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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2015.08.07]

[76]『「タレント」の時代―世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』

 (酒井 崇男 著 講談社現代新書 2015年2月)


 本書の著者は、タレントマネジメント分野の人材コンサルタントとして、日本の優秀な技術者が「ものづくり敗戦」の過程でリストラされる場面を散々見てきたとのことです。本書では、日本企業の多くは「タレントを生かす仕組み」を持たずに今日まできてしまったとし、変化と競争の激しい時代における、タレントマネジメントの重要性とその在り方を掘り下げています。

 第1部では、日本企業がうまくいかなくなっている現状の分析を通して、ものつくりやサービスにおいて人々が求めるものがどう作りだされるのかを解説し、そこにおいては設計情報の質が重要であり、設計情報を作っていく過程で中心的な役割となる優れた人材、すなわち「タレント」が重要になるとしています。そのことを受け、第2部で、タレントとはどういう人たちなのかを説明し、さらに第3部では、タレントを生かす仕組みについて解説しています。

 著者は、市場の成熟化や世の中の情報化・知識化・グローバル化といった流れの中で、凋落(ちょうらく)を続ける電機産業などが犯した誤りを分析し、売れないモノを高品質に作り上げても意味がないとしています。勝ち続けているトヨタと負け続けている日本のエレクトロニクス産業、あるいはソニーの迷走とアップルの躍進、といったように対比的に事例を取り上げ、「タレントを生かす仕組み」のどこに違いがあったかを解説しています。

 人事パーソンにとっての読みどころは、第1部の現状分析と第3部の解決編のつなぎの部分に当たる、第2部の「タレントとはどういう人たちなのか」を規定している箇所であるかもしれません。

 第2部で著者は、労働の内容別の賃金相場について、①知識を伴わない定型労働:時給1000円、②改善労働を伴う非定型労働:年収300万~500万円、③知識を伴う定型労働:年収400万~600万円、④複数分野の知識を伴う創造的知識労働:年収1000万~数億円とし、日本ではほとんどの公務員はハタラキに対して賃金が割高であるのに対し、年収的には3000万~5000万円程度もらっていても不思議でないタレントが、年収600万~1000万円くらいしかもらっていないとしています。

 それでは、そのタレントとはどういう人たちなのか――著者によれば、「複数分野の知識があり、創造的知識労働、目的的・改革・改善・地頭(じあたま)・洞察・未知を既知に変える能力」がタレントであるとのことです。単なるスペシャリストは、知識を活用する「目的」よりも「知識そのもの」にアイデンティティを持っている人が多く、プロフェッショナルも同様であるのに対し、優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ、「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに際立った特徴があり、そのため、タレントは目的的に知識を獲得し、獲得した知識を手段として使うとしています。

 全体を通して生産工学の視点なども交えた幅広い考察がされていて読み応えもある本ですが、第1部と第3部はケーススタディ的な要素のウエートも高く、本書のつなぎに当たる第2部が、ある意味で最もコンセプチュアルで「すっきりした」(個人的には腑に落ちた)論考がなされているように思いました。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2015年4月にご紹介したものです。

 

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 

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