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企業ZOOM IN⇔OUT [2017.09.28]

ソフトバンク

「Smart & Fun!」のスローガンの下、働き方改革を目指す

先進的な取り組みをしている企業の現場をレポート

[企業ZOOM]INOUT

会社概要:インフラをはじめとするディストリビューション・プラットフォームからサービス、コンテンツ、製品まで多彩な分野にわたり事業を展開し、世界の人々に豊かさや喜びを提供したい、世界の未来に貢献したいという志を持ち、世界の人々から最も必要とされる企業グループを目指すソフトバンクグループの中核企業として、移動通信サービスの提供、携帯端末の販売、固定通信サービスの提供、インターネット接続サービスの提供を行う

本社:東京都港区東新橋1-9-1
資本金:1772億5100万円
社員数:約1万7200人(連結)
<2017年3月現在>
http://www.softbank.jp/

取材対応者
人事企画部 労務厚生企画課 課長 石田恵一氏
人材戦略部 人材戦略第2課  課長 岩月 優氏
取材・文/滝田誠一郎(ジャーナリスト)

1.「Half & Twice」から「Smart & Fun!」へ

 ソフトバンクグループの中核会社であるソフトバンク株式会社(代表取締役社長 兼 CEO・宮内 謙)は、2017年4月、働き方改革推進の一環として社員が最適な働き方で組織と個人の生産性を最大化することを目的にした新たな人事制度を導入した[図表1]

図表1 働き方改革に向けた取り組み

スーパーフレックスタイム制 コアタイムを撤廃し、業務状況などに応じて始業時刻・終業時刻を日単位で変更できます。
在宅勤務制度 育児・介護・障がいなどで勤務時間の制約がある従業員は週3回まで在宅勤務が可能。また、トライアルを経て、将来的には全社員への拡大を目指します。
Smart & Fun!支援金[注] 業務効率化により創出された時間を自己成長機会に活用してもらうため、全正社員を対象に毎月1万円の「Smart & Fun!支援金」を支給しています。
プレミアムフライデー 経済産業省およびプレミアムフライデー推進協議会が推進する消費喚起施策である「プレミアムフライデー」の趣旨に賛同し、毎月末最終金曜日の午後3時を退社奨励時間としています。
定時退社Day 退社後のプライベートな時間の充実や、健康的な日常生活を過ごしてもらうために、週に1度、毎週水曜日に「定時退社Day」を設けています。

[注]支給期間は「Smart & Fun!」のコンセプト浸透期間として2017年4月から2019年3月までの期間限定となります。

 新人事制度は、スーパーフレックスタイム制の導入と在宅勤務の拡充・拡大の2本柱とし、それを下支えしているのが同社の働き方のスローガン「Smart & Fun!」である[図表2]。時代の先端を行くITやAI(人工知能)を駆使して、全社員がスマートに楽しく働くことを目指すというのが、すなわち「Smart & Fun!」だ。

図表2 「Smart & Fun!」のコンセプト

「全社員がITを駆使して自分の業務を見直し、業務改善・業務改革を図り、効率的に仕事をする。メリハリのある働き方で効率的に仕事をする。それが『Smart』の意味です。そして効率的に仕事をしてできた時間を自らの成長のために投資をする。成長した社員一人ひとりがイノベーティブな仕事、クリエイティブな仕事を楽しくこなしてしっかりとアウトプットを出す。それが『Fun』の意味するところです。その両方を実現しようということです」(石田氏)
 同社が「Smart & Fun!」をスローガンとして掲げたのは2016年10月のことだが、その前は「Half & Twice」をスローガンに掲げていた。これは宮内社長が提唱したもので、新しいテクノロジーを駆使して社内の業務工数とコストを半分にし、同時に生産性と創造性を2倍にするという意味である。
「ITを推進している会社ですので、ITを駆使して労働時間の短縮、生産性の向上を図ろうということで、情報システム部門と管理部門が一緒になって全社的なシステムやワークフローを徹底的に見直し、改善を図るということを、この2年ほど進めてきました。各部署で週に1日は定時退社を推奨する「定時退社Day」を作るなどして『Half & Twice』の実現に取り組みました」(岩月氏)
 結果として、2013年度と2016年度を比較すると全社員の平均残業時間は30%近くも減少したという。
「業務改善と社員の意識改革によって『Half & Twice』は目にみえる成果を上げましたが、労働時間の短縮と生産性の向上に、さらに楽しみを加えてバージョンアップしたものが、『Smart & Fun!』です。やはり仕事は楽しくないと長続きしないということで、今は『Smart & Fun!』を新たなスローガンとして掲げて働き方改革を進めています」(石田氏)

