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Point of view [2015.09.25]

第50回 永谷研一

研修企画担当者に向けて――
あなたの研修がやりっぱなしになる9つの理由


永谷 研一  ながや けんいち
発明家 株式会社ネットマン 代表取締役社長
NPO法人 学習分析学会 副理事
1966年静岡県生まれ。99年4月株式会社ネットマンを設立。2001年から「携帯電話を活用したアクティブラーニング」を手がけるパイオニア。また人材育成に必要なITを考案・開発し、日米で特許の取得に成功。米国O−1ビザ(卓越能力保持者ビザ)取得。行動科学や認知心理学をベースに1万人以上の行動データを分析し、行動習慣化メソッド「PDCFAサイクル」を開発。多くの企業や大学での人材育成プログラムに提供される。著書に、『絶対に達成する技術』(中経出版)、『人材育成担当者のための 絶対に定着させる技術』(ProFuture)がある。
著者公式サイト:
 「発明家永谷の教育イノベーション」 
http://sotogaku.jp

 

 筆者は、やりっぱなしの研修を行動定着型に転換させるため、行動習慣化メソッド(研修プログラム)と行動改善支援システム(ITシステム)を開発し、企業や大学に提供してきている。
 メソッドは「PDCFAサイクル」(PDCAに「F:フィードバック」を加えたメソッド)、ITシステムは「ActionT.C.」と名付け、延べ80社・1万2000人に提供してきた。研修の後に、行動実践のセルフチェックと振り返りとフィードバックを継続させることで、行動や思考の変容データを得ることができる。行動実践データをモニタリング・分析する中で、行動に結びつく成果の高い研修と、やりっぱなしになってしまう研修の違いを体系化するに至った。ここでは、多くが陥りがちな「やりっぱなしになってしまう研修」の問題がどこにあるのかを中心に触れてみたい。

※「PDCFAサイクル」「ActionT.C.」の概要については、弊社WEBサイト(http://pdcfa.jp/)を参照いただきたい

「研修の目的は行動変容」

 筆者は研修の目的を「行動変容」に置いている。研修後に学んだことを活かし、行動につなげることが研修の目的であるという立場に立っている。
 その視点において研修がやりっぱなしになる理由は、大きく次の3つのフェーズ(①研修の前の準備、設計、②研修の当日、③職場に戻った後)に分かれる。その中にそれぞれ3つずつ、合計9つの理由が存在する。順に説明しよう。

1.研修前の準備、設計
(1)研修ニーズの把握が甘い
 研修は経営ニーズと職場の人材ニーズのアンマッチを埋める施策と言われる。その中で有効な研修を行うためには、現場の状況把握が欠かせない。
 ところが、研修企画担当者が現場に足を運ぶことは少ない。研修ベンダーからの提案を吟味するだけで、研修の企画をやった気になっている担当者もいるくらいである。それでは、はやりの研修やウケのよい研修はできても、行動変容につながる研修がつくれるはずがない。研修の満足度が高いからといって、行動変容度が高いとは限らないのである。

(2)参加者の上司の巻き込みが弱い
 受講生の上司とのつながりが足りない研修が多いのが現実である。行動に結びついている研修は、上司と連携している。例えば、受講生が研修受講前に、上司と研修の内容を確認して期待を共有していると、研修を受ける態度が積極的になるだけでなく、研修後の行動にも良い影響を及ぼしているという調査結果がある。
 研修企画担当者は、事前に上司から、どのような行動を定着させたいかを聞き取ることで、教材開発に活かせるだけでなく、研修後の支援の協力も得やすくなる。研修企画担当者にとって、現場との信頼関係づくりが欠かせないのである。

(3)研修の案内時の動機付けがない
 研修が始まったときに「やる気」がなかったり、「なぜ受講するのか」という理解が不十分な受講生がいることがある。この状態から、講師の力だけで全員に動機付けするのは無理がある。研修の案内時の活動も、研修の一部なのである。
 「なぜこの研修が行われるのか」「なぜ自分が対象になったのか」「何を学べるのか」「どのような仕事に活かせるのか」などの研修受講理由を、研修前にすべての参加者に理解させておくことが必要だ。

