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Point of view [2019.11.08]

第145回 矢島大輔

RPAが人事業務を革新する

矢島大輔 やじま だいすけ
UiPath 株式会社 マネージャー

大手SIer、大手コンサルティングファーム複数社を経て現職。これまで人事戦略・制度構築、タレントマネジメント施策策定、BPR、HRシステム/BPO構想策定・導入支援、HRシェアードサービス導入支援等、HR領域におけるコンサルティングに幅広く従事。現在、UiPathユーザー企業の人事部向けに、RPAによるデジタル化推進組織の構築、RPA人財育成およびRPA導入・展開支援等、RPAによる人事変革支援をリード。

1.はじめに

 Robotic Process Automation(以下、RPA)とは、これまで人が行ってきた事務作業をロボット(ソフトウェア)を使って自動化する仕組みのことで、働き方改革を実現するための実践的なテクノロジーとして経営層に注目され、ここ数年で多くの企業がRPAを導入・活用し始めている。
 そこで今回は、今後RPAの活用を視野に入れている人事部門の読者にRPAを正しく理解していただけるよう、最新動向に触れながら、導入・運用ポイントを中心に説明する。

2.RPAによる自動化に適した業務

[1]RPAの特長
 RPAとは、パソコンで従業員が日常的に行う作業を自動化することで、圧倒的な生産性を獲得する技術であり、特長としては以下の三つが挙げられる

①正確に処理する
 RPAは、設定されたとおりに処理を実施するため、人間と違って作業ミスや疲労によるヒューマンエラーが発生せず、正確に作業を実施、処理することが可能である。

②高速に実施する
 RPAは、パソコンの性能を活用して実施するため、人間の作業スピードのレベルを超えて高速に処理することができる。

③新たなシステム構築を行うことなく自動化を実現
 パソコンの画面上に自動化の対象となる既存のアプリケーションやブラウザ等があれば、それらを連携した操作をRPAに記憶させるだけで、新たなシステム構築を行うことなく作業の自動化を実現できる。

[2]RPAの適用パターン
 上記のような特長を有するRPAは、これまで人が行っていたルールベースのさまざまな業務に適用が可能である。代表的な適用パターンは、次の六つがある。

①「集計・加工」:さまざまなデータを収集・加工してレポート等の作成を代行する

②「突合・判断」:異なるインプット同士の情報を突き合わせ、内容のチェックを代行する

③「モニタリング」:報の状態を確認し、判定ルールに基づき異常なケースを検知する

④「入力代行」:他部署・他システムからの情報連携を受けてシステムへの入力を代行する

⑤「データベース補正」:情報鮮度を高めるためデータベースの補正、アップデートを行う

⑥「照会受付・回答」:第三者からの問い合わせ照会を受けて、必要な情報を確認し回答する

 これら六つの適用パターンを軸にして、営業等のフロント業務だけでなく、人事、経理、購買等のバックオフィスでも活用の幅は広がっており、各企業でRPAを前提とした業務処理が当たり前になりつつある。

3.最新技術とRPAの連携で広がる自動化の可能性

 そして、いま注目されているのは、AI-OCR(収集した大量の文字データから文字の特徴を学習し、高精度な文字認識を可能とするソリューション)、AI(人工知能)、チャットボット(テキストや音声を通じて会話を自動的に行うプログラム)等、新たなテジタルツールとの連携による自動化である。人間に例えると、マシンラーニングやディープラーニング等のAIは「頭脳」、AI-OCRは「目」、チャットボットが「耳と口」の役割を果たす。そして、RPAが「神経系」となり、「手」や「足」の役割を果たす社内のさまざまな情報システムや基幹システムにつながる。
 例えば、AIとの連携では、AIで分析するためのデータの収集・加工作業をRPAが担い、さらにAIがデータ分析を実行した後、その結果を受け取り、レポート作成を実行する。また、AI-OCRとの連携においては、AI-OCRが手書き用紙や非定型・定型の紙媒体を読み込み、作成したデータを基に、RPAがレポート作成、システムへのデータ登録等を担う。そして、チャットボットとの連携においては、チャットボットがユーザーからの問い合わせ内容をデータ化し、RPAはそれを使ってシステムへのデータ登録等の後続作業を担うことが挙げられる。
 RPAは、さまざまなデジタルツールと連携することで、ルールベースの定型業務だけでなく、より複雑な業務へ適用範囲を拡大することができる。また、人事システムのデータベース・テーブルに管理されている各種人事情報等の構造化データだけでなく、画像や文書、音声等の非構造化データを扱うこともでき、より高度な自動化が可能となる。
 さらには、プロセスマイニングツールとの連携も注目を浴びつつある。プロセスマイニングとは、企業内のさまざまなシステムに蓄積されているイベントログデータから業務プロセスを"見える化"し、各作業の流れや所要時間や手戻りが発生した作業を明らかにすることで、プロセスの最適化をはじめ、RPA導入検討のためにさまざまな定量的な分析を可能にする手法・ツールである。RPA推進担当者は、プロセスマイニングの結果を基に、業務プロセスの見直しを図り、最適なRPA導入対象業務やその効果を見極め、RPA導入・運用のPDCAをより効果的に回すことができる。

