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Point of view [2018.07.27]

第115回 渡辺秀和

東大生のキャリア意識から捉えた採用担当者への示唆

渡辺秀和 わたなべ ひでかず
コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO

一橋大学卒。三和総合研究所 戦略コンサルティング部門を経て、コンコードエグゼクティブグループを設立。マッキンゼーやBCGなどの戦略コンサルタント、投資銀行、事業会社の経営幹部、起業家などへ1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアを支援。日本ヘッドハンター大賞初代MVP受賞。東京大学「未来をつくるキャリアの授業」コースディレクター。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)など。

東大生に向けた「未来をつくるキャリアの授業」

コンコードエグゼクティブグループでは、「未来をつくるリーダー」を支援するキャリアデザインファームとして、戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、ベンチャー企業幹部、起業家などへのキャリアチェンジを支援している。私たちの転職支援サービスの大きな特徴は、相談者のビジョンを実現する「キャリア戦略」の設計から支援していることにある。

一方、日本の未来をつくるリーダーをもっと増やしていくためには、キャリアコンサルティングの活動だけでは十分とは言えない。私たちの持つキャリア設計の技術を広く社会に向けて発信することが重要であると考え、書籍の出版やカンファレンスにおける講演などのキャリア教育活動に取り組んできた。

そして、2017年秋、このキャリア教育活動の一環として、東京大学3・4年・院生を対象に「キャリア・マーケットデザイン」という正規科目(全12回)を開講した。これが、東京大学×コンコードエグゼクティブグループによる本格的なキャリア設計の授業――通称「未来をつくるキャリアの授業」である。

東京大学 経済学部の松島 斉教授と岡崎哲二教授からの依頼の下、私がコースディレクターとしてプログラム全体を企画し、「自分の"好き"や"志"を通じて、社会に貢献する豊かな人生」の実現を大きなテーマとして、授業のコンテンツを制作・登壇した。そして、12回の講義を通じて、「自分の好きなことを通じて、社会へ貢献するためのキャリア戦略の設計法」「各界のリーダーとして活躍するゲストによる実体験の紹介」「社会人として良いスタートを切るための心構え」という三つの内容を扱い、実践的なキャリア設計法を解説した。

学生たちのキャリア意識と不安

授業では、毎回300名近くの学生が参加し、数多くのフィードバックを得たことから、現役東大生のキャリア意識の実情が浮き彫りとなった。なお、その多くが文系の学生であった点、個々人によって異なるキャリア観を捉えた全体的な傾向である点に、ご留意いただきたい。

第一に、学生たちは、「成長できるキャリア」を求めている。もちろん、成長には本人の心掛けがまずは重要だ。しかし、キャリア設計のプロとして、数多くの事例を見てきた立場から言えば、所属した環境によって、成長のスピードに雲泥の差が出てしまうのが実情である。現代は、市場で高い評価を受ける人材と受けられない人材では、ポジション、収入、雇用の安定度において非常に大きな差が生まれる。そのため、学生たちも自身の成長スピードについてセンシティブになっている。また、「配属リスク」という考え方が学生に広がっている。就社の意識が薄まっている中で、専門性を磨いてキャリアを自ら切り開いていこうとする学生からは、何の仕事をするのか分からない総合職採用はリスクが高いと認識されるのは当然だろう。

第二に、「実力主義のキャリア」を求めている。成長に対して貪欲な彼らは、その実力に見合った報酬やポジションを期待している。コンサルティングファームや投資銀行・ファンドなどで活躍する先輩たちから体験談を聞く機会が多い彼らは目線も高い。

第三に、「社会的意義のあるキャリア」を求めている。もともと国家公務員志望の学生が多い大学でもあるが、公的な社会貢献意欲が強いことは、授業で提出されたキャリア設計を通しても見て取れる。社会的なリーダーとして自分の在り方について考えているという点は、他大学の学生に比べても特徴的と言える。

半面、ビジネス社会に出ることに警戒心を抱いている学生が少なくない。彼らは、勉強に関しての自信は持っている。このことは大変よいことだ。しかし、社会では、勉強だけできればよいわけではない。人間関係の構築、コミュニケーション能力など、今まで全くなかった評価項目が急に重視されてくることを、彼らも理解している。そのため、社会に出ることに対して漠然とした不安感を募らせている。

さらに、就活を通じて、企業に対する不信感を抱く学生も少なくない。東大生○人採用、京大生○人採用、と大学ごとに目標人数を設定して、採用を行っている企業も存在する。その目標達成のためには、会社を実態以上によく見せる必要が出てくるし、志向や社風とのフィットなどに目をつぶって採用せざるを得ないこともあるだろう。しかし、学生からすると、「東大というバッジを見ているだけで、自分自身を評価してもらえていない」「数値目標を追うためには、強引なこともする会社」と感じられ、それが不信感につながっている。

採用活動への示唆

このような現状から、優秀な東大生の採用を目指す企業への示唆が見て取れる。

まず、処遇に関しては、個人の成長への配慮や実力主義の導入が、もはや避けて通ることのできないアジェンダとなっている。横並びの年功序列の人事制度では、仮に優秀な東大生が入社してきたとしても、遅かれ早かれ辞めていく。「自社でも既に実力主義の人事制度が導入されている」と思われる方もいるだろう。しかし、採用におけるライバルは、30代前半で年収1500万円以上も珍しくないようなコンサルティングファームや外資系企業だ。さらには、ベンチャー企業の幹部ポジションもライバルとして登場してきている。そのような企業よりも、魅力ある人事制度を用意しなければ、優秀な人材を引き付けることはできない。

また、体系化された研修体制の整備は、多額のコストがかかるが企業の競争力の源泉になる。場合によっては研修制度そのものが、マッキンゼーやP&Gのように採用上の売りとなることもある。

さらに、公的意識の高い学生たちに対しては、社会的意義の観点から自社を説明することが求められる。もちろん、各社とも社会貢献活動の取り組みは必ず紹介していると思われるが、重要なのは、主力事業がどのような社会的意義を持つのかについて、社員の体験談やエピソードなどの"物語"を通して心に届くように伝えることである。抽象的なコンセプトだけでは人の心は動かない。

大学別の目標人数を追う採用スタイルは、東大生をはじめとする名門大学生からの不信感を持たれており、あまり効果的ではない。一定の基準を満たした学生の中から、仕事内容や社風とのフィットを確認した上で、選考を行うようにすべきであろう。また、その学生のどのような点を評価して採用するのかについて、フィードバックを行うことが高い納得感を生む。

さらには、採用活動での謳(うた)い文句と就職後の現実とを乖離(かいり)させないように注意が必要だ。日本の大手企業の場合、採用担当者が育成には直接かかわらず、責任を負っていないケースも多い。そのため、大学別の数値目標の達成のために、学生に刺さる内容へ話をフォーカスし過ぎてしまう傾向もあるようだ。実際、弊社には、入社1~3年目の相談者からの問い合わせが非常に増えており、彼らの大部分は入社前に言われたことと現実とのギャップに悩んでいる。結局のところ、長期的な視点に立てば、誠実であることが費用対効果の高いコミュニケーションとなるのだろう。

これらの取り組みは、東大生の採用のみならず、企業の中核を担う中堅・若手幹部候補のリテンションのためにも必要不可欠なものであるといえよう。

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