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Point of view [2018.02.23]

第105回 小原 新

部下にとって上司は最大の職場環境

小原 新 おばら あらた
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 会長

1946年生まれ。1969年、現・日鐵住金建材㈱に入社、人事労務を中心に担当、役員を経て退社。元東北大学大学院経済学研究科非常勤講師、元(社)日本産業カウンセラー協会専務理事、副会長。特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協会会長を経て、現在(一社)日本産業カウンセラー協会会長。シニア産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。著書に『人事部主導によるパワハラ解決と管理者研修ドリル』(産労総合研究所)などがある。

上司の"自信"が働きやすい環境につながる

私が40年以上人事関係に関わって大事にしてきた言葉は「部下にとって上司は最大の職場環境」という言葉です。ひと昔前まではこれで表現できましたが、今では不十分です。IT化が進み、要員も減り、上司が100%近くプレーしながらマネジメントする今日、部下の指導育成が片手間にしかできない等の状況があるからです。そこで私は今、経営者の皆さまに「上司の応援団になる必要がある」と働きかけています。

"最大の職場環境である上司"に心にゆとりがないと、仕事の出来栄えに影響するだけでなく、部下・働く人をストレスフルな状態にしてしまう可能性が高くなります。上司本人も、経営者にとっては部下であり、日々部下と上司の二役をこなしています。そんな上司にとって上位者から信頼されることは、自信につながり、その余裕が部下への接し方を変え、結果的に部下が働きやすい環境をつくるのです。このことは、私がずっと経験的に感じてきたことです。

上司は誰でも加害者になる可能性がある

厚生労働省が5年に一度発表している『労働者健康状況調査』【労働者調査】の精神的ストレス等に関する調査事項にある「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの有無及び内容別労働者割合」では、職場のストレス内容が挙げられていますが、共通点は「上司は最大のストレスの要因である」ということです。内容を見ると「職場の人間関係」「仕事の量」「仕事の質」「仕事への適性」「昇進・昇給」「配置転換」などほとんどが上司の仕事そのものです。逆に言えば、職場のストレスを下げる処方せんはあるということです。その基本の一つは、上司が管理の基本を学んだだけでなく実行するように習慣化するまで何度も指導することのように思います。簡単ではないですが、基本を守り、守らせることが肝要ではないでしょうか。

上司は、自分の言動が職場の雰囲気や部下のモチベーションにどんな影響を与えているか、特に、部下一人ひとりについて考える機会はほとんどないかもしれません。部下一人ひとりに出している上司のメッセージは全く違います。「Aさん、いつも成果を出してくれて感謝しているよ」「Bさん、もっとしっかりやってよ。足を引っ張らないで」と口にはしなくても、普段の言動を通じて、自分の心にあることを思いの強さも含めて無意識に伝えています。でも、上司はそれが伝わっていることに気付いていません。

意識的にやっているものはともかく、上司自身が加害者と全く気付かないパワハラの多くはこのパターンです。ですから上司は誰でも加害者になる可能性はありますし、加害者である上司に自らが出しているメッセージに気付かせれば、パワハラは減ると確信しています。

上司がパワハラにつながるような言動をとってしまう原因も考える必要があります。上司自身のパーソナリティーのこともありますが、多く原因として挙げられるのは上司の能力、役職、労働環境、健康状態、業務負荷などです。被害者に該当する部下の労働環境なども関係があります。

パワハラや職場の人間関係を解決するには、プライバシーの保護に注意しながら、この辺まで掘り下げることが必要な気がします。

一方、パワハラ研修で気になることは、上司、管理者を対象に実施されていても、部下層には行われていないことです。「パワハラ」と「指導」の違いは部下も知る必要があります。パワハラ研修は上司と部下に実施して初めて効果があるものです。具体的には上司が必要以上に部下に気遣うことを薄めるだけでなく、ハラスメントに関して部下と対話がしやすくなる効果もあります。

各職場に「人間関係コーディネーター」を配置するメリット

私たち産業カウンセラーの大きな役割は、職場環境を改善して、生産性の高い職場をつくることです。

考えてみると、各職場に人的感度が高い社員、メンタルに強い人事部の応援団的な社員がいると人事部は助かります。人事部が労力を要しているメンタルヘルス不調者の発生が大幅に減る可能性があります。そこで、人事部の皆さんにお勧めしたいのが、産業カウンセラーの勉強をした人的感度が高い社員を各所に配置すること、つまり産業カウンセラーのダブルジョブです。ダブルジョブの最大の狙いは未然防止活動による元気な職場づくりですが、こういった人材は人事部にとって強い応援団になります。90%は通常業務、10%は職場の人間関係のコーディネーターをする人材――営業部門にも、経理部門にも、生産現場にも、あらゆる職場にそんな人が配置されたら、メンタルヘルス不調をかなり防止できます。パワハラでも加害者の自覚のない上司にさりげなく気付かせる対話ができるかもしれません。結果的に10%のコーディネーターの行動は職場の生産性向上にも役立ちます。

各職場でそうした人材を育成したり、職場で信頼されている人間力のあるシニア層社員等に資格取得を促してダブルジョブを期待したりするのも有効だと思います。程度は変わっていきますが、いつの時代も上司はストレス要因そのものです。職場の人間関係の多くは上司が原因であることも多く、情報が流れなくなりがちです。そこを制度としてダブルジョブの仕組みを導入して職場の生産性の向上に役立ててほしいと思います。

働きやすい職場づくりには、職場での信頼関係が重要です。その基本である人間関係の原点は、自分が部下や上司、周りの仲間一人ひとりに普段、無意識に発信しているメッセージを立ち止まって認識することだと思います。ストレスチェック制度で行う、集団ごとの集計・分析結果を生かした職場環境改善の仕方のヒントもここにあると感じています。対応策に困ったら、ぜひこの視点からアプローチをしてみてください。

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