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判例温故知新 精選―女性労働判例
女性の活躍が雇用社会に不可欠となる中で、格差問題の変遷を紐解く
[2018.08.24]

第5回 野村證券事件、兼松事件ほか3件(コース別管理における賃金等男女別取り扱い)


君嶋護男 きみしま もりお
公益社団法人労務管理教育センター 理事長

1.野村證券地位確認等請求・賃金請求事件

採用方法と全国転勤の有無によるコース別雇用は、平成11年の均等法改正で採用における女性差別が禁止されたのに伴い違法となったとして、会社に慰謝料の支払いだけを命じた

東京地裁 平14.2.20判決 労判822号13ページ

[1]事件の概要

 被告において、同期同学歴の男性社員は入社後13年次に課長代理(その後総合職掌「指導職1級」)に昇格したのに、女性社員が課長代理に昇進していないのは女性差別のためであるとして、女性社員13名(原告、うち1名は訴訟係属中に退職)が被告に対し、総合職掌「指導職1級」の職位として取り扱われる地位にあること、入社後13年次に課長代理に昇格したことを前提とする退職慰労金規程等の適用を受ける地位にあることの確認を求めるとともに、課長代理に昇格した場合の賃金・一時金との差額、慰謝料等を請求した。

[2]判決要旨および解説

 高卒採用社員について、男女間で昇格時期に著しい格差があり、これと連動する賃金等についても同様に著しい格差が認められる。被告は、高卒社員の募集・採用において、男性については「事務職」として勤務地を限定しないのに対し、女性については「一般事務職」などとし、試験も男女別に行うなどしていたことから、憲法14条の趣旨に反するが、同条は民法90条を介して間接的に適用があるにとどまり、その差別が同条の公序良俗に反する場合に違法・無効となる。労働基準法3条(均等待遇)は性による差別を禁止したものではないから、本件男女コース別採用・処遇は同条に違反するとはいえず、また採用、配置、昇進などの違いによる賃金の違いは、性による賃金差別を禁じた同法4条違反とはいえず、男女のコース別採用・処遇により男女間に賃金差が生じても、同条に直接違反するともいえない。原告らの入社当時、会社が社員の募集・採用について男女に均等な機会を与えなかったからといって、それが直ちに公序に反するとまではいえない。そして、原告らが入社した当時は、女性について全国的に異動を行うことは考え難かったから、これを考慮した男女のコース別の採用・処遇が不合理な差別とまでいうことはできず、また改正前の均等法は、男女で差別的取り扱いをしないことを努力義務にとどめていたから、男女のコース別処遇が公序に反して違法とまではいえない。
 しかし、平成11年4月施行の改正均等法により、男女の差別的取り扱いが禁止されたので、被告が改正均等法施行前に入社した社員について、男性を総合職掌、女性のほとんどを一般職掌に位置づけていることは、配置および昇進について、女性であることを理由として男性と差別的取り扱いをするものであって、均等法6条(旧8条)に違反するとともに、公序に違反して違法となる(原告12名に、385万~539万円の損害賠償を認める)。一方、判決では、被告に各原告らを入社後13年次で課長代理に昇格させる義務はないとして、原告らの主張する「あるべき昇格」を否定している。
 本件は、平成11年4月施行の改正均等法において配置・昇進についての均等取り扱いが、従前の努力義務から義務に改正されたことから、会社の処遇の在り方が公序違反になったと判断したもので、同法の改正が司法において明確に影響を与えた典型事例といえる。