2.研修当日
(1)目標が腹落ちせず自分のものになっていない
 目標設定セッションが雑で、無理やり立てさせている研修が見受けられる。課題設定が不十分で本人が納得していないものや、時間が足りず会社から与えられた組織目標の丸写しになってしまっているものもある。自分が成し遂げたいと本気で願う「揺らぎのない目標」のみが、目標達成する。しっくりこない目標は、忘れ去られるのがオチである。

(2)最初から続かない行動計画が立案されている
 研修の中で立てられる行動計画。これがまた怪しい。例えば、ある営業研修。売り上げを上げるための行動として「日々、積極的に顧客のニーズを把握する」と計画した人がいる。いったい「日々」とはいつ行うのか? 「積極的」とはどの程度の活動を指すのか? 「把握する」とは具体的にどんな行動をとると言うのか?
 このように立派な言葉でつくられた一見まともな行動計画は、立てた時点でやらない理由満載である。そうならないように、続ける技術を学ばせた後に行動計画を立てさせる必要がある。

(3)その場だけでチームが活用されていない
 研修では、受講生をグループに分け、学び合いを行わせることがある。ワークの方法はさまざまであり、ブレーンストーミングやワールドカフェ、ジグソー法といった方法や、気づきを導き出すためにKJ法やマインドマップを使うといった手法も活用される。
 もったいないのは、せっかく学び合ったこのグループが、研修後に解散してしまうことである。職場に戻った後も数カ月間、チームとして関係を維持してお互いにフィードバックさせ合うことは有効だ。ITシステムを使えば、簡単にその学習環境は構築できるのである。

3.職場に戻った後
(1)何ら行動変容を支援していない
 職場に戻った後に行動が実践されない、数回行ったとしても続かないことが多い。理由は2つある。
 1つ目は、「忘れてしまう」こと。リマインダーなど行動計画を思い出す仕組みを活用し、忘れることを防止する必要がある。2つ目は、「モチベーションが続かない」こと。自分だけの孤軍奮闘で続けることは無理がある。周りの力を活用して関わりを持たせることで、続けることが可能となる。

(2)何を効果測定したらいいか分からない
 人材育成に携わる人にとって、「人の成長を何で測るか」という問いは重要である。
 人の成長は「行動」「認知」「構成」という3要素で分類することできる。「行動」とは行動が変わること。いわゆる行動変容である。周りにも目に見えて変化が確認できるだろう。「認知」とは思考が変わること。自分の経験を深く捉え、概念・抽象化することで自分を客観視できるようになっていく。「構成」は人間関係が変わること。さまざまな知見をもつ多様な人とのつながりや重要な人との深い関係がつくられていくことは、人の成長と言える。

(3)研修がぶつ切りになってしまっている
 研修が孤立して、他の研修や人材育成の仕組みとの連動が図れていないことが多い。例えば、リーダシップやコーチングなど、組織開発や部下育成の研修を行っている企業がある。また別の研修では、若手や新人の教育も行われている。これら2階層の人材は、職場では上司・部下の関係だったり、メンター・メンティーの関係であったりする。2つの研修を連携して設計すれば、OJTの再構築のモデルが出来上がる。ところが、研修企画担当者が話し合って連携しようとすることは少ない。自分の担当の研修だけを一生懸命やっても、会社全体の育成の仕組みにはならないのである。

 このように研修のやりっぱなしになる原因を把握し、一つひとつ丁寧に改善していくことで、行動定着型の研修が出来上がる。これからの研修は、行動変容にコミットすることが必要である。研修当日だけに着目する時代から、職場での行動に着目した時代に研修プログラムを転換することによって、研修が企業の中でますます重要な施策になることだろう。
 本稿の読者には、研修や人材育成に関わる方々が少なくないと思う。ここで紹介した研修をめぐる課題のトピックスや改善の取り組みについては、拙著『人材育成担当者のための 絶対に行動定着させる技術』(ProFuture)でより詳しく紹介している。また目標達成のための行動習慣化メソッドやPDCFAサイクルに関しては、拙著『絶対に達成する技術』(中経出版)で豊富な事例を用いて解説しているので、ご一読いただければ幸いである。


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