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目標管理で必ず結果を出す企業の作法 [2016.02.26]

第3回 結果が出る目標遂行過程を歩む


中村 壽伸
株式会社日本経営システム研究所
代表取締役社長

1.目標管理は遂行過程の貧弱さに問題がある

 企業が過去に実施した"経営上質化"の活動がそれなりに成果を上げてきた背景には、日常の遂行過程に欠かせないノウハウが確立されていたことが寄与している。例えばQCサークル活動では、KKD(カン、経験、度胸)によってそれ以前の仕事の進め方を強化するだけで終わらないように、「QC七つの道具」と呼ばれる統計的手法の活用が基本とされた。それによって、自部門が会社業績にどのような影響を与えているかを数字で知ることができ、また何をし損なって悪影響を与えたかも分析できたため、実情に合ったテーマを設定してスムーズに活動することができた。これがノウハウ手順化の成果であった。QC活動展開に関しては、現状把握から成果定着・共有化までをプロセス化した「QCストーリー」が広く知られており、これにそって活動すれば一定の成果を上げられるようにノウハウ化されていた。数字目標を設定しにくいスタッフ部門でも基本手順を使えば、自部門に適したテーマを通じて全社への貢献と人材育成の両方を実現することができた。
 ところが、目標管理にはそうした基本手順がほとんどない。Management by objectives through self-control が精神だと言われたために、目標を個人単位にまで細分化し自主的に目標に向かって努力すべきだとされた。現状ではこれが尾を引いて、自主的に取り組む部下の目標達成に向けて、上司である管理職に制度上義務づけられた支援策が重荷となり、ついつい運用がおろそかになっているのである。上司からの支援と言えば「目標設定面接」「中間面談」「期末のフィードバック面接」「評価への反映」といった具合にさまざまあるが、これらはまさに目標管理を人事制度の一部として扱っている証左であるために、業績管理の目的である成果を上げる手順にふさわしいノウハウではないのが実情だ。
 基本手順を欠いた未熟な目標管理活動は、成果を上げにくいだけでなく、人材育成も組織運営も現状維持の状態が続くだけである。

2.「適切な目標を設定し」「深く考え」「確実に実行する」のに効果的なノウハウ

 目標管理に関して、定まった基本手順があまりないということは、"型にはまった活動"でないと捉えることもできる。つまり、さまざまなノウハウを取り入れることで成果の向上が期待できる、柔軟性のある活動といえるわけだ。そこで、これまでの連載でも述べてきた、目標管理における重要なポイント、「適切な目標を設定し」「深く考え」「確実に実行する」を実践するプロセス設定に効果的なノウハウを組み入れる手法について考えてみたい。
 例えば、経営計画の作成等でよく利用されるノウハウとして、「SWOT分析」「バランススコアカード(略してBSC)」「PDCA」「統計手法」などがある。目標管理でこれらノウハウを活かし、その特徴をうまく引き出すためには、私は先に触れた「QCストーリー」を基本手法とするやり方が有効と考えている[図表1]

[図表1]QCストーリーを柱とした目標管理プロセスの例

 QCストーリーは経営管理の得意不得意を問わず、誰でも理解しやすく成果を上げやすいように工夫されたビジネスサクセスストーリーと言えるものだ。その内容は、「1.現状把握」「2.目標設定」「3.要因解析」「4.対策立案」「5.対策実施」「6.成果確認」「7.成果定着・共有」という七つの段階で構成されている。以下では、このQCストーリーを基本にしながら「SWOT分析」などの各種ノウハウを組み合わせて高い成果を上げる「目標管理の基本手順」を説明する。

[1]現状把握
 現在の良くない状況と内容とを、正確に理解することを目的とした手順の第一歩である。可能なら課長以上の管理職が一堂に会して、自社の経営分析をすることから開始するのが望ましい。経営分析を苦手とする管理職でも、他の管理職と並んで電卓をたたくことを通じて徐々に財務に関心を抱くようになり、短期間で自社の経営状態を適切に解説できるようになっていく。さらに自部門の経営状況を語るのに必要な数値を普段から集計するようになっていく。経理や人事などのスタッフが分析過程を解説して先導すれば、ライン管理職がスタッフ業務へ理解を示し、協力するようになる効果も期待できる。
 経営計画を策定するとき、最初に実施するのが「SWOT分析」である[図表2]。自社の「強み」や「弱み」、今後の市場における「機会」と「脅威」を分析するのが目的だ。だが問題は誰の目線で「SWOT分析」をするのかである。多くの場合、自社に対する顧客の視点を理解した上での冷静な分析ができていないことが問題となる。過去に受け持った研修でも、残念ながら私が指摘するまで顧客視点で冷静に「SWOT分析」ができた例は少なかった。その意味でも、顧客視点での「SWOT分析」は有効である。

