企業ZOOM IN⇔OUT [2017.10.13]

パーソルキャリア

ライフステージやキャリアプランに合わせて、働く日数・時間・場所・休暇を選択できる「FLASH」制度

先進的な取り組みをしている企業の現場をレポート

[企業ZOOM]INOUT

会社概要:2017年7月1日に旧インテリジェンスから社名変更。「はたらいて、笑おう。」をスローガンとするパーソルグループの1社として、グループビジョン「人と組織の成長創造インフラへ」の実現を目指し、転職サービス『DODA』やアルバイト求人情報サービス『an』など、求職者と企業に向けた幅広いサービスを提供している。

本社:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング27階
資本金:11億2700万円
社員数:4321人(有期社員含む)
<2017年3月現在>
https://www.persol-career.co.jp/

取材対応者
コーポレート本部 本部長 木下 学氏
コーポレート人事企画部 人事企画グループ マネジャー 三宅真梨子氏
取材・文/滝田誠一郎(ジャーナリスト)

1.『はたらいて、笑おう。』を体現する制度

 『DODA』や『an』などの求人メディアの運営、人材紹介サービス等を手掛けるパーソルキャリアは2016年4月、社員の長期就業や持続的成長を支援する施策の一環として、ライフスタイルに合った柔軟な働き方を社員が選択できる人事制度「FLASH」(フラッシュ)を導入した[図表1]。この名称は、時短・休暇制度の活用を想定するシチュエーションとして定義した下記五つの頭文字を取ったものである。

Family]育児や介護、看病による休職・時短勤務
Learning]進学・留学など自己成長を目的にした休暇・時短勤務
Avocation]趣味や余暇、リフレッシュを目的にした時短・休暇制度
Social]地域活動・社会活動を目的とした時短・休暇制度
Health]けがや病気などによる休職、就業制限

 ライフステージやキャリアプランに合わせて、働く日数・時間・場所・休暇を選択できるようにしたのが特徴である[図表2]。制度名には「自社で長く活躍し続けてもらうには、働き方を選択できるひととき(FLASH)も必要」というメッセージが込められている。

[図表1]「FLASH」制度の概要

カテゴリー
(利用シチュエーション)
概  要
Family 育児・介護・看病 育児や家族の看病・介護が必要な社員の利用を想定。従来も時短・休職制度を利用できる状態にあったが、利用可能な期間を拡大した
Learning 進学・留学 仕事の成果につながる勉強やインプットをしたい社員のための時短・休暇制度。対象者要件を満たせば最長1年間の時短勤務または最長2年間の休業が可能。進学・留学など、スキルアップ期間として活用できる
Avocation 趣味・余暇活動 勤続年数の長い社員のうち、趣味や余暇活動に時間を割きたい社員や、リフレッシュしたい社員向けの時短・休暇制度。対象者要件を満たせば、理由を問わず最長1年間の時短勤務または最長1年間の休業が可能
Social 地域活動・社会活動 勤続年数の長い社員のうち、ボランティアや地域の活動などに参加したい社員向けの時短・休業制度。対象者要件を満たせば最長1年間の時短勤務、または最長1年間の休業が可能
Health 治療・療養 けがや病気などによりやむを得ず休職や就業制限が必要になるケースに適用。そのほか、在宅勤務の導入により生産性向上が見込める場合は、最長1年間の在宅勤務を認める(1年ごとに見直し・更新)

[注]上記に加え、働く場所の選択肢を提供する在宅勤務制度も「FLASH」の一環としている
(後掲[図表3]参照)。

[図表2]「FLASH」制度の概念

「柔軟な働き方を可能にする時短・休職・休暇制度を五つのカテゴリーごとに設計しました。当社では年々、育児時短制度を利用する社員が増えており、10年後には約1割が育児時短により勤務すると見込まれています。このような状況下で、社員が育児や介護などを要する状況になっても、安心してそのための時間を確保できる制度を検討する必要があると考えました。育児や介護はもちろん、自己成長のため、時にはリフレッシュするために柔軟な働き方を選択できるようにすることが、結果として社員の長期的就業と持続的に成長していく組織づくりを可能にする、またコーポレートスローガンである『はたらいて、笑おう。』を体現することにもなると捉えています」(木下氏)

