反対】

・特別な処遇を提示してもらっても、先輩社員たちから嫌な目で見られそうだから(その他国公立大・理系)

・同世代で収入に差が開きそうだから(その他国公立大・文系)

・自分が特別なスキルなど持っていないから(上位私立大・文系)

【どちらとも言えない】

・学んできたことを活かせる職に就ける人は良いが、大学に入って新たな道を見つけることもあると思います。両者のことを考えると、どちらとは言えません(その他国公立大・理系)

・制度自体はいいと思うけれど、自分の能力が高いと思えないから何とも言えない(その他私立大・理系)

・処遇を判断する基準がしっかりとしていればどちらでも適切だと思う(上位私立大・理系)

影響が拡大し続ける「リクナビ」の内定辞退率予測データ事件

 次に、リクルートキャリアが運営する就職ナビ「リクナビ」の閲覧履歴に基づく内定辞退率予測データの提供問題についての学生の捉え方を見てみましょう。この問題をめぐっては、内定辞退率予測データの提供を受けた契約企業37社にも政府の個人情報保護委員会から行政指導が行われ、さらに厚生労働省も職業安定法違反であるとして、東京労働局などを通じて行政指導を行う事態となり、事件はリクルートキャリアにとどまらなくなっています。
 また、個人情報保護委員会は、Webブラウザのログイン情報をためた「Cookie(クッキー)」情報について、現行の個人情報保護法では「個人情報」にも「個人データ」にも当たらないとしていますが、今後予定される法改正に向けた骨子案では、「提供元では個人データに該当しないものの、提供先において個人データになることが明らかな情報について、個人データの第三者提供を制限する規律を適用する」としています。「Cookie」は、リターゲティング広告をはじめ、さまざまな分野で利用されており、今回のリクナビ問題を契機とした規制は、就職ナビにとどまらず、Webサービス全体に影響を及ぼす可能性があります。個人情報の保護はもちろん重要ですが、拡大解釈するのではなく、規制は必要最小限にしてほしいものです。
 これまで「マイナビ」と就職ナビ2強を形成し、9割ほどの就活生が利用してきた「リクナビ」ですが、学生は今回の問題をどう見ているのでしょうか。全体では68%の就活生が「引き続き利用する」としている一方、「(すでに利用していたが)利用を控える」学生が17%、「利用予定だったが控える」が3%、「利用予定なし」が8%となっており、合わせて3割近い学生は「利用しない」としています[図表4]。もともと利用するつもりのない学生はともかくとして、「利用を控える」「利用予定だったが控える」とする2割の学生は、今回の問題を契機に「リクナビ」離れを起こしたことになります。

[図表4]「リクナビ」の利用について

 文系・理系別に見てみると、文系は32%の学生が「利用しない」としているのに対して、理系では「利用しない」とする学生は23%にとどまります。ライバルの「マイナビ」と比較した場合、理系学生での利用度は「リクナビ」のほうがわずかながら上回る傾向があり、ここでも理系学生からの支持は根強いものがあります。AIやCookieに対する理解度の違いもあるのかもしれません。

GAFAに通ずる「リクナビ」の影響力

 「利用する派」と「利用しない派」のそれぞれの理由も見てみましょう。まずは「利用する派」の理由です。

・リクナビにしか情報を掲載していない企業もあるため(早慶大クラス・文系)

・利用者にとって有益なサービスには変わりない(旧帝大クラス・理系)

 意外ですが、そもそも内定辞退率データの提供の何が問題だったのかが分からないという学生もいます。さらには、「リクナビ」に限ったことではないのではないかと考える学生もいます。

・情報漏洩は問題だが、特に重要な情報とは感じないから(その他国公立大・理系)

・別段何も気にならないから(旧帝大クラス・理系)

・正直何が問題だったのか分からないから(上位私立大・文系)

・リクナビの件がたまたま表に出ただけであり、裏ではどのサイトでも行われていると考えているから(上位国公立大・理系)

・どうせ個人情報は漏れているものだと前から思っていた。他のサイトも漏れていると思っている(旧帝大クラス・文系)

 問題となったのは2019年卒と2020年卒の学生データであり、自分たちが被害に遭ったわけではない、あるいは、問題を起こした今だからこそ、自分たちを対象としたサービスにおいて同じことを繰り返すことはあり得ないと考えている就活生も多いようです。

・自分の就活にはあまり関係ないと思うから(上位国公立大・文系)

・逆に、今は何もしてないと思われるので、信用できる(上位私立大・理系)

・問題が発覚した今だからこそ、逆にリスク管理が一番高い状態にあると考えるから(早慶大クラス・文系)

 大学キャリアセンターの中には、就活ガイダンスからリクルートキャリアを排除したり、学生へ案内する就職ナビから「リクナビ」を外したりしたところもあります。「リクナビ」の一方のユーザーである学生の利益を顧みることなく、もう一方のユーザーであるスポンサー企業にばかり目を向け、営利に走りすぎたリクルートキャリアの企業姿勢自体に「ノー」を突きつけたわけですが、利用する学生は「企業」ではなく、あくまでも「サービス」としてしか見ていないように感じます。

学生の就職ナビ離れを加速する懸念も

 次は、「リクナビ」を「利用しない派」の理由を見てみましょう。
 利用しない理由として、「信用できない」を挙げる声が最も多く、前述の「利用する派」の理由とは逆で、「サービス」ではなく、「企業姿勢(企業体質)」そのものを問題視しています。

・信用できないと感じたため。問題発覚以降、アプリは起動していない(その他国公立大・理系)

・倫理観が欠落した行動であり、今後も同じようなことが起こり得ると判断したため(旧帝大クラス・理系)

・情報の扱いに関して管理が行き届いていないところに自分の情報を登録し、就活においてマイナスの影響を与えられたくないため(早慶大クラス・文系)

・その他の個人情報も企業側に提出している可能性もなきにしもあらず、と考えられるため(旧帝大クラス・文系)

 「リクナビ」にこだわらなくても、「マイナビ」をはじめとする他のサービスで十分だとする就活生も少なくありません。

・マイナビで十分だから(上位国公立大・理系)

・学生側だけでなく企業側もマイナビ等の他のサイトへの移行を開始している企業が散見されるため(上位私立大・理系)

・ナビサイト全体に不信感を持ったので、やや使用を控えている(その他国公立大・文系)

 今回の問題の影響が「リクナビ」だけにとどまらず、他を含めたサービス全体が同じ目で見られてしまう懸念もあります。これまで長らく就職ナビの2強を形成してきた「リクナビ」と「マイナビ」ですが、今回の一件で2021年卒の学生利用度の点では2者の間に大きな差がつくことは間違いないでしょう。
 近年、従来型の就職ナビに対して、登録されたエントリーシートの内容に応じて企業からオファーする逆求人型の就職サイトの利用が伸びていますが、この動きがさらに加速する契機になるかもかもしれません。また、学生の就職ナビ離れが進むとすれば、企業はダイレクトに自社の採用ホームページへ学生を引き込むためのマーケティング手法を導入する必要が出てきます。リターゲティング広告や採用を意識したオウンドメディアサイト、YouTube等のSNSの活用など、就職ナビだけに依存しない採用活動を模索してみてください。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/

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