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Point of view [2018.03.09]

第106回 清水 群

人材育成に必要なロマンとソロバン

清水 群 しみず ぐん
株式会社スマイルガーディアン 代表取締役

株式会社オリエンタルランド、株式会社ユー・エス・ジェイといった日本の2大テーマパークをそれぞれ運営している会社を経て、テーマパークコンサルタントとして独立開業している。両テーマパークの人材育成の優れた点を合わせたハイブリッド型の育成トレーニング「5人組ジョブトレーニング」を主にサービス業に展開し、幹部や管理職の育成に定評がある。著書に『社員の育成は5人が限界』(ギャラクシーブックス社)がある。

人材育成――これを永遠の課題としている企業も多い。そこで、少しでも多くの、人材育成に悩みを抱えている担当者にとってヒントとなるように、人材育成に必要な二つのポイントを紹介する。

"よく経営において「ロマン」と「ソロバン」という言葉が使われる。働く目的や経営理念だけではなく、それを実現するための財務基盤も整っているかどうかということであるが、人材育成においても、この一見相いれないと思われるような要素が重要である。何事も一つのことに集中しすぎると他方のことが疎かになりがちであるため、本コラムでは両方についてお話ししたい。

ロマンとは自分にとっての「明るい未来」

ロマンの定義は「働く目的」として、私が行っている講演では、「何のために働くのか、誰のために働くのか」などいろいろな意味をお話ししているが、ここでは「明るい未来」として一つの定義をご紹介する。

よく「最近の若者は・・・」「ゆとり世代は・・・」という枕詞(まくらことば)で新人や部下のことが語られるが、本当に最近の新人に問題があるのだろうか。私は彼ら自身に大きな問題があるとは考えていない。生まれ育ってきた環境が、彼らの意識やスキルを形成していると考えている。

例えば、私が子どものころは祖父母の家にまだ洗濯機とは別に脱水機があった。それが今は乾燥まで一台の洗濯機で終えることができる。また、何か買わなければならないものがあれば、近所のコンビニエンスストアは24時間営業している。さらにインターネット上で注文すれば届けてもらえる。わざわざ遠くの店まで行く必要がなくなった。このように非常に便利な世の中で、苦労する機会が減っている環境で彼らは育ってきた。

その苦労こそ人を大きく成長させる要素であると私は考えている。どうにかして苦労をなくすために知恵を絞り、考えたことを実践し、うまく行かなければやり直す。いわゆるPDCAサイクルを回すことが成長に必要である。みなさんもそうやって成長してきたのではないだろうか。

しかし苦労の経験が少ない新人や部下に苦労をさせると辞めてしまうのではないかというリスクが伴う。なぜ苦労をさせると辞めてしまうのか。それは苦労にロマンがないからではないだろうか。先輩や上司が苦労に直面したときにカッコいい姿、すなわち新人にとって数年後の「明るい未来」としての姿を見せることができていないのではないだろうか。

私がテーマパークで勤務していたとき、降雪が原因で乗り物が少し脱線してしまったことがあった。誰も乗っていなかったが、復旧に困っていたときに屈強な体つきの先輩たちが「俺たちに任せろ」と言わんばかりの背中を見せてくれて、数人で乗り物を持ち上げて軌道上に戻してくれたことをよく覚えている。自分も先輩の年齢になったときにこういう姿を見せられるように頑張ろうと思ったものである。

ぜひ苦労に直面したとき、それを前向きにとらえて新人や部下が苦労にチャレンジしたくなる姿を見せていただきたい。

ソロバンは「成長を見える化」すること

人材育成におけるソロバンは、給与や評価なども重要な要素であるが、ここでは「成長を見える化」することとしてお話しする。

ロマンだけに焦点を当ててお話ししたほうがいいと思われる読者の方もいらっしゃると思うが、ソロバンのことを書くことは次のことへの問題提起でもある。「従業員のロマン」に頼りすぎていないか、ということである。従業員の働くロマンばかりに頼りすぎて、適正な給与ではなかったり、成長をしっかりとサポートできていない状況になっていないだろうか。そういった環境は従業員の疲弊を招くだけであり、生産性の低下、従業員の退職という結果につながることもあるため、まずは成長をサポートするという点で参考にしていただきたい。

成長を見える化するという定義でソロバンをお話しするが、これは上司と部下の間で、「成長について同じ定義で話ができる状態を作る」ということを意味する。成長という定性的な要素が強いものは往々にして上司と部下の認識にギャップを生じてしまう。部下は自分が成長したと思っていても、上司にはその認識がないのである。そういった事態を避けるために成長の共通言語として数字で表現する、すなわち見える化することが重要なのである。売り上げ、成約の件数、成約1件当たりの金額など分かりやすいものはいいが、スキルなどが一般的には難しい。

業種にもよるが、数字で表現できるものは多い。時間、回数、長さ、速さ、誤差など、数字で表現すれば成長を見える化できる。例えば、清掃において時間が短縮されれば、それは立派な成長である。テーマパークでは1時間当たりで何人アトラクションに乗せることができたか、何種類のトラブルシューティングができるようになったか、など数字で見えるようにしていた。重要なのは上司と部下がお互いに納得できるかである。上司から一方的に数字を与えるのではなく、どのように数字で表現できるかも一緒に考えていただきたい。

さらにもう一点、成長についてどこまで部下にフィードバックできているかどうかである。部下に質問したり気付きを聞くことで、頭で考えていることを部下の口からアウトプットしてもらい、お互いの意見をすり合わせていただきたい。このフィードバックは毎日実施することを推奨している。それは、必ず休日がある中で、1日でも間が空けばそれだけ成長に対して部下の意識が薄れてしまうからである。拙著でも言及しているが、これを実施しようとすれば部下の人数は5人が限界となる。本気で部下や後継者を育てたいと思うなら、自分の直属の部下が何人いるのかということも考慮していただきたい。

もちろん部下の人数については個人差がある。5人以上の部下を抱えている管理者が育成に悩んでいる場合は、組織再編も一つの選択肢であるが、現実的な方法としては部下の中でリーダーを選任し、一部の管理業務を任せることも試していただきたい。ただし、リーダーが見るチームの人数が5人を超えないように留意することを忘れてはいけない。

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