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採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント [2015.12.11]

2015年12月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)


 ProFuture代表の寺澤です。
 12月7日、経団連は「3月 採用広報開始、6月 採用選考開始、10月 採用内定開始」とする2017年卒採用に向けて改定した「採用選考に関する指針(以下、指針)」と「手引き」を公開しました。記者会見で経団連・榊原会長は、「今年の就職活動は、学生にとって長く暑いものとなり、大学にとっては卒論や研究・実験などへの支障が生じ、企業にとっては特に中小企業では内定辞退が相次ぎ、会員企業でも政府の要請を守らない企業の影響を受け、当初目標とした採用者数に届かなかったり、良い人材が確保できなかったりした。このように三方すべてが損をした結果となっており、こうした状況をいくらかでも改善するため指針を改定した。来年の就職活動では、今年の問題点が改善され、三者が望む方向に近づくことを期待している」と説明しています。
 今回は、改定された「手引き」の内容と、HR総研が11月下旬に実施した「新スケジュールに関するアンケート調査」の結果を見てみたいと思います。

留学経験者への配慮が鮮明に

 「指針」の変更点としては、「選考活動」が「卒業・修了年度の8月1日以降」から「卒業・修了年度の6月1日以降」へと変更されたほか、「なお、これらの開始時期に関する規定は、日本国内の大学・大学院等に在籍する学生を対象とするものとする」としたただし書きが、「なお、活動にあたっては、学生の事情に配慮して行うように努める」に改められました。ただ、対象となる大学の範囲については、後述するように「手引き」のほうに同様の内容が追加されています。もう一つ、これまで「5.多様な採用選考機会の提供」の説明は、「未就職卒業者への対応を図るため、多様な採用選考機会の提供(通年採用等の実施)に努める」とされていましたが、改定版では「留学経験者に対して配慮するように努める。また、卒業時期の異なる学生や未就職卒業者等への対応を図るため、多様な採用選考機会の提供(秋季採用、通年採用等の実施)に努める」と、「留学経験者」や「卒業時期の異なる学生」についての記述が追加されています。これらについては、「手引き」でもあらためて説明されています。

 次に、「手引き」の変更箇所を順番に見ていきましょう。まず今回の改定では、冒頭に「本指針の適用対象者について」との項目が追加され、「大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者」のほか、就職問題懇談会の構成メンバーである「短期大学及び高等専門学校卒業予定者」も対象であるとする一方、「大学院博士課程(後期)に在籍している大学院生」および「日本国外の大学・大学院等に在籍する学生」は対象とはならない旨が明記されました。高校生はもちろんのこと、適用対象者として明記されていない専門学校生も対象とはならないことになります。
 「3.採用活動について」の項目では、新たに「(3)選考活動における留意点」という小項目が追加となっています。「今般の開始時期の変更に伴い、学事日程に一層配慮していくことが求められる」とした上で、

・事前連絡については余裕をもって行う

・(面接や試験の実施は)授業やゼミ、実験、教育実習などの時間と重ならないような設定とする

・土日・祝日、夕方以降の時間帯の活用なども含めた工夫を行う

と具体例を挙げています。また、「大学等の履修履歴(成績証明書等)について一層の活用を検討することが望ましい」と、学業を尊重し、大学での成績を選考材料とすることを薦めています。
 「4.広報活動の開始日より前に実施するインターンシップについて」の項目では、これまでと同様の【就業体験としてのインターンシップの在り方】の後に、「なお、広報活動開始後に実施するプログラムの場合は、上記の要件を必ずしも満たす必要はない」の一文が追加となっており、3月以降のインターンシップは採用選考活動と区別する必要がないことを明文化しています。
 変更点の最後は、大項目「6.留学経験者などに対する多様な採用選考機会の提供」の追加です。留学経験者を対象とした別途の採用選考機会の設定や、自社の採用HPなどを活用しながら積極的な周知を行うことを求めています。また、クォーター制に移行する大学やギャップイヤーを導入する動きを踏まえて、「一括採用のほかに夏季・秋季採用をはじめ、様々な募集機会を設けていくことが望ましい」としています。「8月 採用選考開始」を信じて留学していった学生が不利にならないよう配慮を求めたものといえます。