4.人事業務におけるRPA適用事例

 ここで、人事業務でのRPA適用事例として「出退勤時間精査」事例を紹介する[図表1]

[図表1]「出退勤時間精査」事例でのRPA適用範囲イメージ

 ある企業では、正確な労働時間管理を行うために、本人からの勤怠実績の申告とビルへの入退室時間の実績とを比較し、大きな差異がある従業員にアラートを出すという業務を、これまで手作業で行っていた。従来の作業手順の概要は、以下のとおりである。

手順1:従業員が勤怠管理システムへ労働時間を登録・提出する

手順2:勤怠担当者は、月初に先月分の勤怠時間を入退室管理システムや勤怠管理システムからデータを抽出し、本人が申告した出退勤時間と入退室時間とを突き合わせする

手順3:突き合わせの結果に基づき、両方の時間に大幅な差異がある従業員を特定する

手順4:勤怠担当者は、当該従業員の部門長にExcelのサマリーを添付してメールにて報告する

 これまで担当者1名が、毎月第1営業日の大半の時間を費やしていたこの業務にRPAを適用した結果、手順2のシステムからのデータ抽出作業から手順4の部門長へのメールの送信までが自動化でき、勤怠担当者は、煩雑な作業から解放された。また、月次で行っていたこの作業を、週次へとサイクルを増やすこともできた。
 ほかには、[図表2]のような人事業務にもRPAを適用できる。

[図表2]RPA適用例

業務領域 RPA対象業務概要
採 用 求人票の作成
入 社 各種システムへの新入社員情報の登録
契約管理 契約社員・派遣社員の契約満了日チェック
証明書発行 会社指定フォーマットの証明書作成
勤怠管理 年休5日取得状況のチェック

5.RPA適用前に認識しておくべきこと

 これまでの内容から、「RPAを導入すれば、どんな作業でもすぐに自動化できるのではないか」という印象を持たれた読者がいるかもしれない。しかし、それは誤解である。RPAを適用する前に幾つか認識しておくべきことがある。
 まず、RPAを作るには、現状の業務の正確な整理が前提となる。RPAは各業務担当者のノウハウや努力によって作り上げられた業務が対象となるため、自動化するには業務の整理・最適化を現場レベルで実施する必要がある。
 また、RPAを作り・直せる人財も不可欠だ。プログラミング知識がなくてもRPAの開発は可能である。しかし、業務をフローチャート化するなどRPAを動かすために求められる最低限のスキル教育は避けて通れない。さらには、研修の受講だけでなくRPA開発作業を通じて、開発ノウハウを持つ人財を育て・維持する環境づくりも必須となる。
 そして、RPAは作って終わりではなく、常に改善が求められる。RPAは、取引先とのやり取りの変化、実行タイミングの変化、継続的な業務改善、組織の変化、担当者の変化、ファイルフォーマットの変化、システムの刷新、業務や接続するシステムの変化など、その業務を取り巻く変化に応じて改善を施さなければならない。いうなれば、RPAは、現場の変化に追従して改善し続けることで、効果を生み出し続けることができるテクノロジーといえる。

6.RPA適用のポイント

[1]スモールスタート
 RPAを人事部門内で適用するには、スモールスタートのアプローチが望ましい。スモールスタートとは、RPAへの理解と人財の育成とを合わせて段階的に部門全体へ適用させるアプローチである。
 まずPoC(Proof of Concept:新しいプロジェクトが本当に実現可能か、効果や効用、技術的な観点から検証する行程)で得られた成功体験を通じて、腹落ちしたコアメンバーを招集し、今後のRPAによる変革の中心人財として位置づける。そして、PoC後は、コアメンバーが中心となり、大きな効果を見込める業務についてRPA導入を進める「トップダウン観点」と、業務ごとに担当者目線で抽出した効果の小さい少量多品種の作業にRPAを適用する「ボトムアップ観点」の双方からRPA化を推進する。
 前述したように、RPAは正確に業務を整理しないと動かないだけでなく、ロボットを作り・直せる人財も必要であるため、このように個々人の意識の改善と組織・プロセスの最適化をつなげていって大きくしていくというスモールスタートで展開することが効果を出すための正しいアプローチといえる。