2.1万人規模のスーパーフレックスタイム制導入

 従来、同社は10時から16時をコアタイムとするフレックスタイム制を導入していた。2017年4月からはコアタイムを撤廃し、業務状況などに応じて始業時刻・終業時刻を日単位で変更することが可能なスーパーフレックスタイム制(所定労働時間=1日7時間45分×1カ月の所定労働日)を導入した。組織ならびに個人が業務内容に適した効率的な時間帯で働くことができるようにすることで、成果の最大化を図るのが狙いだ。対象になるのは約1万7000人の社員のうち、管理職やシフト勤務をしている一部の部署(ソフトバンクショップ、コールセンター、ネットワークセンターほか)を除く約1万人。
「4月まで採用していたフレックスタイムはコアタイムが10時から16時と長めの設定になっていましたので、コアタイムを短くすることで『Smart & Fun!』を実現するという考え方もなかったわけではありません。しかし、コアタイムをなくしてしまったほうが組織なり個人なりの業務に適したメリハリのある働き方ができるということでスーパーフレックスタイムの導入を決めました」(石田氏)
 コアタイムのないスーパーフレックスタイムの導入で、メリハリのある柔軟な働き方が可能になるが、極論すれば、それは同時に社員が自由度高く働くことで、組織としての足並みの乱れを引き起こすことにもなりかねない。ほとんどすべての業務が課単位、チーム単位で動いているにもかかわらず、課員やメンバーが何時に出社して何時に退社するのか分からないということでは業務に支障が生じかねない。実際、制度導入前は管理職たちの間で「管理しづらくなる」と心配する声が多く聞かれたそうだ。「最初の頃は心配する声が多かったのは事実ですが、ソフトバンクらしくトライアンドエラーで、まずはやってみようということで導入に踏み切りました」(岩月氏)

3.スーパーフレックスタイムの運用ルール

 スーパーフレックスタイムの導入が業務に支障を来すようなことがないよう、同社ではその運営に際して必要最低限のルールを設けている。
「全社的に前日までに上司や関係者に出退社時刻を申し出ることをルールにしています」(石田氏)
 上司や関係者なりに申し出た出退社時刻を、社員個々がグーグル・カレンダーに書き込み、社内で共有することもルール化している。グーグル・カレンダーを見れば自分の課やチームのメンバーはもちろん、他の課、他の部の社員の出退社時刻も把握できる仕組みになっている。また、グーグル・カレンダーへの書き込みと同時に、いちいちカレンダーを見に行かなくてもよいように、同じ課のメンバーに対しては出退社時刻をメールで知らせることをルール化している部署も少なくないという。
 翌日の出退社時刻を申し出た際に、上司が「この仕事はどうしても明日中に終わらせたいから、せめて定時まで残ってほしい」と要望するケースも考えられる。そのような要望自体は問題ないが、その場合は上司と部下で話し合って勤務時間を決めることになる。「一方的に上司が勤務時間を指示することはできません。それはスーパーフレックスの趣旨に反することになりますので」(石田氏)
 もし自分の都合を優先させた結果、業務に支障が生じる事態が頻発すれば、それが本人の人事評価に反映されることは避けられない。「自分で出退勤管理がきちんとできない。それが原因で業務に支障が出る。そのような社員がいた場合にはスーパーフレックスの適用を外すこともあり得るルールにしています。スーパーフレックスの適用を外し、所定労働時間制の下で働いてもらいます。ただし、今のところ、出退勤管理がきちんとできなくて問題になっているケースはありません」(石田氏)
 始業、終業時刻を従業員の自主的な決定に委ねる制度の下では、部内、課内で開く会議についてもルールを設けている。従来の勤務時間(始業9時・終業17時45分)を標準で働く時間帯とみなし、会議は原則として、その時間帯内で行うことにしている。この時間帯よりも早い時間帯もしくは遅い時間帯に会議を行う場合は、会議の主催者である管理職は、前日までに部下をはじめとした関係者に連絡しなければならない。例えば、朝9時から課の会議を開く場合には、課長は前日までにメンバーにそれを伝えることが必要で、メンバーはその連絡を踏まえた上で、翌日は朝9時までに出社する。その一方で、「その会議を本当に朝9時から開く必要があるのかどうかをきちんとチェックするよう管理職に対して伝えています」(石田氏)
 こうした制度運用上のルールを設けたこともあって、スーパーフレックスタイムの導入が業務に支障を来しているとか、労務管理がしづらくて管理職が頭を痛めているとか、そのようなことにはなっていないと石田氏。
 スーパーフレックスタイム制が導入されてまださほど時間がたっていないこともあり、これまでのところは従来どおり9時出社・17時45分退社を前提にした出退社を繰り返している社員が多いということだが、何らかの必要に迫られて遅く出社したり、早く退社したり、遅く出社した分だけ遅くまで働いたりするなど、メリハリのある柔軟な働き方が少しずつ定着してきているという。
「段々と定着をしてきており、スーパーフレックスのおかげで子供の入学式に参加できたとか、柔軟な働き方の選択肢が増えてよかったという声も聞かれるようになってきています」(石田氏)「まだ導入して間もないので、スーパーフレックスをどう使いこなせばいいのか分からない社員も少なからずいるかもしれません。9時始業、17時45分終業という勤務時間の枠の中で長らく働き続けてきたのですから、それがすぐに劇的に変化することは難しいと思います。といっても、人事として手をこまねいているわけにはいきませんので、時間の有効活用の仕方や、メリハリのある働き方の成功事例などを社内に発信し続けることが大事だと考えています」(岩月氏)

