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採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント [2018.11.09]

2018年11月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 「就活ルール変更」に関わる話がまだまだ騒がしいですね。先日、政府は、新卒採用に関するこれまでの経団連の現行ルール(3月広報解禁、6月選考解禁、10月内定)を、2021年卒だけでなく、2022年卒以降も当面は維持する方針だと発表しました。学生らの不安に配慮してのことで、中長期のルールの在り方は未来投資会議で議論を続けるとのことです。
 某テレビ局の方から、今後政府が主導して行う採用選考解禁日程のルール遵守の動きがどれほど効くかいうと質問があったのですが、守られるどころか、これまでよりもいっそう形骸化するでしょうと答えました。そう考える大きな要因の一つは、企業の「通年採用」を拒む声がほとんど聞かれないからです。これまで、通年採用は新卒一括採用と対峙(たいじ)する採用手法として捉えられ、新卒採用一括採用に否定的な論者は、企業は採用を通年化すべきだ(新卒も中途も時期の区別なく採用すべき)と主張していました。
 ところが、この通年採用という言葉が、「いつ採用活動を行ってもよい」という意味に置き換えられ、新卒採用活動をいつやるかは自由という免罪符になっているのです。私自身このこと自体は悪いと思っておらず、変な規制のない状況で企業は採用競争をすべきだと考えているので違和感はないのですが、就活ルールを守らせたい側からすると、「通年採用」はやっかいな存在とも言えるでしょう。
 さて、どちらにせよ、採用活動がより自由競争の方向に進んでいることは間違いありません。まさに、採用版「VUCAの時代」(先行きが見通せない状態)と言えるでしょう。

現行ルール維持でも経団連は目的達成

 今回も前回に引き続き、HR総研と『週刊東洋経済』編集部が9月19日~10月2日に共同で実施した、企業の人事担当者対象の「新卒採用に関する緊急アンケート調査」の結果を紹介します。
 まず、共同調査の後、結果的に経団連としては就活ルールを廃止するものの、政府主導で現行ルールを当面維持することが発表されましたが、この時点で企業はどうなると見ていたのかを紹介したいと思います。意外にも企業規模による差異が少ない結果となりましたので、全体の結果だけを取り上げます[図表1]

[図表1]2021年卒の就活ルールの行方の予想

資料出所:HR総研・『週刊東洋経済』共同調査「新卒採用に関する緊急アンケート調査」
(2018年9~10月、以下図表も同じ)

 「廃止になる」と予想した企業はわずか8%にとどまり、54%と過半数の企業は「ゆるやかな目安だけが設定される」と予想していました。「現在の日程のルールが残る」と予想した企業は15%にとどまり、少なくとも何かが変わるはずと考えた企業が大半だったことが分かります。ただし、日程自体は現行ルールを維持するとしたものの、これまでルール決定の主体であった経団連は「廃止」を決めており、2021年卒以降は罰則のない、政府からの「お願い」に近いものにならざるを得ません。経団連加盟企業においても、これまで以上の形骸化が進むのは目に見えています。そういう意味では、「ゆるやかな目安だけが設定される」に近いと言えるのかもしれません。
 「就活ルールの廃止」が大学を含めたすべての関係者の共通ルールになったわけではありませんが、経団連としてはルール策定主体の座から降りることができただけでなく、「今後も新卒採用の在り方について継続して議論していく」という政府の方針も引き出せたことから、最低限の目的は達成されたといってよいでしょう。もともとこれまでの「指針」は、政府の要請に基づくスケジュールであり、経団連としては不本意なルールであったことは間違いありません。2015年卒までの「倫理憲章」をあえて「指針」と表現を改め、それまで賛同企業に求めていた署名は廃止し、会員への周知にとどめたことに、それが表れています。

就活ルール廃止でもインターンシップは残る

 採用活動の早期施策として年々拡大している「インターンシップ」。仮に、就活ルールが廃止されたらどうなるのかを考えてみたいと思います。多くのインターンシップは、採用広報解禁の3月1日より早い時期に学生と接点を持つために実施されており、学生への就業機会の提供という本来の趣旨よりも、就職セミナーの一つの形態に成り下がっているのが実情です。その証拠に、3月以降に実施されるインターンシップはごくわずかです。「会社説明会」や「セミナー」が解禁となりますので、わざわざインターンシップとうたう必要がなくなるからです。
 仮に就活ルールが廃止されれば、「採用広報解禁日」という概念がなくなり、いつでも堂々と「会社説明会」や「セミナー」としての開催が可能になるわけですから、インターンシップ名目で学生と会う必要はなくなります。では、そうなったらインターンシップは実施されなくなるのでしょうか。あるいは、ミスマッチ防止や理解促進のために、インターンシップは残ることになるのでしょうか。今回の共同調査では、これらの点についても聞いてみました[図表2]

