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人生100年時代「生涯現役」に向けた40代からのキャリア戦略 [2019.06.04]

第4回 パターン別生涯現役構築を探求する


佐藤文男 さとう ふみお
佐藤人材・サーチ株式会社
代表取締役

【ポイント】

①「他社でも通用する専門性」があるなら、自分の持っている柱(専門性)を武器にどう企業に貢献できるかを考えて、転職も組み入れて仕事を継続するシナリオをイメージする

②副業が認められるのであれば、副業にチャレンジして将来の起業への可能性を模索することも考えられる

③役職定年や60歳の定年を機に起業する。その際には、起業に際して誰と組むか、起業する際のビジネスモデルの構築が鍵を握る

④自分1人でビジネスモデルを固めて、自分1人で起業する「お一人さま起業」という選択肢もある

⑤雇用にしても、起業にしても、地方に目を向けてみる視点も重要

1.専門性の確立から80歳までの雇用機会を探る

 今回は"個の自立"を前提にして、具体的に生涯現役を目指す上でどのようなキャリア構築パターンがあるのかを紹介する。
 私が定義するキャリアは「他社でも通用する専門性」になるが、仮に既に柱(専門性)を持っているのであれば、企業において自分の柱(専門性)を活かして貢献することで、なんとか雇用機会を確保できないか模索することになる。
 もちろん、80歳までの年齢を考えた場合に、現在勤務する企業に80歳までずっと在籍できる可能性はほとんどないと言ってよいので、自分の柱(専門性)を起点に雇われる機会を見つけるのが現実的であろう。例えば、柱(専門性)が営業という方は、好きや得意とする要素が接客につながるようであれば、キャリアの展開先として外食産業の接客にも期待が持てるだろう。このように柱(専門性)を核として、自分が好きな仕事、得意とする仕事という視点から周辺領域に展開していくと、新たな可能性を発見できるだろう。
 大切なのは、いかに別の企業で自分の柱(専門性)を活かして仕事を継続できるかを前提に視点を切り替えることである。
 前述したようにAI・RPAなど新たなテクノロジーの登場により、今後は仕事の在り方や仕事の中身がどんどん変容していくことは間違いない。将来のことは不確実性が高いので、現時点で自分が想像できる範囲で、自分の持っている柱(専門性)を武器にどう企業に貢献できるかを考えて、転職を視野に入れて仕事を継続するシナリオをイメージすることから始めよう。
 仕事を継続するシナリオで大切なことは、もはや役職やタイトルといったプライドを捨てて、自分の好きな仕事、得意な仕事、専門性と照合しながら、雇われ続けるために可能性のある職種および業種(業界)を選択していくことだ。
 職種は、自分の好きな仕事、得意な仕事、柱(専門性)の面から考えてもらう方向で構わないが、業種の選択は、80歳まで仕事を継続するといった前提で、かなり幅広く柔軟に考えたほうがよい。すなわち、今まで経験してきた業種だけでなく、まったく未経験の業種も視野に入れ、自分の柱(専門性)や自分が好きでかつ得意としている分野が活かせるか可能性を探っていく。
 現実問題として、65歳以降は中小企業で貢献していく選択肢が現実的といえよう。少子高齢化で労働力人口が減っていく中で、中小企業であれば、確固たる柱(専門性)があれば雇用機会を確保できる確率は高い。外国人労働者を確保して人材市場をカバーしようとする動きが出てきているので、中小企業でも通用する柱(専門性)があれば雇われることは可能であろう。要は、地位(ポジション)やタイトル、年収に固執しなければ雇用される道は開けると考える。
 80歳まで仕事を続けたいという想いがあれば、年収は低くても仕事に携われることに力点を置くことを自分として割り切れるかどうかが分岐点になる。