[図表2]SWOT分析による自社分析

当社の強味
STRENGTH
当社の弱味
WEAKNESS
機会
OPPORTUNITY
脅威
THREAT

 「BSC」は、自社の将来をどうしたいか、何から実現していくかを計画するために「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」の四つからなる施策を具体化するノウハウである。これを活用するには、前提として「SWOT分析」の力量が必要であり、設定した目標との関連を[図表3]のように理解できるようになるまで深く考えることが必要である。そのため私は、目標管理に慣れないうちから「BSC」を利用する必要はないと考えている。

[図表3]バランススコアカード(BSC)と目標管理の関わり

[2]目標設定、要因解析、対策立案
 現状把握から対策立案までが「PDCA」の「Plan」である。現状把握が深くできるほど適切な目標設定ができ、その実現を阻む要因を明確にすることができる。要因とは「問題の解決・目標の実現を阻む真の原因」という意味であり、逆に目標達成のエンジンとなる項目を「要素」という。そして、これらを踏まえて展開する対策が「アクションプラン」である。ただしいずれについても、要因解析を実施しないうちに記入されたものは深く考えた結果とは言えない。したがって、効果も限定的で不十分である。
[3]対策実施
 PDCAの「Do」である。ただ、目標管理活動を、定期ミーティングで効果を確認しながら実施する企業は少ない。これは個人にまで目標を細分化するからであり、ひいては活動が社員の自覚任せになり実行されないことの原因や、PDCAを回すところまでに至らない原因にもつながる。そこで、筆者は、目標管理活動をチームで進めることを推奨する。チームミーティングは曜日と時刻を決めて週間(習慣)で実施を推進することが有効である。遅れが出れば次週に取り戻すことができるからだ。
[4]成果確認
 PDCAの「Check」である。成果をチェックする際には、同じ部署に属するチームを集合させて、相互の成果を確認すると効果的である。中間面談は個人を対象に実施するものであるが、チーム制のミーティングで行えば、目標を共有し目標達成度を底上げする効果が見込める。必要があればアクションプランをどんどん書き換えることも重要だ。期中に目標を変更する必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく見直すことも重要である。目標管理が「人事制度」でなく「業績管理」であることを正しく理解していれば、変更することへの抵抗感を減じて割り切ることができる。
 何より重要なことは、アクションプランどおりに実行できたかを評価対象にしてはならない、と理解することである。PDCAを回せば回すほど、アクションプランはどんどん書き換えることになるからである。
[5]成果定着・共有
 PDCAの「Action」である。目標達成度に合わせた新たな「Action」を講じることを推奨するものと考える人がいるが、それより「成果再現性を高める」施策を講じるほうが重要である。また、解決した問題を再燃させないよう「再発防止策を講じる」ことも忘れてはならない。そのために「マニュアル作成」や「研修」「事例発表」などを通じて、活動成果を仕事のプロセスに反映させることが欠かせない。残念ながら、ここまできっちりと手を打つ企業は少ないのが現実だ。

3.フィードバック面接は無用になることが理想である

 フィードバック面接は評価後に実施するものであるが、私は「後の祭り」と呼んでいる。重要なことは仕事中に知らせるべきである。チームメンバーが上司や先輩に指導されて成果を上げる経験は、上司等の優れた仕事ぶりをメンバー自らが観察して、学ぶ姿勢を研ぎ澄ます上でも有効だ。評価結果をフィードバックする狙いで実施する面接の意義はあるものの、目標管理活動の良否を期末になってからフィードバックする狙いの面接なら要らないと言えるくらい、日常の学びを充実させることにこそ価値があるのである。

中村 壽伸 なかむら ひさのぶ
株式会社日本経営システム研究所 代表取締役社長
学習院大学法学部卒業。銀行勤務を経て現職。企業の事業戦略と経営計画を実現する人事・組織戦略の専門家。中堅・中小企業から上場企業まで、業種を問わず500社以上の企業をコンサルティングした実績を持つ。セミナー講師としても活躍中。主な著書に「経営者は昇進・昇格する人材をどのように見分けているのか」(日本生産性本部)、「成果主義の人事・報酬戦略」(ダイヤモンド社)、「バカな人事 ~なぜ御社の人事は社員のやる気を失わせるのか~」(あさ出版)ほか多数

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