「8月 採用選考開始を継続すべき」とする企業はごく少数

 11月20日、それまで「8月 採用選考開始」の継続を求めていた国公私立大学・短期大学および高等専門学校で構成する就職問題懇談会(座長:吉岡知哉 立教大学総長)が、「企業側が最終的に決めること」として経団連の方針を受け入れ、経団連も「6月 採用選考開始」の方針を正式に発表しました。これを機にHR総研では、11月25日~27日に「2017年新卒採用スケジュールに関するアンケート調査」を実施しましたので、その主な結果を見ていきたいと思います。

 まず、経団連が決定した「3月 採用広報開始、6月 採用選考開始」の新スケジュールをどう評価しているかです。全体集計の結果では、「『8月 採用選考開始』のままにすべきだった」とする企業は4%しかなく、最も多かったのは「『4月 採用選考開始』まで戻すべきだ」で49%と半数にも及びます[図表1]。「時期の規制をなくすべきだ」とする意見も25%と4分の1もあり、今回の「『6月 採用選考開始』は妥当な判断だ」と評価する企業は14%と少数派となっています。

[図表1]経団連の新スケジュール(3月 採用広報開始、6月 採用選考開始)
をどう評価するか(全体)

  資料出所:ProFuture/HR総研調べ(以下図表も同じ)

 経団連自身も「4月 採用選考開始」を理想としつつも、個別企業の説明会場の予約はもちろんのこと、大学での学内企業セミナーや各種の合同企業セミナーの計画も進んでしまっており、この時期となってしまっては「3月 採用広報開始」を早めることは現実的ではないとの認識から、採用選考開始だけを前倒しにするのには6月が限界との判断だったわけです。それでも、「3月 採用広報開始」を前提にしたとしてもなお「4月 採用選考開始」にすべきだったという声が多いことになります。
 経団連の会員企業が多い大手企業(1001名以上)に限れば、「『6月 採用選考開始』は妥当な判断だ」とする企業が28%と他の企業規模の企業よりも多くなっています[図表2]。経団連の決定もやむなしということなのでしょう。「時期の規制をなくすべきだ」とする意見は、企業規模による差異は少なくなっていますが、わずかとはいえ中小企業(300名以下)が27%で最も多かったのは意外です。大手企業との選考時期の逆転現象により、解禁後に大手企業に鞍替えする内定学生が続出したことに苦労した中小企業からすれば、「時期の規制をなくす」=「大手企業の選考の早期化」につながり、大手企業の選考終了後に中小企業にとって採用にかける十分な時間が確保されると考えたのかもしれませんね。もちろん「守られないルールに価値はない」との考えも強いとは思いますが。

[図表2]経団連の新スケジュール(3月 採用広報開始、6月 採用選考開始)
をどう評価するか(企業規模別)

新スケジュールも守られることはない?

 今年、水面下での採用活動を展開した大手企業からすれば、「6月 採用選考開始」は実態にほぼ近くなるわけですし、「8月 採用選考開始」と比較すれば、まだ守りやすい日程になったといえます。ただし、企業の見方はそんな簡単なものではないようです。経団連傘下の大手企業の採用選考時期はどうなると思うかを聞いたところ、「守る企業が増える」とする企業が24%あるものの、反対に「減る」とする企業も20%あり、結果的には今年同様の状況となりそうです[図表3]。「8月 採用選考開始」よりは守りやすくなるとはいうものの、結局抜け駆けを図って少しでも優秀学生を囲い込もうとする動きを制御することはできず、水面下の動きがさらに前倒しになるだけだと考える企業が大半のようです。
 また、今年「8月 採用選考開始」を順守した企業からすると、守ったことによって求めるレベルの学生を集めきれなかったり、選考途中での辞退者が続出したりと、採用計画数を達成できなかった企業が少なくありません。来年、再度新しいルールを守ろうとする企業が減少することは十分考えられます。

[図表3]経団連傘下の大手企業の選考時期はどうなると思うか

 今回の変更は、就職活動の当事者である学生にとってよかったのか、悪かったのか。「良い変更だと思う」が30%に対して、「良い変更だとは思わない」とする意見も同じく30%あり、意見は真っ二つに分かれました[図表4]。それぞれの主な理由は以下のようになっています。