2.副業から起業につなげる

 副業から起業にステップアップするケースも今後は増えてくるだろう。起業そのものに抵抗感がある方は、むしろ副業をベースにして起業することを視野に入れておくとよい。
 いまや副業を解禁する企業も増えてきているので、仮に現在勤務する企業が副業を認めてくれるのであるならば、まずは副業にチャレンジして将来の起業への可能性を模索するというルートもある。副業に関しては、若い20~30代で始める方もいるが、40~50代といった中間管理職クラスのキャリアをベースに副業を始めたほうが、今まで培ってきたビジネス経験を活かせる利点もある。したがって、40~50代の方が週末を活用して副業を開始することは大変意義があると考える。
 ご存じのとおり、ビジネスモデルにもよるが、会社設立のため事前に準備する資金のハードルも以前ほど高くはない。私がかつて起業した2003年には、株式会社を設立する場合には、資本金が最低1000万円必要だったが、今では資本金1000万円は問われない。役員も代表取締役の1名だけでよい。
 副業は、ある意味、手堅く成功しやすい起業につながるのではないかと思われる。すなわち、ある程度、副業をうまく回せるのであれば、その延長線上として起業してもうまくいく可能性は高い。
 私の知り合いの例を挙げると、副業でネット通販のビジネスをやっていて、これがうまく回り出したので起業し、現在はそのビジネスをうまく展開している方がいる。あるいは、副業でたまたま塾の先生をやっていた知人で、小規模ながらも個別指導の塾を立ち上げ、地域に根差した経営でうまく回している方もいる。さらに、財務経理のスペシャリストであった方が、副業として知人の公認会計士事務所の手伝いをしていた流れから、自身も税理士の資格を持っていたので、自らの税理士事務所を立ち上げたケースもある。
 このように副業から実際に起業に至るケースにはさまざまなパターンがあるが、総じて、実際に起業した状況をある程度描きやすいので、いきなり起業するよりも成功する確率が高いといえるだろう。もしも現在勤務する会社が副業を認めてくれるのであれば、副業から起業という路線も考えるに値する。特に自分自身で将来会社を興したいと思っている方には、まずは副業から取り掛かるというのも、一つの選択肢といえよう。

