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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2015.05.07]

[67]『これからの賃金』

 (遠藤 公嗣 旬報社 2014年11月)


 これからの日本の賃金には、日本で働くすべての労働者の均等処遇を目指す賃金制度が必要であり、その賃金制度は「範囲レート職務給」が中心になるはずであって、それに必要な職務評価は「同一価値労働同一賃金」の考え方で実施すべきである――というのが本書の主張です。

 ここで著者の言う「日本で働くすべての労働者」とは、正規労働者だけでなく非正規労働者も、男性労働者だけでなく女性労働者も、日本人労働者だけでなく外国人労働者も含むことを意図しています。

 そのことを象徴するように、第1章「日本企業における賃金の動向」では、非正規労働者の賃金制度から考察を始めています。また、この第1章では、正規のホワイトカラーの労働者の賃金改革の歩みを振り返るに際して、「成果主義」と「コンピテンシー」の二つを"言説"として捉え、その実態はどうであったかを述べている点や、「役割給」が普及した経緯を分析し、その特徴としての「ミッション」の概念を指摘している点は、実務者にとっても興味あるものではないでしょうか。

 第2章「賃金形態の分類を考える」では、最近の賃金制度改革の方向性を議論するための前提として、賃金形態を理論的に分類しています。雇用慣行ならびにそれに対応する賃金形態を「属人基準」と「職務基準」に大別し、さらに属人基準賃金を「年功給」と「職能給」に(職能給を職務基準ではなく属人基準としている点に注目)、職務基準賃金を「職務価値給」と「職務成果給」に分類した上で、現在の日本の賃金は、全体として、職務価値給の一つである「範囲レート職務給」に移行しつつあるとしています。

 この第2章では、「成果主義賃金」「コンピテンシー」の流行が終わったと捉え、正規ホワイトカラー労働者については「役割給」が主流となったとしていますが、その「役割給」というものを「範囲レート職務給」に近いとしながらも、「ミッション」概念が付与されているという意味で、「範囲レート職務給」まがいのものであるとしているのが興味深かったです。

 第3章「賃金制度改革の背景」では、賃金制度改革が主張される背景として、「日本的雇用慣行」と「男性稼ぎ主型家族」を組み合わせた従来型の社会システムである「1960年代型日本システム」が崩壊しつつあることを指摘しています。そうした旧来のシステムが崩壊したことの原因と労働者への影響を探る中で、正規も非正規も階層化が進んでいることを指摘している点が興味深かったです。

 第4章は本書の結論であり、1960年代型日本システムに代わる新しい社会システムが「職務基準雇用慣行」と「多様な家族構造」の組み合わせであること、冒頭に述べたとおり、そこで適用されるべき賃金制度は「範囲レート職務給」であり、その社会的規制は「同一価値労働同一賃金」の考え方の職務評価であることを主張しています。

 「日本的雇用慣行」と「男性稼ぎ主型家族」の組み合わせである「1960年代型日本システム」の崩壊が進む中で、著者が提唱する「同一価値労働同一賃金」に基づく職務評価をベースとした職務基準賃金へという方向性は、現状における正社員と有期非正規社員の賃金形態や賃金水準のギャップを埋めていく上でも示唆を含むものと思われます。非正規社員を含めた自社の賃金制度の将来的な在り方を考えていく上でも、概念的な指標になるかもしれません。お薦めです。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年12月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 

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