2.育児・介護等(=Family)のための時短勤務・休職制度──30分単位で1日最大3時間までの短縮が可能

 以前から実施していた育児や家族の介護・看病が必要な社員が利用できる短時間(以下、時短)勤務・休職制度について、法定を大幅に上回る手厚い支援策を講じている。現状では育児時短勤務は中学校就学まで、育児休業は最長で子どもが2歳になるまで、介護時短勤務は最長3年(法定どおり2回の分割利用が可能)介護休業は最長1年(法定どおり3回の分割取得が可能)としている。
 適用対象・適用条件は、次のとおりである。

・育児時短勤務:小学校6年生までの子どもがいる社員
・育児休業:最長で2歳までの子どもがいる社員
・介護時短勤務、介護休業:介護すべき家族がいる社員。同居しているかどうかや、要介護の度合い(介護保険の要介護1以上など)は問わない
・育児・介護どちらの制度も男女ともに利用できる。同社に夫婦で勤務している場合、夫婦そろって利用することも制度上は可能

 同社はフレックスタイム制(標準となる1日の労働時間は8時間、コアタイムは5時間)を導入しているが、時短勤務が適用された場合には30分単位で1日最大3時間までの時短が可能となる(=時短勤務下では月の総労働時間が最大で「所定労働日数×3時間」分短縮となる)。
「社員個々の必要性に合わせて30分単位で出社時間を遅らせたり、退社時間を早めたりできます。各部門で本人と上司が話し合って出退勤時間の管理を行っています」(三宅氏)
 以上の扱いは次項で紹介する進学や留学、リフレッシュやボランティア活動のための時短勤務の場合も同じである。
「育児時短勤務、育児休業の適用者は2017年1月時点で約300人。制度の対象となるほぼすべての社員が利用しています。社員の平均年齢が31歳と若いため、現時点で介護時短勤務や介護休業の申請はほとんどなく、過去1年間で1件あったのみですが、今後は増えていくと見込んでいます」(三宅氏)
 なお、同社では毎年社員の約2%が産休に入るが、結婚・出産・育児を理由に退社するケースはほぼないという。

3.自己啓発や趣味・余暇、ボランティア活動で1年間休業することも可能

[1]Learning(進学・留学)
 進学や留学など、仕事の成果につながるスキルアップ、インプットに励みたいと考えている社員のための時短・休業制度で、要件を満たせば最長1年間の時短勤務あるいは最長2年間の休業が可能となる。
 正社員が対象で、最長1年間の時短勤務については勤続3年以上、最長2年間の休業については勤続5年以上が条件となっている。適用人数の枠は設けていない。
 なお、「FLASH」で制度化されている時短勤務、休職・休暇のいずれかの適用を受けてから5年間は他の時短勤務、休職・休暇を利用できない。逆にいえば5年ごとに「FLASH」で定められているさまざまな制度を利用可能ということになる。例えば、留学・通学のために5年ごとに1~2年休業することもできる。
 申請は年1回、秋に行う。所定の申請用紙に具体的な進学・留学プランと内容、それが今後の仕事や自身のキャリアにどう役立つのかなどを記入して人事部に提出する。人事部で書類審査した後、経営会議で適否を決定する。進学・留学にかかる実費は社員の個人負担。2016年秋は、語学力に磨きをかけるために語学学校へ通いたい、会計士の資格取得のための勉強をしたい、より高度な専門性を身につけるために大学院へ行きたい──などの申請があり、現在5人が同制度の適用を受けているという。
「2016年の秋は自分の仕事やキャリアに関係する進学や留学の申請が中心でしたが、仕事やキャリアに役立つことを必須条件にはしていません。これらに直接関係ない分野であっても、本人に勉強したいという意欲があれば認められる可能性はあります」(木下氏)

