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実践 ダイバーシティ&インクルージョン ~女性活躍推進を越えて [2016.03.03]

第4回・完 人事が取り組むべき方策


楠田 祐
中央大学大学院 戦略経営研究科
(ビジネススクール)客員教授

 女性活躍推進に当たって、まず人事が行うべきことは、ダイバーシティ推進の着地点がインクルージョン(多様な個性やワークスタイルを受容し、一人ひとりを生かしていくマネジメント)だというビジョンを明確にし、それを組織に浸透させていく合意を経営から取り付けることである。その上で、制度、育成、職場の環境づくりを並行して行っていく必要性がある。女性活躍推進にとどまらず、ダイバーシティ&インクルージョンにまで至っている会社の人事は、それらを10年以上、社長が代わってもぶれずにやり続けている。

キャリア継続の重視

 まず、はじめに制度について考えてみる。女性の場合、出産というライフイベントを迎えたとき、育児休業を1年以内にして戻ってきなさいと、人事がどれだけ言えるかが重要になっている。育児休業を長くとって、2人目ができてしまうと休業期間が3年、4年になってしまう。そうなると積み重ねてきたキャリアが途切れてしまうので、キャリア形成が難しくなることに加えて、キャリア意識も低下しがちになる。ずっと家にいると、もうちょっと休んでしまおうかとか、辞めてしまおうかといった気持ちが勝ってしまうのだ。

 ある大手食品メーカーでは、女性社員が産休に入る前に、1年以内に職場復帰してくださいと伝え、育児休業期間の中頃くらい、半年くらいたった辺りで会社に呼んでいる。その際は、子ども連れでも構わない。育児休業を取っている同じ環境にある女性たちとのコミュニケーション機会を創りながら、戻ってきてほしいというメッセージを伝え続けている。また、1年経過する直前ぐらいに電話をしたりメールをしたりして、「戻ってくるよね」と念を押している。そういうことをやり続けている会社では、1年未満で育児休業から職場復帰するようになっている。

 育児休業制度が2年とか3年とか4年とかという会社もある。制度を手厚くすることで職場復帰の可能性を高める狙いと考えられるが、これからの制度整備を考えるなら、一概に休業可能期間が長ければよいというわけではない。「職場に戻って来てほしい」と思わせていくこと自体が重要なのである。制度の利用を野放しにしていると、戻らなくてもいいという雰囲気を創り出してしまう場合もある。結果として会社が制度を悪用して、もう帰って来なくていいよというメッセージを出しているかのように見えてしまう恐れもあるので、注意が必要である。

20代での異動経験がポイント

 異動については、結婚する前、20代のうちに今まで30代でやっていたような仕事をアサインするという取り組みが近年、増えている。これは女性のみならず男性に対しても共通している。例えば、グローバルな事業展開を目指している企業では、海外にトレーニーという形で人を出す制度はこれまでも多く存在した。ただ、かつては30歳を過ぎてから1年間、海外の現地法人に行って勉強してくるというのが一般的だったが、今は20代の後半で行くケースが非常に増えている。

 グローバル企業でなくても、他のグループ会社などに20代のうちに人を出すというケースが多く見られる。なぜそうなったのかと企業の人事担当者に尋ねると、30代で育児休業から戻ってきてからトレーニーに行ってもらいたいと伝えた場合、これまでは「いや、もう私いいです」と断られるのが一般的な反応だったと言う。しかし、20代の独身のうちに海外勤務を経験させていると、育児休業から戻ってきても、「もう一度行きたい」となるらしい。すでに大手総合商社は、そのような制度になっている。

職場の男性中心意識の変革

 次に育成については、大きく分けて二つのテーマがある。すなわち、女性本人への研修と、女性を部下に持っている男性管理職への研修の二つである。
 まず、女性に対しては、ポジティブアクションという言葉のとおり、管理職の面白さや、ずっと働き続けることの意義を、ワークショップやセルフアセスメント(自己評価・振り返り)を行いながら、女性社員が将来の働き方のビジョンをポジティブに描いていく、といった研修をどこの会社も当たり前のように実施するようになってきた。

 一方、本人だけではなく男性の管理職に対する研修も不可欠である。男性管理職が女性社員に対して過度に配慮をしてしまうという、いわゆるパターナリズムを払しょくするために、きちんと女性社員をピープルマネジメントできるようになるための研修機会が必要である。

 それから職場の環境については、ある大手素材メーカーが行っているように、次の管理職候補を各職場から出してもらうときに、必ず女性を入れてもらうようにする方法も効果的である。同社では、自分の部下に女性の候補者がいない場合は、自分の知っている他部門の女性社員でもよいことにしている。女性を管理職登用するということを男性管理職に意識させて、出ていない場合、なぜ出していないのかを人事が聞きに行っている。

 男性管理職は無意識のうちに、男性の部下を優先的に昇格させてしまうという傾向がある。会社の創業以来、ずっと男性だけが昇格してきた企業が多いので、女性の候補者を出すことを意識的にやっていくことで、職場の環境は変化していく。その際、人事が各部門をサポートしていくことも重要だ。女性社員に主眼を置いたタレントマネジメント、サクセッションプランを行っていくことが必要である。

インクルージョンを実現し、成果を生み出す
ビジネスパートナー人事へ

 昨今、人事自体がビジネスパートナー人事になるべきだと盛んに言われているが、ある会社のダイバーシティ担当は各事業部内の会議に時間がある限り出席するようにしている。つまり人事は制度だけ作っていればよいという時代ではなくなった、ということである。人事がビジネスを深く知り、女性ならではの視点・感性の活用や、個の力の相乗を促す配置・登用を工夫することで、インクルージョンの成果が実現された事例が出てきている。男性社員と女性社員が一緒になって考えた結果、これまでにない新製品が生まれた、というのは分かりやすい例だ。これからの人事は、ダイバーシティ&インクルージョンを通じてビジネスの成果を生み出すという役割認識を持つことが重要である。

※編集部より:本連載は今回で最終回となります。全4回までお読みいただき有り難うございました。

楠田 祐 くすだ ゆう
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授
戦略的人材マネジメント研究所 代表
K's HR Label 代表

東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問も担う。著書に『破壊と創造の人事』(共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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