[図表2]就活ルール廃止後のインターンシップ

 結果は、「実施する」と答えた企業が全体で69%と7割近くにも及びます。内訳を見ると、「現在実施しており、廃止されても実施する」と答えた62%は分かりますが、「現在実施していないが、廃止後は実施する」と答えた企業が7%もあることに驚きます。「現在実施していない」のに、わざわざ「廃止後に実施する」理由は何なのでしょうか。それであれば現在のルールでも実施すればよいはずとも思えます。もしかしたら早期ではなく、遅めに実施することを念頭に置いているのかもしれません。
 現在のルールでは、3月解禁後のインターンシップは集客の難しさもあり、実施している企業は少ないようですが、「解禁日」の概念がなくなれば、逆にインターンシップの時期は早期だけではなく分散するのかもしれません。遅めに実施されるタイプは、早期にありがちな接点づくりのための1Dayではなく、複数日程を使ってのじっくりタイプのプログラムで、企業・学生双方がミスマッチのないようにお互いを見極める採用直結型となりそうですね。
 なお、1001名以上の大企業だけに限ると、廃止後に「実施する」と答えた企業は88%にも及びます。「現在実施しているが、廃止されたら実施しない」と答えた企業はわずか3%です。就活ルール廃止後、説明会やセミナーも開催できる中で、あえてインターンシップを実施するのだとしたら、それはどんなタイプのインターンシップが主流となるのか、興味深いところです。

「通年採用」の定義はバラバラ

 次に、企業が「通年採用」の定義をどう考えているのかを見ていきましょう。冒頭でも触れましたが、「通年採用」は「新卒一括採用」と対峙する採用システムとして捉えられがちです。「新卒一括採用」とは、企業が採用年度ごとに、「卒業前の学生」に対して「ある特定の時期」にまとめて求人・選考活動を行い、卒業後の「4月(一部の企業では3月)」にすぐに入社させる採用システムのことを指します。では、「通年採用」という言葉を使うとき、企業は「採用対象」「採用(応募)機会」「入社時期」をどう捉えているのでしょうか。一つ一つ見ていきたいと思います。
 最初は「採用対象」です。「新卒学生」「低学年生(1、2年生)」「既卒者」の組み合わせで聞いてみたところ、最も多かったのは「新卒学生+既卒者」と答えた企業で全体では50%に達します[図表3]。300名以下の中小企業だけに限れば59%と6割近くにもなります。次いで多かったのは「新卒学生+低学年生+既卒者」(19%)です。「新卒学生+低学年生」と答えた企業は6%しかなく、「低学年生」までを視野に入れている企業は合算しても25%、大企業に限れば21%しかありません。

[図表3]「通年採用」の採用対象

 前回の本稿で紹介したとおり、「仮に就活ルールが廃止になった場合、通年採用を実施するか」との問いに「実施する」と回答した大企業は17%しかなく、就活ルールが廃止になったとしても「低学年生」までをターゲットとした採用活動に踏み切る企業はごく少数派と言えるでしょう。就活ルールの廃止論議の際には、低学年生が就職活動に巻き込まれることによる学業阻害が反対理由としてよく聞かれますが、杞憂(きゆう)に終わる気がします。
 ただし、企業は低学年生を選考活動の対象にまではしないものの、企業ブランディングや採用ブランディングの対象には含めてくるものと推測されます。マス広告やキャンパス内での広告のほか、学生を対象としたイベントやコンテスト等の開催を通じて、早期からの企業認知、刷り込み活動が増えてくるでしょう。

応募機会が多ければ、入社時期は4月だけでもいい?