[2]Avocation(リフレッシュ・趣味・余暇活動など)
 趣味や余暇活動に時間を割きたい、またはリフレッシュしたい社員向けの時短・休業制度で、理由を問わず最長1年間の時短・日数限定勤務(対象:勤続5年以上の正社員。ただし週所定労働時間は30時間以上)、または休業(対象:勤続10年以上の正社員)が可能となる。

[3]Social(地域活動・社会活動)
 ボランティア活動や地域の活動などに参加したい社員向けの時短・休業制度。「Avocation」と同様の対象者要件を満たせば最長1年間の時短勤務、または休業が可能となる。
 「Avocation」「Social」ともに年1回、秋に申請を受け付け、人事部で書類審査した後に経営会議で最終決定する。審査に通れば翌年4月から翌々年3月までの時短勤務、休業が認められる。現在、「Social」の休業制度を利用して1人が宮城県で震災復興支援のボランティア活動に従事している。
「育児や介護、スキルアップのための勉強以外でも、もっと多様な働き方ができるようにしようという思想で生まれたのが、リフレッシュやボランティア活動を目的にした時短勤務、休業制度です。会社にとって直接的なメリットはありませんが、例えば、熊本県出身の社員が震災で大きな被害を受けた地元の復興支援のために1年間ボランティアをしたいと申し出てきたときに、会社としてそれを認めない理由はありません。10年以上会社に貢献してくれた社員が、1年後に戻ってくる保証があるなら『頑張ってきて』と送り出すのが当社のスタンスです。あるいは、1年間すべて余暇に費やしてもよいと社員には説明しています。ボランティア活動であれリフレッシュであれ、今後はそういう多様な働き方を選択する社員が増えてくると考えています」(木下氏)

[4]Health(医師の指示による療養・治療)
 けがや病気などにより、やむを得ず休職や就業制限が必要になるケースに適用する。医師の指示に従い、本人と相談の上で就業制限したり、就業規則に定める傷病休暇の範囲内で対応したりすることになる。

[5]在宅勤務制度
 「FLASH」の一環として在宅勤務制度も導入し、働く場所の選択肢を提供することで、社員がよりライフスタイルに合った柔軟な働き方を選択できる環境を整えている[図表3]。制度利用に当たっては、最初は在宅勤務日数を限定して実施し、制度利用により生産性の向上が見込める場合、最長1年間の在宅勤務を認める(適用につき1年ごとに見直し・更新を行い、更新審査を通れば2年目以降も利用可能)。
 適用対象は勤続1年以上の正社員だが、個人情報を取り扱う部門や職種(例えば、法人営業部門やキャリアアドバイザーなど)は対象外としている。2016年7月以降の在宅勤務者は400~500人に上る。契約社員であっても、現場の上長決裁で特別に在宅勤務を認めているケースもある。

[図表3]在宅勤務制度の概要

適用対象 勤続1年以上の正社員
(契約社員でも必要に応じて認めるケースあり)
適用されない部門・職種 個人情報を取り扱う部門や職種(法人営業部門やキャリアアドバイザーなど)は対象外
利用可能日数 週2日まで
適用期間 最長1年(1年単位で適用の可否を審査・決定)
適用審査 生産性向上が見込めるかを審査し、毎年適用・更新を判定
利用申請 その都度上長に申請(課長クラスに申請、部長クラスが承認)
その他 ・在宅勤務日(曜日)は上長と相談して決定
・フレックスタイム制(コアタイムは5時間)
 との併用可