4.在宅勤務を活かして時間の有効利用を図る

 スーパーフレックスタイム制度の導入と並ぶもう一つの柱が、在宅勤務制度の拡充・拡大である。2017年4月以前においても育児や介護を理由にした週1回の在宅勤務が認めていたが、4月からは育児、介護に加えて妊娠、けが、障害等で通勤に支障がある社員にも適用範囲を拡充し、利用上限についても、週1回から週3日に拡大した。
 在宅勤務の拡充・拡大は育児や介護などと仕事の両立を図る狙いがあることはもちろんのことだが、もう一つ大きな狙いがある。それは時間の有効活用だ。
「当社の場合、すでに育児や介護のための短時間勤務制度もあり、育児や介護と仕事の両立が図れる体制にはなっているのですが、中には育児や介護をしながら仕事もフルタイムに近い形でバリバリこなし、極力パフォーマンスを落としたくないという人もいます。逆に、もっと育児や介護の時間を増やしたいという人もいるでしょうし、育児や介護と仕事を両立させた上で自己研鑽に励みたいという人もいるかもしれません。在宅勤務であれば、通勤に費やす時間がなくなるので、その時間を"仕事に充てるもよし、育児や介護に充てるもよし、自己啓発に充てるもよし"と、各人各様に有効活用が図れるはずという観点から在宅勤務制度を拡充・拡大しました」(石田氏)
 在宅勤務を利用する場合、利用希望者はまず上司に話をし、上司が承認した場合には上司が人事部に申請する形をとっている。上司の承認を必要としている理由は、個人情報を扱う業務に就いている場合には、セキュリティー上の問題から在宅勤務が認められないからである。部下から在宅勤務の適用申請を打診された上司は、その点の問題がないかどうかを判断した上で承認するか否かを決め、承認した場合に人事部に申請することになる。その際、週何日を在宅勤務とするのか、在宅勤務は何曜日に利用するかといった具体的な内容までは不要としている。
「週何日在宅勤務するとか、その曜日をいつにするかといった具体的な勤務内容は希望者本人と上司との話し合いで決めてもらうことにしています。本人の都合も職場の都合も、週や月によって変化しますので、そのあたりはフレキシブルに活用できるように現場に任せています」(岩月氏)
 実際の在宅勤務に際して、利用者は上司に対して前日のうちに在宅で行う業務内容を報告すること、当日は業務の開始時刻と終了時刻、何をどこまで遂行したかを詳細に上司に報告することがルール化されている。このルールの下、社員は自宅からクラウド上にある会社の仮想環境、個人の作業領域にアクセスし、会社にいるときとまったく同じように業務を行うころができる。現在、在宅勤務を利用している社員は約300人いる。いうまでもなく利用者の反応は上々だという。
「私の課にも在宅勤務を利用しているメンバーがいますが、非常に役立っているようです。例えば、1カ月のうちに何日かは必ず忙しい日があって、そういうときは子供の送り迎えに行く時間も取れないので、今までであれば誰かに送り迎えをお願いしなければならなかったのですが、在宅勤務を利用すれば通勤時間の分を仕事に充てられるので、送り迎えをしながらでも、やるべき仕事をきちんと処理することができるということで、大変喜んでいます」(岩月氏)
 在宅勤務の拡充・拡大を図ったとはいえ、現時点では対象者は育児・介護・妊娠・けが・障害等々の理由で通勤に支障がある社員に限られている。今後、一般社員へのトライアルを経て、将来的には対象を全社員にまで広げることを視野に入れている。

5.毎月1万円の「Smart & Fun!支援金」を全社員に支給

 スーパーフレックスタイムの導入や在宅勤務の拡充・拡大に合わせて、同じく2017年4月から同社は全社員に対して毎月1万円の「Smart & Fun!支援金」の支給を始めた。
「スーパーフレックスタイムや在宅勤務を利用することで業務の効率化を図り、それによって創出された時間を自己投資に充てて成長してほしいというメッセージを込めて、毎月1万円の支援金を支給することを決めました。これは『Smart & Fun!』の実現までとして、2017年度、2018年度の2年間限定の制度です」(石田氏)
 支援金の使い道は社員各自の自由だが、その使い道について社員にアンケートしたところ、「外部の勉強会に参加する」「資格の勉強をする」「異業種交流会に参加する」「スポーツジムに通って体を鍛えたり、リフレッシュを図る」など、会社の期待どおりの使い方をしている社員が多いという結果が得られた。「支援金の支給を決めたかいがあるというもの」と石田氏も岩月氏も口をそろえる。
「ビジネスを取り巻く変化が非常に速く、激しいので、せっかく身に付けたスキルもすぐに陳腐化してしまいます。スキルが陳腐化してしまえば、イノベーティブでクリエイティブな仕事はできなくなります。結果として、ソフトバンクらしさが失われてしまうことにもなりかねません。そのため、『Smart & Fun!』のスローガンを掲げ、全社員がスマートに楽しく働くことを目指しているのは、突き詰めればソフトバンクらしさを失わないためといえると思います」(岩月氏)


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