3.50代あるいは60代で起業する

 いまや65歳まで定年延長をする会社も増えているが、会社によっては50代で役職定年となるケースもある。例えば、55歳で部長を役職定年になると、部長としてのタイトルは終了した職位で現在の会社に残るか、外部に転職先を見いだすか、あるいは自ら起業するという選択肢がある。特に今後は50代後半以降から60代にかけて会社を立ち上げる、すなわち起業するという方も多く出てくるのではないかと想定される。
 前述したように、65歳を超えても同じ企業に雇われ続けるのは現実に困難であることはビジネスパーソンであれば誰もが基本的に理解しているだろう。一企業が生涯現役を保証することは現実にはあり得ず、企業にとっても長期雇用には限界がある。
 もちろん、上記1.で説明したように、自分の好きな仕事、得意な仕事、専門性を活かして、企業規模や業種、年収水準にもこだわらずに雇われ続けるという選択肢もあるが、一方で自ら会社を興すということも意義があると考える。
 しかしながら、これまで起業の経験がないビジネスパーソンが、突然会社を興すとなると、当然ながら準備期間も資金も必要になる。
 50~60代で起業したいと考えている方にとって、会社を立ち上げる資金面や手続きは以前よりも容易にはなったが、起業そのものに関する勉強は不可欠である。例えば、起業するにはどういうことが必要なのか。会社を興したら自社のホームページも必要だし、経理を見てもらう税理士などのプロへの委託も必要になってくる。そして、どういうビジネスモデルで会社を回していくかも成功の鍵を握るわけである。基本的に、起業したとしても、売り上げがないと経営は回っていかないので、どのようにして売り上げを立てて会社を運営していくかに関しても事前の知識や準備が必要になる。すなわち、50~60代で起業しても最初からある程度の売り上げを立てる見通し、周到な戦略がなければ会社経営は成り立たないという認識が必要だ。
 ただ実際には、会社を興す前にいろいろと事前準備をしても、実際に経営を走らせてみないと分からないことも多々出てくる。それでも、起業する前に事前準備にじっくりと時間をかけることは、リスクヘッジの視点からもとても大切である。
 なお、起業には、自分1人での起業だけではなく、現在勤務する会社の同僚と一緒に起業するとか、あるいは昔からの知人と一緒に起業するといったさまざまなパターンがある。
 自分自身の経験を振り返ると、起業で一番重要なのは、誰と組んで会社を立ち上げるかと、ビジネスモデルの2点に尽きるといえる
 まずは、起業の際に誰と組むかで成功するかどうかが左右されるので、誰と一緒に起業するかはじっくりと考えて準備する必要がある。一緒に組む方が、かつての同僚なのか、かつての部下なのか、知人なのか、友人なのか、さまざまな選択肢があると思う。一方で、自分が一緒に起業したいと思っても相手が参画してくれるかどうか分からないので、ある程度自分なりに一緒に起業したい方が絞られたら、その相手を口説き落とすくらいの気概で一緒に起業する仲間を集めていくことが大切である。
 次にビジネスモデル、すなわち、どういう事業をするかという点である。ビジネスモデルに関しては、一緒に会社を立ち上げる仲間を固めていく際に、自分なりに構築したビジネスモデルを説明して、共感して参画してもらえるかが鍵を握る。もっとも、会社を興す仲間と一緒にビジネスモデルを最終的に固めていくことも大切だが、起業するのであれば、まずは起業に向けた基本的なビジネスモデルを自ら構築しておく必要がある。
 現実には、起業して1年で10社のうち6社しか残らず、3年で100社のうち10社しか残らないと言われているが、だからこそ起業前の事前準備に時間をかけて、一緒に組む仲間を固めると同時に、起業に向けたアイデアを仲間と共有して一致団結できるビジネスモデルを構築しておくことが肝要である。
 もっとも、起業したら、もはや雇われの身ではないので、会社が存続する限り、起業した立場から定年80歳でも、あるいは生涯現役でも仕事を継続することは可能になる。起業するメリットは、会社が存続する限り、あくまでも健康が前提条件だが、生涯現役が実現可能ということだ。

4.「お一人さま起業」の一般化

 起業する前にきちんと事前準備をして、誰と組むかを決め、かつ起業する際のビジネスモデルを構築する流れを説明したが、逆に、自分1人でビジネスモデルを固めて、自分1人で起業するという「お一人さま起業」もこれからはかなり一般化してくることだろう。2003年に筆者が立ち上げた「佐藤人材・サーチ㈱」も、まさに形態は「お一人さま起業」だった。
 「お一人さま起業」は規模が小さい代わりにリスクは少ない。そして、1人で起業して会社を経営していくわけだから、事務処理から営業まですべてを1人でこなす必要があるわけだ。特に、大企業に長く在籍していて部長職まで上りつめた方にとっては「事務も含めて、何でもかんでも自分で処理しなければならないのか」と抵抗感があるかもしれない。しかしながら、起業するのであれば、仲間と一緒に起業するにせよ、あるいは「お一人さま起業」にせよ、どんな仕事でも前向きに取り組む姿勢は必須で、起業イコールあらゆる仕事に柔軟かつ前向きに対応する姿勢が大切である。
 「お一人さま起業」は、1人で何でも対応しなくてはならない反面、リスクが少なく、かつ1人で経営を回しているので費用(コスト)も少ないというメリットがある。ある意味で弁護士や税理士、社会保険労務士といった"士業ビジネス"に近いといえるかもしれない。もしも、そうした資格を持っている方であれば、50~60代でも「お一人さま起業」で会社を興すことは、それほど難しいことではないだろう。
 また、「お一人さま起業」でも、自分が元気であれば80歳定年どころか、生涯現役が実現できる。他に頼む代役となる人はいないから、会社がある限り、自分が好きなだけ仕事を継続することが可能である。
 このように、「お一人さま起業」のデメリットとして、何でも自分で対応しなければならない点はあるが、アウトソーシングを活用することで負担は確実に減る。例えば経理は外の税理士に、ホームページの管理は外部のIT企業に頼むなど、多少費用(コスト)がかかったとしても、アウトソーシングをうまく活用して経営を回していくことが肝要である。
 一方で、確かに何でも自分で対応する気概を持って仕事に立ち向かうことは、自分を磨く機会にもなるし、自立している感覚が持てる。自分が倒れれば会社の経営が立ち行かなくなるので、常日頃から健康にも気を配るようにもなるわけだ。