 利用に当たってはその都度、本人が直属の上長(課長クラス)に申請し、最終的には上長の上長(部長クラス)が適否を判断して承認・不承認を決定する。在宅勤務する日(曜日)については上長と相談して決める。
「恒常的な週3日以上の在宅勤務は、コミュニケーション不足や仕事への支障なども懸念されますので、適切に判断するよう促しています」(三宅氏)
「在宅勤務とフレックスタイム制をうまく組み合わせれば、時短勤務を特に制度化しなくても、より柔軟な働き方が可能になると思います」(木下氏)

4.時短勤務の人事評価・給与は勤務時間に応じた目標管理
で対応

 「FLASH」における各種時短勤務時の処遇は、以下の取り扱いになる。

[1]目標管理に基づく人事評価
 通常勤務時(以下、所定勤務日数20日の場合)は月に160時間(8時間勤務×20日)働くことを前提に目標設定するが、例えば1日2時間短縮した時短勤務であれば月120時間(「2時間×20日=40時間」短縮)勤務を前提に目標設定を行い、その達成度に応じて評価することになる。

[2]時間外労働の取り扱い
 月120時間の時短勤務で仮に月140時間働いた場合には、20時間分の手当を支給する。ただし、1カ月の所定内労働時間は160時間なので時間外労働には当たらないため、割増はつかない。
「時短勤務者が残業したのでは意味がありませんので、残業することがないよう各職場で工夫しています。上司と時短勤務者が向こう3カ月くらいの勤務計画について本人と話し合い、限られた勤務時間内にすべての仕事をこなすことが難しいと見込まれる場合には、それを他のメンバーに業務を割り振ったり、必要に応じて派遣スタッフを手当てしたりするなど、事前に対策を講じるようにしています」(三宅氏)

[3]給与・賞与
 時短勤務者の月々の給与は、各月の短縮時間に応じて減額となる。例えば1日2時間の時短勤務(月120時間)の場合、月160時間のフルタイム勤務者に比べて単純計算で75%、1日3時間の時短勤務(月100時間)の場合は同62.5%となる。
 賞与も月々の給与が支給額のベースになっているためフルタイム勤務に比べて減額となるが、支給月数は目標達成度によって変化するため、時短勤務でも高い成果を上げれば減額幅を少なくすることが可能だ。
 なお、いずれの休職・休暇についても、その期間中の給与は支給されない。

5.社員個々の豊富な知識・多様な経験が組織を強くする

 「FLASH」は、2015年秋に社員に通達され、2016年4月から実際の運用が始まった。制度に対する社員の反応は上々とのこと。特に女性社員からの評価が高いという。
「社員の男女比はちょうど半々くらいで、平均年齢は31歳と若い会社です。これから結婚、出産、子育てをしていく社員がたくさんいますので、育児のための時短勤務が法律を大きく上回る期間につき可能になったことは大歓迎されています」(三宅氏)
「これからの自分のキャリア、ライフスタイルを考える上で、『Learning』『Social』のような時短勤務や休職・休暇を選べることに対して、社員の反応は非常によいです。まだ実際の申請数、適用数は少ないですが、今後は申請する社員が増えてくると思います」(木下氏)
 今日、育児や介護を理由にした時短勤務や休職・休暇制度は、法で定められているということもあり各社で当たり前の措置となっているが、そうした法定の内容を上回り、しかも、制度の活用用途を進学や留学、リフレッシュ・趣味・余暇活動、地域活動・社会活動にまで広げたケースは珍しい。一方で、このような制度の拡充が結果として社員の流出につながるのではないかと懸念する向きもある。その点について木下氏は次のように言う。
「人材の流出を心配するよりも、社員が長期的に働ける環境づくりをして、社外での多様な経験を活かしてもらいイノベーション創出を図ることが、組織を強くすることにつながると考えています」
 AIが普及期を迎えつつある時代にあっては、まさに企業における競争力の源泉は「人材」であり、しかも単に"働きやすさ"だけを追求するのではなく、組織や業務への愛着や誇り、頑張っていこうとする気持ちというエンゲージメントをも視野に入れた同社の取り組みは示唆に富んでいるといえるだろう。

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