[2]RPA適用の効果の考え方
 RPA適用の効果をコストの観点、特に人件費の観点のみで議論してはならない。コストの観点だけで議論してしまうと、RPA適用が行き詰まる可能性がある。RPA適用の効果としては、コスト削減だけでなく、品質向上、生産性向上、ガバナンス改善、社員満足度向上等といった相乗効果も期待でき、それらも考慮してRPAの適用可否およびその後の効果検証を議論していくべきである。具体的には、以下のような効果も考えられる。

①品質:業務がそもそもマニュアル化されていなかったために、担当者のスキルやインプット情報の違い等でバラバラだった作業品質が、RPAの適用を通じて標準化されて品質向上につながる。また、RPAが定型業務を担うことで、人はよりクリエイティブな仕事や新たな業務領域に時間を割くことが可能となり、業務の高度化も期待できる

②生産性:RPAは24時間365日働き続けることが可能であるため、人だけでは実現できなかった生産性向上が実現可能になる

③ガバナンス:RPAは、その適用により作業実施ログを出力し確認することが可能となるため、作業が可視化され、ガバナンスの改善にも役立つ

④社員満足度:退屈な定型業務や誤りが絶対許されない検証業務が自動化されることで、これまで担当していたメンバーが肉体的・精神的につらい状況から解放される。また、作業ひっ迫度の高い時間帯での業務を自動化することで心理的負担の解消にもつながり、その結果、社員満足度の向上にも寄与する

 また、コストの観点において、これまで外部委託していた業務についてもRPAの導入により内部で実施可能となるため、委託費を削減できる可能性があるなど、自社のコストだけにとどまらず、他の勘定科目にも範囲を広げて議論することも重要となる。

[3]対象業務の識別
 RPA適用対象業務については、業務の特性を理解して有効な領域から範囲から対象を抽出することを推奨する。例えば、[図表3]の業務選定マップのように業務ボリュームと難易度という観点で業務をマッピングすると適用範囲を選定しやすい。

[図表3]業務選定マップ

 「大ロットエリア」は、業務がシンプルかつ処理対象が多い業務群であり、すぐにでもRPAを適用すべき業務エリアである。次に「中ロットエリア」は、業務はシンプルであるがROI(投資利益率)は比較的低い業務群であるため、例えばグループ会社を含め処理対象数を集めた上でR「大ロットエリア」は、業務がシンプルかつ処理対象が多い業務群であり、すぐにでもRPAを適用すべき業務エリアである。次に「中ロットエリア」は、業務はシンプルであるがROI(投資利益率)は比較的低い業務群であるため、例えばグループ会社を含め処理対象数を集めた上でRPAを適用する等、適用に際しては一工夫が必要となる。「ポテンシャルエリア」は、処理対象が多いが複雑な業務群であり、ロボット構築時にはロジックが重視されるため、業務を正しく整理することが成功のポイントとなる。そして、「多品種小ロットエリア」は、処理対象が少ない上に複雑な業務群である。そのため、RPA適用の優先度は最も低く位置づけられ、業務の見直しを含め、慎重に検討すべき業務群である。
 一方、業務ではなく作業ベースで探すことも有効である。業務単位でRPA適用箇所を探すと採算が合わず苦戦することがある。しかし、業務を構成する作業単位で探すと、例えば、あるシステムから同じ形式のデータをダウンロードする等、複数の業務において共通して発生している作業を、RPA適用箇所として発見できることがある。前述した適用パターン「集計・加工」「突合・判断」「モニタリング」「入力代行」「データベース補正」「照会受付・回答」を参考に、作業単位でRPA適用箇所を探すことを推奨する。

[4]推進体制
 まずは前述のコアメンバーが中心となり、RPAのノウハウや環境を人事部門内に展開し、さらにRPAスキルを業務担当者へも移転して業務担当者自身によるロボット構築技術を共有化して、RPAの導入・活用を推進する。推進に当たっては必要に応じて全社的なRPA推進組織とも連携する。また、人事部門内の中間管理職は、配下の業務担当者がRPAに取り組む努力やそれを通じて得られたスキルを評価することが求められる。このようにRPAを導入・活用し、継続的に効果を得るには部門全体で取り組む必要があり、そうした意味で経営層・マネジメント層の本気度が問われる。

7.人事部門におけるRPA活用の必要性

 長時間労働の抑制を中心とした働き方改革、少子高齢化に伴う労働人口・構造の変化、働くことに対する従業員の価値観の変化など人事部門を取り巻く環境は複雑化している。人事部門は、優秀な人財の確保・育成・維持を通じた生産性向上への寄与だけでなく、社員一人ひとりの働きやすさ・やりがい、すなわち"働きがい"の実現も期待されており、人事部門の役割はこれまで以上に重要となる。
 人事部門においては、各担当者が戦略性をもって人財と接する仕事へ集中できる環境を創出するために、従来のBPR (Business Process Re-engineering)だけに頼るのではなく、RPA等の最新デジタルテクノロジーを積極的に活用することを推奨する。

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