 次に、「採用(応募)機会」をどう考えているのか見てみましょう。こちらは、全体で66%と3分の2の企業が「年間を通じて毎月応募機会がある」ことを「通年採用」と捉えていることが分かりました[図表4]。301~1000名の中堅企業では7割を超えています。

[図表4]「通年採用」の採用(応募)機会

 「通年採用」は、「春採用」「夏採用」「秋採用」のように年に複数回の応募機会があるだけではだめだと考えているようです。「年間を通じて2回以上の応募機会」があればいいと考えている企業は、「4回程度」「6回程度」と回答した企業を合算しても2割にもなりません。逆に、「毎月応募機会」を用意することを負担と考え、「通年採用」に踏み切れない企業が多いのかもしれません。
 「入社時期」についてはどうでしょうか。こちらは見方が大きく分かれました[図表5]。「4月のみでも可」とする企業と「毎月入社機会がある」とする企業がともに35%で並んだのです。「毎月応募機会」が必要だと考えながらも、入社時期については「4月のみでも可」と考えている企業が多いことが分かります。もちろんキャリアのある既卒者の場合には、「毎月入社機会がある」ことになるのでしょうが、新卒者を前提にした場合にはそこまでしなくてもよいとの判断なのでしょう。

[図表5]「通年採用」の入社時期

 以上見てきたように、企業側の「通年採用」の捉え方は統一見解があるわけではありません。政府内においてはさらに違った見方もされているようです。2011年7月、当時の細川律夫厚生労働大臣は、髙木義明文部科学大臣・海江田万里経済産業大臣と連名で通年採用の拡大などを経済団体に要請しましたが、そこでの趣旨からすると「通年採用」は、①就活ルール(当時は4月1日選考開始)以降の時期に、②卒業までに複数回の応募・選考機会があるとともに、③卒業予定者だけでなく既卒者も対象とすることを指していたと推測されます。
 今回の経団連・中西宏明会長の発言にあったような、グローバル企業との人材の争奪戦に伍するという企業側のニーズからではなく、学生が新卒時に正社員就職できないと、その後のキャリア形成で大きく不利になることを是正すべく、企業側に対して既卒者の採用や複数回の応募機会を求めたに過ぎません。そこには、就活ルールの存在が前提になっていましたし、「低学年生」が選考対象になることはまったく考えられていませんでした。今後、未来投資会議では「通年採用」がどう定義されていくのか、見守りたいと思います。

日本の新卒就職活動において改善すべき点はどこか

 最後に、「日本の就職活動全般について、改善すべきだと思う点」として寄せられた企業の声を抜粋して紹介し、締めくくりたいと思います。

・企業において従業員をどのような構成をもってして雇い、組織を形づくるのかという議論から就職活動における人材の採用の仕方が見えてくると思われる。日本の大企業の多くが、新卒一括採用、ゼネラリスト育成という型の上、チームで仕事をするという考えがある現状を踏まえメリット・デメリットを整理した上で採用方法を検討すべきかと考える(1001名以上、サービス)

・新卒に偏った採用はそろそろ限界にきている。終身雇用の時代ではなくなっているのに、若者は安定を求める傾向がある。既存の社会人のリカレント教育をより強化して人材の流動を進め、個人のキャリア形成は個人の成長によって実現する世界を見せていくべきと思う。そういったことが進めば、通年採用も可能と感じる(1001名以上、メーカー)

・一定の時期に一斉に採用活動を行うことは、企業にとって一定のメリットはあるが、ミスマッチによる早期退職の増加、留学帰りの学生の就職先の制限(企業側にとっては獲得機会の喪失)等、さまざまな不具合も生じている。今後は、学生に重点を置きつつ、従来以上に産学が連携し、この問題に対処することがより一層重要になると考える。インターンシップ経験をより重視するなど、学ぶ機会を増やす取り組みを行っていくべき(1001名以上、メーカー)

・外国が正で日本が誤りのような前提の考え方と、何かといえば企業に負担を強いるような行政ならびに大学の考え方。早期退職が多いのは企業のせいだけでも学生のせいだけでもなく、国や大学のせいもあることを考えるべき(1001名以上、メーカー)

・現行ルール(3月広報解禁~6月選考開始)は、学生の業界・企業研究不足につながっていると感じる。社会全体が「学生の売り手市場」だと騒ぐことで、学生が就活を安易に考え、結果、就活に失敗する(企業を絞り過ぎて内定が出ない、内定した企業に後から不安を覚える、など)学生が出てしまうのではないか(1001名以上、金融)

・所得も大事とは思うが、新卒対応を行えば行うほど、年々学生の質は低下傾向にあると考える。グループ/チームプレーは普通に拒否、合理主義的なところとわがままを履き違えている傾向が強い。仕事ができなくても、上司に一生懸命食らいついていくような学生も少なくなった(301~1000名、サービス)

