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Point of view [2016.11.11]

第74回 野嶋 朗

ゆとり さとり やどり世代を育てる


野嶋 朗  のじま あきら
株式会社ノートラック代表取締役、ハリウッド大学院大学客員教授

1988年株式会社リクルート入社。進学情報・キャリア・地域活性・広告宣伝領域で事業企画、商品企画、人材育成、営業戦略などに関わる。メディアプロデュース部部長、進路情報部部長、進学事業カンパニーオフィサー、北海道支社長などを務める。2011年株式会社リクルートライフスタイルにて、ビューティ総研創設時より2014年退職までセンター長に従事。2015年株式会社ノートラックを設立、サービスデザイン、サービスマネジメント、顧客接点と顧客満足の分野でコミュニケーションデザインを通した課題解決を行う。
ビューティビジネス学会理事、日本化粧品検定協会理事、日本ビューティ・コーディネーター協会特別顧問、顧客ロイヤルティ協会顧問、日本リラクゼーション業協会顧問、はたらく未来研究所フェローほか、美容関連メーカー、団体の顧問・役員を兼任。
著書に『「うちの新人」を最速で「一人前」にする技術』(講談社)、『一生離れないお客さまをつくる方法』(女性モード社)、『データで見るエステティックの今とこれから』(フレグランスジャーナル社)がある。

 

美容業界の人材教育事情

「美容業界は教育産業である」と人気サロンの経営者たちはよく口にする。専門学校を卒業したばかりの新入社員はすぐに客への施術はできない。おおむね2~3年、長い店では4年を超える期間、アシスタントとして修行を積まなければならない。新人の戦力化期間は店舗の生産性への影響が大きい。アシスタント期間の従業員は直接的な売り上げに貢献する存在ではない。スタイリストになって初めてプロとしてのスタートラインに立つのであって、それまでは「長い研修期間」だ。現在、成長率の高い、伸びている会社はどこも人材育成のエッジが効いている。個を活かし、短期間に稼げる人材に育成する術(すべ)を知っている。人に付随する技術が商品の中核であるサロンビジネスにとって「人材育成」は最大のテーマだ。

今や人気職種でなくなってしまった美容業界において新人は貴重な存在。2015年度の美容師国家資格合格者数は1万9421人。理容師では同1467人。2005年度では美容師同3万3115人、理容師同2911人。10年間で美容師資格新規取得者は6割弱に、理容師については半減している。さらに、資格は取得しても理美容サロンには就職しない学生も多い。

このような背景もあり、美容業界では人材に対して独特の育成観が醸成されてきた。

「選抜するのではなく、漏らすことなく育成する」「『ゆとり さとり やどり』感を持ったミレニアル世代を1日でも早く戦力化する」──このような教育観は他業界においても参考になる点が多いだろう。

ミレニアル世代の三つの意識「ゆとり さとり やどり」

1980年代から00年に生まれたミレニアル世代。生まれた時からITデバイスに触れていることや、受けてきた情報教育のレベル、社会課題意識の高さなどから消費の傾向やセンスの違いに関して世代の特徴を語られることが多い。いわゆる「ゆとり教育」を受けた世代は競争しない、チャレンジしない、自ら動かない、指示待ち、などと指摘される。「どうせやっても変わらない」と結果を悟ってしまう「さとり」とはネットなどから簡単に情報収集し結果を見極めてしまい、がむしゃらになることができないことを指して言う。ビジネスにおいては重要な「予測できない結果」をもたらせないことや想定できない出会いが生まれないことなどが心配される。「やどり」とは地元志向や同居志向が強く、大きな会社で安定した働き方をしたいという家族や組織への依存の強さのことだ。

景況感や教育、情報環境、社会課題の多様化など彼らの生育環境はこれまでとは相当に異なる。そこは受け止めたとして、この世代に対してどう処していけばよいのだろうか。

スモールポーションの「型化」

これからのビジネス環境では小さな武器を複数持つことが必要だ。求められる技術や知識も速いサイクルで更新され短期間に陳腐化する可能性が高い。テクノロジーによって人の関与が不要になってしまうことが喧伝(けんでん)される仕事も幾つかある。一方、人の持つ専門性、プロ性はあらゆる分野で求められている。ネットによってこれまで専門的な情報を持つことのなかった一般人が玄人はだしの知識を持ってしまい、あらゆる業界で素人がセミプロ化しプロ顔負けの情報知識を持つに至っている。この現象は美容業では顕著で、例えば多くのセミプロ美容家がブログによる発信を中心に活躍中だ。逆に専門家であるべきプロがネットの当たり前情報以下の知識しか持ち得ないケースも見られ、また売り場で人が関与する販売領域の変化は激しい。美容業でも台頭するセミセルフ型売り場の背景だ。

このような状況の中、従業員が働き続けるためのチカラを自覚し、自律的なキャリアを開拓していくために、高難易度の資格や遠い目標だけでなく、"スモール資格"や"プチ検定"で即戦力となる小さな武器を幾つも用意することには効き目がある。安定安心を求めるミレニアル世代への親和性も高い。結果がすぐに出る一つの武器を獲得することで自信と行動につながる。仕事の「型化」にもつながる。あらゆる職業で一人前になるために必要とされる1万時間。この1万時間を細切れにして一つの分野で一人前化を進めていくのである。さらに重要なのはこの武器の掛け合わせだ。その分野で100人に1人の人材になり、さらに小さな新しい武器の分野で100人に1人の人材になれば掛け合わせで1万人に1人の人材になれる。こういった小さな武器を複数持たせる「資格やスキルのスモールポーション化」がこれからの若い世代に向けた教育のキーワードだ。

ミレニアル世代の就業観は「ブラックを避けろ」。やりがい、自分らしさの発揮といった内発的な動機も強い。条件だけで選んでいるのではなく「ブラック」をスクリーニングしその中から共感のネタを探している。わくわくするための演出、褒める制度、褒める習慣が重要だ。「いいね」を社内で見える化する取り組みや組織でのミーティングの在り方などは最優先に取り組むべき要素である。さまざまな取り組みからやりがいと達成感を味わう機会をつくる。「この組織で働けてよかった」という実感が成長の速度に影響する。もう一つ、ハートのタフさとレリジエンス(回復力)は重要でこの世代のキャリア形成には欠かせない。ただし先輩・上司とは受け止めの感度が違う。小さく思える失敗も大ごとになってしまう。だからこそ長所伸展。ブラザー・シスター制度と斜めの関係の制度化。核家族かつ少人数教育で育ってきた世代に放置は禁物で見守りの人事制度化が必要だ。

「いいからやれ(黙ってやれ)」という指導は現場でもまだまだ多いのではないだろうか。「よくやった、おかげでこうなった」がバランスの良い仕事観をつくっていくように思う。

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