2.兼松損害賠償等請求事件

職務内容に照らして、男性社員の賃金との間に大きな格差があったことに合理的理由はなく、男女の違いで差別したことを認め、会社に約7250万円を支払うように命じた

東京地裁 平15.11.5判決 労判867号19ページ
東京高裁 平20.1.31判決 労判959号85ページ

[1]事件の概要

 合併によって設立された総合商社(被告)の前身である2社は、いずれも賃金体系を男子と女子に区分し、年齢が進むにつれて男子の賃金が高くなるように設定していた。合併後の賃金体系区分は変更され、「一般職」「事務職」など4区分とする職掌別人事制度を導入し、会社は「事務職」から「一般職」へ、あるいはその逆の転換もできるよう制度を設計した。女性社員6名(原告)は、①一般職標準体系表の適用を受けることの確認、②賃金、一時金および退職金の差額の支払い、③定年延長に伴う55歳から月例賃金引き下げについての差額支払い等を求めた。
 第1審では、原告らの入社当時(昭和30~40年代)は均等法もなかったことからすると、従業員の募集・採用について女子に男子と均等の機会を与えなかったからといって、それが公序に反するとまではいえないこと、事務職から一般職への転換は本部長の推薦など要件が非常に限定され、実質的に転換の機会が奪われていて正当化できないが、制定当時の均等法は、男女で差別的取り扱いをしないことを努力義務にとどめているから、男女のコース別の処遇が公序に反するとまではいえないとして原告らの請求を棄却した。

[2]控訴審判決および解説

 第1審と異なり、一部の者を除いて、控訴人(原告)らの請求を大幅に認める判断をした。すなわち、合併前の両社では男女により賃金体系が異なっており、合併後の会社(被控訴人・被告)では、これを継承し、A体系とB体系とに分け、A体系はほとんど男性、B体系はすべて女性に適用されていた。そして被控訴人においては、合併以降はA体系とB体系との賃金格差が拡大・固定化し、改正均等法施行後においても男女の賃金格差が縮小することがなかったが、「一般職」「事務職」と区分されても、職務分担は流動的な要素も多く、基幹的業務と定型的・補助的業務とを明確かつ截然と区別することは困難で、両者の差異は相対的なものと認定した。判決では、こうした事実認定を踏まえて、①職掌別人事制度導入前(昭和59年12月まで)、②職掌別人事制度新設後新人事制度導入直前まで(昭和60年1月~平成9年3月)、③新人事制度導入以降(平成9年4月~)の三つの時期に分けて、賃金の男女差別があったか否かについて詳細に検討している。
 すなわち、①については、男女のコース別管理によって賃金格差が生じても、控訴人らの入社当時、女性に男性と均等な機会を与えなかったことについては、❶労基法4条に直接違反するともいえないこと、❷募集、採用、昇進について男女の差別的取り扱いをしないことにつき、使用者の努力義務とする法律すら存在していなかったこと、❸企業には労働者の採用について広汎な自由があること、❹男女のコース別採用・処遇と男女が担当する職務内容はおおむね一致していること、❺昭和58年当時でも、女性の約半数が5年以内に、約90%が10年以内に退職していることからすれば、男女の賃金格差にはそれなりの合理性があり、公序良俗に反するものではないとしている。
 ②については、控訴人らが損害賠償請求の始期とする平成4年4月時点で、控訴人のうち4名は入社34年から26年勤続しており、これと職務に同質性が認められる当時の一般職1級の30歳程度の男性との間にすら相当の賃金格差があったことに合理性が認められず、これは性の違いによって生じたと推認されるから、被控訴人の措置は労基法4条等に違反する違法な行為と評価した。すなわち、この期間の一般職および事務職の給与体系は、以前のA体系(男性)とB体系(女性)が基本的に維持されたものであり、既に長く勤続して専門知識を身に付け、重要な仕事を行っている女性も相当数おり、控訴人らのうち4名もその中に含まれていたから、こうした女性に関しては、勤続15年を経た時点で、一般職と事務職の給与体系の格差の合理性を裏付ける事実は失われたとしている。また、事務職の勤務地が限定されていることは、控訴人らが入社5年で27歳の一般職に達しないような格差を合理化する根拠とはならない旨判示し、更に、被控訴人が同種の商社でも同様あるいはそれ以上の格差を設けているとの主張については、その事実を一定程度認めつつ、そのことが賃金格差を合理的とする根拠とはならないと判示している。要は「他に自分より悪い奴がいる」ことは正当化の理由とはならないということである。ただ、控訴人6名中2名については、その職務内容が専門性を必要とするものではないとして、給与の格差を適法としている。
 ③については、新人事制度が、当時国会で審議されていた、配置、昇進などについての男女差別を禁止する均等法の改正を意識して行われたと推認されるとした上で、退職した1名を除く3名の賃金格差が、労基法4条に違反し不法行為に当たるとして、賃金格差分および慰謝料の支払いを被控訴人に命じた。



