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Point of view [2019.03.11]

第130回 安藤俊介

ダイバーシティ・マネジメントの鍵となる
アンガーマネジメント

安藤俊介 あんどう しゅんすけ
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事

日本におけるアンガーマネジメントの第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。米国のナショナルアンガーマネジメント協会では最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人でただ1人選ばれている。書籍は台湾、中国、韓国でも翻訳をされ、累計40万部を超える。

ダイバーシティ・マネジメントが進まない日本企業

 政府はダイバーシティを日本の持続的な成長を支えるために必須の課題と捉えて、さまざまな施策を展開しているのは周知のとおりである。ただ、その一方で、ダイバーシティという言葉自体は広がりを見せつつも、実際の現場では遅々としてその導入が進んでいないのが実情ではないだろうか。
 企業の姿勢としてダイバーシティを進めていくことに声を大にして反対する人はいないであろう。しかし、なぜこれほどまでにダイバーシティを進めていくことができないのか。
 本稿では、改めてその問題点と、なぜアンガーマネジメントがダイバーシティ・マネジメントの鍵となるのかを考えていきたい。

"隣で働く人は自分と違って当たり前"を受け入れる難しさ

 ダイバーシティを進めるということは、性別、年齢はもとより、さまざまな価値観、主義主張、立場などの人たちが自由に働け、誰もが活躍できるということを目指していくということである。つまり、自分の隣で働く人が、自分とは違って当たり前ということを当たり前に受け入れるということが大前提となる。ところが、この大前提を受け入れることが多くの人にとって非常にハードルの高いものとなっているがために、企業でのダイバーシティが進まないのである。
 考えてもみてほしい。自分とは考えが違う人、価値観が違う人が隣で働いているということは、自分が予想をしないことをする人、自分ならばやらないことをする人が隣で働いているということだ。例えば、仕事は残業してでも終わらせるものと考えている人の隣に、定時になったら仕事が終わっていても終わらなくても帰るものと考えている人がいて当たり前ということである。
 ごく簡単に言ってしまえば、私たちが怒りを感じる理由は自分の理想や期待が裏切られたときである。自分と違う人が隣にいるということは、自分の理想や期待が裏切られる場面に会う機会が増えるということなのだ。

価値観の摩擦が怒りの感情に

 これまでの日本であれば、働くということについてはなんとなくではあるが、良くも悪くも社会として共有するような価値観があった。例えば、終身雇用、家庭よりも仕事優先、上司の命令は絶対等々、前近代的と言われても仕方がないような働き方を大勢がしてきていたのである。そういう意味では、自分の隣で働く人は、自分と合う合わないは別にして、働くということについては、少なくとも共通認識があったわけである。
 ところが、ダイバーシティ・マネジメントでは、どのように働くのも自由であるとしている。自分とは違う価値観の人たちと働くということは、自分にとっては受け入れがたい、信じられないといったことを目にしたり、体験したりすることが増えるということである。
 そして怒りの感情が生まれることで、その鬱憤をはらすために誰かに当たりハラスメントになったり、イライラして集中できずに生産性を落としたりしたりして、現場を疲弊させてしまうのである。

「怒らなくなること」が目的ではない

 アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで始まったとされる怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングである。当初は罪を犯してしまった人に対する矯正教育的な側面が強かったが、時代の変遷とともに一般化されていき、今では従業員教育、青少年教育、アスリートのメンタルトレーニング等、幅広く転用されている。
 アンガーマネジメントでは、怒らなくなることが目的ではなく、怒る必要のあることは上手に怒れるようになり、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目指してトレーニングをする。
 アンガーマネジメントは、衝動、思考、行動のコントロールの三つのパーツから成り立っている。衝動のコントロールは、イラッとした時、カッとなった時にどう衝動をコントロールするのか。思考のコントロールは、どのようにすれば物事を健全に考えられるようになるのか。行動のコントロールは、怒るにしてもどのように行動を選択すればよいのか、ということである。

ダイバーシティ・マネジメントへのメリット

 アンガーマネジメントができるようになることのメリットはさまざまあるが、ダイバーシティを進める企業にとって非常に大きなメリットになるのは、アンガーマネジメントができる人が増えることで、他者の価値観を尊重し、多様性に対する寛容さを育むことができることである。なぜならば、アンガーマネジメントでは、怒りの感情に振り回されないために、さまざまな価値観に対する寛容性を高めるようにトレーニングをする。つまり、アンガーマネジメントができるようになることで、多様性を受け入れ、どのような人たちとも健全に関係を作りながら働くことができるようになるのである。
 アンガーマネジメントを企業研修に取り入れる企業はこの数年右肩上がりに増えている。特に最近では本稿で述べたダイバーシティ、人権啓発といった視点から導入する企業も急増している。さまざまな価値観を受け入れられ、そうした人たちと協力し働ける人が増えることで企業の生産性が高まることは間違いないだろう。これからの企業経営、ダイバーシティの推進のためにアンガーマネジメントを活かしてほしいというのが著者の願いである。

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