・高年齢層の意識改革なくして就職活動の改善はないでしょう。大卒じゃないと、院卒じゃないと、というこれまでのバイアスにとらわれ過ぎているのですから。まずは解雇規制を実現し、新規採用に抵抗感がなくなればよいのですが(301~1000名、メーカー)

・現時点では、日本企業には職種別採用はなじまないと思う。新卒一括採用は若年層の就業率を上げているメリットがある。就活時期については、現時点では3年生の夏から4年生の夏までほぼ1年となっているので、広報解禁と選考開始時期を早めることで、短期化することができると思う(301~1000名、メーカー)

・大手企業が多く人材を採りすぎることが新卒のキャリアを傷つけていると考える。中小企業はそれで非常に苦労・苦戦しているのは事実。中小企業にも満遍なく人材を行き渡らせるような仕組みが重要。ものづくり技術を持っている優秀な企業は、中小企業に山ほどあるため。大手が採用する人員数の制限のようなルールがあってよいと考える(301~1000名、メーカー)

・世界的な競争の流れにおいて、国はどのような戦略で生き残りをかけていくか。それにより企業はどのような分野で、どのような人材が必要かを明示し、大学はそれらを参考に「生き抜く力」を育む教育を行い、学生が社会に貢献できる道筋を大人が示さなければならない。大人が責任転嫁をしているうちは、学生にしわ寄せがくる。現状はまさにそうではないだろうか。国、企業、大学でもっと議論していくべきではないか、と私は思う(301~1000名、情報・通信)

・新卒については、新卒一括採用が悪とされているが、外資系の企業にとって合わないだけであって、効率面から考えると悪いとは思えない。国際競争力という面であれば、数年前に東大が示したように、日本の大学自体が入学月(=卒業月)を9月に変えればよいと思う(301~1000名、商社・流通)

・企業は、有名な大学の学生を狙っていて、学生は、大企業を狙っているが本当にそれでよいのだろうか。学生は、大学で何をやってきて今後どう活躍したいか、明確にビジョンを持って就職活動を行っているのか疑問である。何となく就職活動をして、内定をもらって喜び、重複した内定先に学生がお断りを勝手に入れている。あまり褒められたことではないと思う(300名以下、サービス)

・大学も4月入学、3月卒業という仕組みを改め、必要な単位を修得した時点で学位を付与できる仕組みに変えていくことが必要。基本的に時期、方法等、就職活動は自由にすべき。大学は学生へのカウンセリング・相談機能を充実させ、学生が自律的に職業を選択できるように支援し、「紹介」機能は縮小すべき。一律の初任給も不合理、学生の専攻・能力で異なる処遇をするべき(300名以下、メーカー)

・新卒の採用だけを切り離して考えるのではなく、労働市場をどうするかという観点で、諸制度を見直すべき。現状多くの企業は年功序列の長期雇用を前提とした人事制度を運用しているが、それは当然、法律や慣習と密接に関わっている。採用、育成、転職、退社、男女比、正規かパートかといった一連のテーマは組織の中では切り離して議論できない。また、一つのグランドデザインですべてを賄うのは、多様化した現代では、もはや無理(300名以下、情報・通信)

・日本の独特の文化として継承していくのか、グローバルな時代背景に沿って、断ち切るのかは、政府がその方向性を決めるべきであり、各企業で勝手にどうぞ、ではまとまるものもまとまらなくなる。ルールを継承するのであれば、ルールの遵守対象企業が経団連という枠組みの中だけになっているからおかしなことになるので、法令で罰則を含めてきちんと決めるという考え方もあるのではないだろうか(300名以下、商社・流通)

 私は、「就活ルールの廃止」に基本的には賛成ですが、海外の採用手法が正しくて、日本の採用手法は間違っているかのような論調には賛成しかねます。自由競争が原則の日本社会の中で、横一線で選考時期を縛る就活ルールは規制以外の何物でもなく、廃止すべきものだと思います。ただし、だからといってすべての企業が「通年採用」に走る必要もありません。それぞれの企業に合った時期にだけ採用活動を行うということも、あっていいと思います。
 「通年採用」は、人事部門によほどの体力と予算がなければ実施はできません。「新卒一括採用」と比べて、何倍もの労力と時間が求められます。その企業が求める人材の採用が問題なくできて、求める組織体が出来上がるのであれば、採用手法は各企業の自由であってしかるべきです。就活ルール廃止後も、「新卒一括採用」を継続する企業が数多く現れたとしても、それは規制すべきことではないと思います。
 皆さんが、「日本の新卒就職活動において改善すべきだと思う点」は何ですか?

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/

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