[図表4]新スケジュールは学生にとって「良い変更」だと思うか

■良い変更だと思う

・理系の研究への影響が緩和される

・中小企業にとっては、採用活動を多少なりとも短期化できる

・現状よりは多数の学生の就職活動期間が短縮される

・8月解禁よりは、選考スケジュールに余裕ができる

・水面下の動きが少しは減る

・大企業に挑戦できる上に、判断も早めにできそう

・インターンが主流になりつつあるから

■良い変更だと思わない

・フライング企業は多々発生するであろうし、心労は変わらないと思われる

・講義や研究が本格化する6月の開始は、学生を学業に専念させるためとの目的で8月の夏休みの時期に変更した趣旨に反する

・教育実習を予定している学生や、理系の学生には厳しいと思う

・単位取得がまだ残っている学生もいるため、学業を優先させるべきだ

・6月は学期中であり、勉強に専念できない

「12月 採用広報開始、4月 採用選考開始」を望む企業が半数

 今回の指針変更は2017年卒採用についての限定的なものであり、2018年卒採用に向けては継続して検討していくこととされています。時期的に「採用広報開始」時期の変更に手を加えられなかった今回の変更はあくまでも暫定的なもの(妥協的なもの)であり、抜本的な変更は次の2018年卒採用にまで持ち越すということになります。
 では、2018年卒採用ではどんなスケジュールが良いと考えられているのでしょうか。いくつかの選択肢を用意して回答したもらったところ、最も支持されたのは、前回までの「12月 採用広報開始、4月 採用選考開始」で、全体の48%と実に半数に迫る勢いです[図表5]。次いで多かったのは、「2月 採用広報開始、4月 採用選考開始」の9%で、「5月 採用選考開始」を支持する声は最も少ない結果となりました。ゴールデンウィークを考えると、採用選考開始にはふさわしくないということなのでしょう。今回、経団連が決めた「3月 採用広報開始、6月 採用選考開始」もわずか4%にとどまります。

[図表5]2018年卒採用のあるべきスケジュール

 一方、日程のルールをどう変更しても、外資系やITベンチャー、中小企業などすべての企業にルールを守らせることは不可能であるともいえる中、順守されない日程ルール自体を全廃して、各企業が自由にスケジュールを決められる方式(選考時期の自由化)の是非を聞いてみました[図表6]。「選考時期の自由化」=「通年採用」ととらえる向きもありますが、必ずしも「通年採用」である必要はありません。いつ選考するかは各企業の判断に委ねられ、各企業がホームページ等でスケジュールを事前に公表(宣言)して行うというものが「選考時期の自由化」であり、4年次の4月の選考だけで採用活動を終了しても構わないというものです。

[図表6]「採用選考時期の自由化」をどう思うか

 意見はものの見事に分かれました。全体では、「賛成」の49%に対して「反対」が51%と拮抗しています。別の質問項目で、「時期の規制をなくすべきだ」とする意見は中小企業で最も多かったように、こちらの質問でも中小企業の「賛成」は56%と、他の企業規模よりも多くなっています。
 「選考時期の自由化」に対する賛成派、反対派のそれぞれの理由は以下のようになっています。

■賛成

・すでに外資は完全自由化なので、優秀な人材が外資に流れる傾向を止める必要がある

・新卒だけ足並みをそろえるのはおかしい

・ルールがあっても、水面下では自由に行っている

・新卒一括採用だけでなく、通年採用も一般的に広まったほうが、学生も就活のやり方を選べる

・ルール違反に罰則がつくわけではないので、ルールを定めても自由に活動する企業が必ずいる

■反対

・力の強い大手が先導することになるので中小はより不利になる

・新卒採用という独特の仕組みがある日本においては、一定のルールは必要

・それこそ内定者の奪い合いになり、1年以上内定者をつなぎとめる必要がでてくる

・時期が決まっていないと、学生の就職活動が長期化する

・ある程度の目安がないと、大学も学生も活動がしにくい

 私個人としては、規制緩和が進む中、新卒採用の時期についてのみこのようなルールが存在することが不自然であり、高校生採用の統一ルールはともかくとして、大学生等の選考時期は各企業の自由にするべきだと考えています。
 次回は、引き続き今回の調査結果を基に、新スケジュールを前提にして、企業は実際の採用選考をいつから開始し、いつから内定を出し始めようとしているのか、また、2017年卒採用に向けて企業がどんな戦術を取ろうとしているのかを見ていきたいと思います。

110506terazawa_pic.jpgのサムネール画像 寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
中央大学大学院 戦略経営研究科 客員教授
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約20年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。  http://www.hrpro.co.jp/

 


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