5.地方創生に貢献する

 現在、私は本業の人材紹介(人材サーチ)の仕事の傍ら、山梨学院大学に週1回赴いて客員教授として"キャリア論"の授業を行っている。
 今後、地方は少子高齢化による人口減少に加えて、都市への流出によって働ける人がどんどん減っていくことが予想される。逆にいうと、他社でも通用する柱(専門性)がある方であれば、地方の中小企業に赴いて働く機会が得られる可能性は高い。要は、大都市ではなく地方に目を向けてみることも大切だと考える。
 それこそ60代になったら、Uターンして自分の故郷に帰って起業するという選択肢だけでなく、例えば地方にある後継者不足に悩んでいる中小企業で、今まで培った実務経験を活かして貢献する選択肢もある。その際、給料水準はその地方の相場になるため、年収や労働条件に固執するのではなく、仕事を続けることができて社会貢献できるという働きがいに力点を置くべきだろう。
 また、地方の中小企業で働くことは、いわば地方の活性化にもつながる。人手不足を補うべく外国人を採用して雇用確保を図る流れもあり、現実に地方の工場では外国人の方の力を既に借りているところも少なくない。
 他社でも通用する柱(専門性)を活かすべく地方に移住して、今までの実務経験を活かしながら雇われるのか、あるいは「お一人さま起業」も含めて起業するのかといった選択肢はあるが、いずれにせよ地方に住み仕事をすることで、そこで税金を納めることになるから、地方の活性化、地方創生に間違いなくつながる。会社を経営している立場からすれば、国税のみならず住んでいる地方自治体に税金(地方税)を納めることが最も社会に貢献することであると私は考える。
 地方で関心があるエリアがあるのであれば、一度観光を兼ねて下調べを目的に現地にぜひとも足を運んでみよう。平日であればエリアの役所も開いているだろうから、役所を訪問して、現地での就職やあるいは起業について情報収集することをお薦めする。自ら足を運んで情報収集すれば、インターネットからの情報だけでは分からない情報も入手できる。足を運んで現地を見るのが、やはり「百聞は一見に如かず」でとても大切である。生涯現役を考えた場合に、地方での生き方・働き方を模索する流れは今後増えてくると想定される。

佐藤文男 さとう ふみお
佐藤人材・サーチ株式会社 代表取締役
1984年一橋大学法学部卒業後、日商岩井(総合商社/現在の双日)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券(外資系証券/現在のシティ・グループ証券)、ブリヂストン等異業種において人事(採用)業務および営業(マーケティング)を中心にキャリアを積み、1997年より人材紹介ビジネスの世界に入る。2003年10月に佐藤人材・サーチ株式会社を設立して代表取締役社長に就任。2013年4月に第10期を迎えるタイミングで約1年3カ月シンガポールにおいて人材紹介業務の研鑽を積む。2019年で人材紹介ビジネス経験は23年目に入ると同時に、2019年4月で佐藤人材・サーチ㈱は第17期を迎える。
著書は共著1冊を含めてこれまで18冊を出版。近著に『3年後、転職する人、起業する人、会社に残る人』『社長は会社を変える人間を命がけで採りなさい』『今よりいい会社に転職する賢い方法』(いずれもクロスメディア・パブリッシング刊)等がある。
本業の傍ら、2017年4月から山梨学院大学の経営学部客員教授として「実践キャリア論」の授業を実施する。

 佐藤人材・サーチ㈱のホームページ  www.sato-jinzai.com

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