3.その他

 その他、コース別雇用管理に関わる裁判例としては、①均等法施行後に「事務職」に配置された女性2名が、同年齢の総合職男性より低い資格であるのは違法な男女差別であるとして、総合職としての地位の確認と差額賃金および慰謝料を請求した事件(岡谷鋼機損害賠償請求事件 名古屋地裁 平16.12.22判決 労判888号28ページ)、②女性社員4名が、昇格・昇進において差別を受けたとして同期の高卒男性との差額賃金相当および慰謝料を請求した事件(住友金属工業損害賠償請求事件 大阪地裁 平17.3.28判決 労判898号40ページ)などがある。
 ①では、男女をコース別に採用・処遇する仕方は憲法14条の趣旨には反し、その差別が民法90条の公序に反する場合には無効になるとした上で、原告らの採用当時は均等法もなく、均等法ができても当初は努力義務にとどまっており、女性の勤務実態からすれば男女のコース別管理も公序に反するとはいえないとしながら、改正均等法により男女差別が禁止された平成11年4月以降は、男女をコース別に分けることは公序に反するとして、改正均等法施行後のコース別処遇について慰謝料を認めている。
 ②については、高卒者の採用に当たって男女で区分し、女性には補助的業務に従事させていたことを認定し、女性事務職の最高評価を受けた者が男性事務職の最低評価を受けた者を下回る差別的な昇給・昇進等の運用をしていたとして、慰謝料を含む損害賠償を認めた。要は、「女性のトップが男性のビリの下につく」不自然な人事考課を行っていたわけで、控訴審において、第1審判決を上回る賠償額を支払うことで和解が成立した。
 また、総合職に位置づけられながら、女性であることを理由に昇格差別を受けたとして、差別がなければ到達したであろう地位の確認、差額賃金、慰謝料を請求した事件がある(商工中金昇格・差別賃金請求事件 大阪地裁 平12.11.20判決 労判797号15ページ)。原告は、11年間窓口補助業務に配置され、能力開発の機会が与えられなかったと主張したが、原告の採用当時(昭和47年)は、男女の役割分担意識が根強く残っており、女性の勤続年数も比較的短かったため、一般的に女性に対する期待度は男性より低く、原告が窓口補助に長期間配置されたことについては必ずしも不当とは認めなかったものの、コース別人事制度が導入され、原告が総合職に位置づけられてから6年を経過した時点で、原告を再び窓口補助に配転したことは、従前の窓口業務の評価が低かったとしても、女性であることを理由とした不当な差別的取り扱いと判断した。また、原告による総合職6級の地位確認請求については、昇格は被告が人事考課に基づき決定すべきで、労基法4条は昇格における男女差別に直接適用することはできない等として棄却した。結局、結論としては、被告の原告に対する平成4年度の人事考課は、男女差別で、裁量権の濫用に当たり、その結果としての「窓口補助」の発令も男女差別に当たり違法であるとして、被告に対し慰謝料等220万円の支払いを命じた。
 コース別人事管理についての争いは、「男性は総合職、女性は一般職」と位置づけられ、その結果一般職とされた女性が、昇格した地位の確認、差額賃金や慰謝料の支払いを請求するのが一般的だが、この事件は、女性が総合職に位置づけられながら、総合職としての処遇を受けなかったとして争われた点に特色がある。

君嶋護男 きみしま もりお
公益社団法人労務管理教育センター 理事長
1948年茨城県生まれ。1973年労働省(当時)入省。労働省婦人局中央機会均等指導官として男女雇用機会均等法施行に携わる。その後、愛媛労働基準局長、中央労働委員会事務局次長、愛知労働局長、独立行政法人労働政策研究・研修機構理事兼労働大学校長、財団法人女性労働協会専務理事、鉱業労働災害防止協会事務局長などを歴任。主な著書に『おさえておきたい パワハラ裁判例85』(労働調査会)、『セクハラ・パワハラ読本』(共著、日本生産性本部生産性労働情報センター)、『ここまでやったらパワハラです!―裁判例111選』(労働調査会)、『キャンパス・セクハラ』(女性労働協会)ほか多数。


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