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Point of view [2018.03.23]

第107回 石澤哲郎

メンタルヘルス不調者の職場復帰支援について

石澤哲郎 いしざわ てつろう
産業医事務所セントラルメディカルサポート 代表
東京大学医学部附属病院心療内科 非常勤講師

1975年神奈川県生まれ。東京大学医学部卒。心療内科専門医や医学博士、法務博士の資格を有し、30社以上の顧問先企業で休復職対応や長時間労働対策、健康経営推進などに関する取り組みを行っている。著書に『心療内科産業医と向き合う職場のメンタルヘルス不調 ~事例で解説 会社と社員が最適解を導く方法』(第一法規)がある。

職場復帰支援とは「休職者を復職させる際に、しばらくの間は出社してもらうだけの期間をつくったり、一時的に業務負荷を軽減したりすることで、復職をスムーズにする段階的職場復帰手法」のことであり、近年メンタルヘルス不調者のスムーズな復職を目的として導入する企業が増えている。就業規則などで制度化する企業も少なくないが、本稿ではこの制度を導入するメリットや注意点について説明したい。

社内で行う職場復帰支援

まず社内で行う職場復帰支援は、大きく次の二つに分類される。

①正式復職前に(つまり休職期間中に)職場に短時間出社し、正式復職に向けて通勤練習していく方法(ここでは「試し出社」と呼ぶ)

②正式復職後に短時間勤務などの業務負荷を軽減した状態から開始し、徐々に通常勤務に近づけていく方法(ここでは「軽減勤務」と呼ぶ)

「試し出社」は、正式復職の前に会社側が休職者の現状を把握できることが最大の利点である。「復職可能との診断書が提出されたが、実際に復職させてみると明らかに体調が悪い」ということは珍しくないが、試し出社を挟むことにより、病状回復前の不適切な復職を防ぐことができる。休職者にとっても、業務負荷のない状態で職場に出社する練習ができることは、職場復帰のハードルを下げる意味で大きなメリットがある。

一方で、休職中に出社することに伴う問題もいくつか挙げられる。一般的に、試し出社中に給与の支払いは不要であるが、例えば「交通費をどうするか」といった細かい点について事前の取り決めが必要となる。また、何か事故があっても労災が適用されないので、万一通勤中や会社内で事故があった場合の対応を検討しておく必要もある。さらに休職中の労働者には業務を命じることができないので、仕事ができない環境で出社練習を続けることに、休職者本人がかえってストレスを感じてしまう例も見られる。

これに対し、正式復職後に行う「軽減勤務」では、指揮命令の可否や労災不適用の問題は生じない。短時間勤務や業務量の軽減といった配慮事項を除けば、他の従業員と同様に仕事をしてもらいながら経過をみていくことができる点が試し出社より優れている。

しかし、軽減勤務を開始してから体調不良の問題が再燃した場合には、再休職について、従業員の意思と会社の判断に齟齬(そご)が生じるおそれがある。例えば、軽減勤務中の勤怠不良などを理由に会社が再休職した方がよいと判断したにもかかわらず従業員が拒否する、といったケースが実際には少なくない。また、復職すると給与が支払われる一方で傷病手当金が支給されなくなるが、軽減勤務中の給与額を業務時間に合わせて調整する場合は、あらかじめ就業規則で定めておく必要がある点にも注意しなくてはならない。

どちらの制度設計も一長一短だが、復職に当たっては十分な労務提供が可能な体調を維持できることが大前提となる。よって、正式復職前に体調改善の度合いを判断できる試し出社の方が、復職後の再発を回避しやすくなる点で優れていると思われる。ただし、休職中に出社させることのリスクも考慮すれば、期間としては長くても2週間~1カ月程度が適切だろう。

なお、職場復帰支援自体は復帰を手助けする手段にすぎず、最終目標は休職者が以前と同じように仕事ができるようになることである。職場復帰支援制度があるからといって中途半端な回復状況で復職手続きをスタートさせると、メンタルヘルス不調の再発リスクを高めてしまう点には注意する必要がある。

リワークプログラム

社内ではなく医療機関で行う復職支援策として、「リワークプログラム」の活用も進んでいる。リワークプログラムとは、会社ではなく精神科クリニックなどの医療機関が実施主体となって行う職場復帰支援のことである。厚生労働省の指針では、前述した二つの職場復帰支援と同様に活用することが推奨されている。

リワークプログラムは、復職を希望する休職者本人が医療機関に申し込むことからスタートする。休職者は継続的にリワーク施設に通うことで、職場復帰に必要な生活リズムを取り戻すとともに、パソコンを扱うデスクワークや、荷下ろし/荷片付けの軽作業など、実際の業務に近い作業プログラムを通じて職場復帰に向けたウォーミングアップを図ることができる。また、グループワーク(集団療法)を行い、他の復職予定者とともに議論することを通じて、自分はどうして休職に至ったのか、これまでの働き方のどこに問題があったのかを振り返り、復帰後のストレス対処やセルフケアについて、あらかじめ準備できることもリワークプログラムの特徴である。さらに会社側にとっては、専門家から復職の可否を判断するのに必要な客観的情報を受け取ることができることが利点といえる。

リワークプログラムは社内での職場復帰支援を完備することが難しい中小企業で特に有用であるが、実施している医療機関が少ない点や、実施に数カ月程度の時間がかかる点は、あらかじめ知っておく必要がある。

おわりに

近年の研究で、職場復帰支援の実施により休職者の再休職リスクを大きく下げられることが明らかになっている。これまで述べたような限界も理解しつつ、長期休職者や再発事例などを中心に積極的な活用を促してみてほしい。

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