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Point of view [2015.01.30]

第34回 平岡禎之

職場の中の発達凸凹な人々 その傾向と対策について


平岡 禎之   ひらおか さだゆき
コピーライター
1960年、沖縄県生まれ。83年、コピーライターとして広告代理店に勤務。 自称火星人の家族とともに制作した電子絵本『ママのひみつ』シリーズが全国誌、全国誌サイト、地元紙で取り上げられ話題に。
2013年夏から地元紙「沖縄タイムス」でマンガ&エッセイ『うちの火星人』連載開始。
 14年春『うちの火星人』が単行本に(光文社)。14年秋、NHK-Eテレ福祉番組「ハートネットTV」に家族全員で出演。家庭や学校での工夫が特集された。

筆者ブログ:
「地球人なりきりスーツ」

※発達凸凹当事者である奥様の体験をペンギンに見立て、平岡氏が作詞した『飛んだペンギン』の動画がこちらで紹介されています
 (Youtubeサイトが開きます)

 

発達凸凹な人々とは?うちの火星人キャラクターからの4タイプ

 私たち家族は今、月に数回ほど発達障がいの体験発表をさせてもらっている。ある日の講話の中で受講者から「今の話を聞いて同僚に、当事者に間違いないと思える人がいる。本人に教えてあげたいがどう思うか?」と尋ねられた。質問者は、なにかいいことを発見したような好意に満ちた笑顔だ。
 だが、私の助言は「やめた方がよい」だった。それはなぜか? この本文でお答えしたい。
 わが家は、家族6人中5人が発達障がいの当事者だ。私は、家庭内で起こるトラブルとその解決を題材にしてエッセイやマンガを書いているが、当事者である家族を観察していると「障がい」と定義するのはどうも言い当てていないという気がする。その特性を言い表すには「発達凸凹」という表現が最適だと思う。なぜなら、環境さえ整えば、その特性は世界を変えるほどの大きな魅力になり得ると考えるからだ。
 それは、歴史が証明している。なぜなら、多くの専門家たちが、エジソンやアインシュタイン、坂本龍馬などは当事者であると語っているからだ。彼らは、歴史を動かし文明を進歩させた偉人たちだ。ということは、「障がい」という捉え方だと当事者の生き方を狭める可能性があるかもしれない。よって、本文でも「発達凸凹」と、表記させていただきたい。

 さて、発達凸凹な人々はさまざまなタイプがいるが、いずれもコミュニケーションが不器用であること、整理整頓や物事の優先順位を決めることや、物事の先行きを想定することが苦手だったりすることが多い。だが、発達凸凹な人々が、これらのすべてに当てはまるわけではない。共通することが多いのは、"ゼロ百傾向"と言われるように言動が極端であることくらいだ。
 発達凸凹のモデルとして、わが家族たちが職場で働いている様子をイラストとキャプションで表してみた。

ワシ型
話がよく飛ぶので内容が見えなくなりがちで、場の空気を読むのが苦手。

リス型
行動的だが、そそっかしいのでよく失敗する。行動の切り替えが早すぎて誤解される。

ネコ型
整理整頓が苦手で忘れっぽいので約束はよくすっぽかす。集中すると時間を忘れる。

イヌ型
時間や約束はしっかり守る忠実なタイプだが急な予定変更がとても苦手。

職場で起こりがちなトラブル

 発達凸凹な人々は、おおむねコミュニケーションや、その独特な言動でトラブルを起こすことが多いと言われている。
 中でも代表的なトラブルが、ミス・コミュニケーションだろう。「言った」「言わない」「聞いた」「聞いていない」という単純な行き違いが実に多い。しかも、間違えた本人は心底自分が正しいと思っている場合がほとんどだ。これは短期記憶が弱いとか客観性に乏しいことから起こるトラブルである。イラストのモデルでは、ワシ型に多いタイプだ。
 また、うっかりミス、おっちょこちょいミスが多発する落ち着きのないタイプもいる。彼ら彼女らは、頭の中の切り替えも早い者がいるので、周辺にいるだけで振り回されてしまう。イラストのリス型が、これに当たる。
 そうかと思えば、忘れ物を連鎖的に引き起こし、むちゃくちゃな手順で現場を混乱させるタイプもいる。夢中になると時間の感覚が無くなるのがその原因だが、イラストのネコ型に多い。
 さらに、時間や言葉使いに厳格で、自分も他人もきっちりそれを守らせて急な予定変更を認めないシビアなタイプもいる。仕事を頼む場合は安心感があるが、上司という立場になるとワンマンリーダーなタイプだ。イラストのイヌ型に多い。

 発達凸凹な人々は、他にも千差万別いろいろなタイプがいるので大変パターン化しにくい。
 個性派ぞろいのトラブルメーカーたちではあるのだが、誰よりも一番困っているのは本人である場合がほとんどだ。でも、見た目にはまったくそのように感じられないため誤解される。本当はパニックに陥っていても、表情に出ないことは、発達凸凹な人々の多くに見られる特徴である。当事者たちの立場で代弁すると、相手の立場になって仕事しようとするほどトラブルが増え、なおかつ誤解が深まるという構造だ。
 当事者たちの苦悩は深いものがあるが、彼ら彼女らの生きづらさは、まるで第三者に伝わらない。文科省の調査によると発達障がいの可能性のある小中学生は全体の6.5%いると公表されており、大人を対象とした調査でも、グレーゾーンを含めると当事者が約1割いると分析する専門家もいるので決して少数派の悩みと言えまい。私たちの隣にいる発達凸凹の人々は、案外多いものなのだ。

 例えば、彼ら彼女らの悩みと周囲の戸惑いを深くする一因は、その違いが見て取りづらいという点にある。やや極端な例だが、伝統的なマサイ人があなたの会社に入社してきたと想像してみてほしい。その人たちが真っ赤な民族衣装に身を包んで事務所に現れたら、文化の違いに身構えつつ慎重に接するだろう。アフリカでの生活様式のままに行動しても、私たちには思いも寄らないタイミングで跳躍をしたとしても決して叱り飛ばしたりはすまい。ところが同じマサイ人が、スーツを着た日本人そっくりの外見で同じような行動を取ったとしたら、きっとトラブルは避けられないだろう。
 高度サービス・高度情報化がもたらした便利で快適な文明社会は、世界観の異なる人々に大きな断絶をもたらしているのかもしれない。同じ世界観、同じ文化の中にあるという思い込みはしばしば摩擦の原因となる。加えて日本語の文化は侘び寂び、本音と建前、暗黙の了解など非言語コミュニケーションが主流で、発達凸凹タイプにはストレスが大きいものなのだ。発達凸凹な人々の行動と悩みを理解するためには、やや言葉はよくないかもしれないが、そこに文化の隔たりがあるようなもの、日本語の通じる異人種だと捉える感覚が大事だと思う。

解決に向けての考え方

 発達凸凹である私の妻は、聴覚過敏という特性を持ちながらフリースクールの教師として勤務しているが、同僚や上司、生徒たちの理解と協力を得て環境を整えさせてもらっている。妻は、エアコンやコピー機などの機械のモーター音や人のざわめき、パソコンを使った事務作業が苦手だ。そのため、授業中には音楽を流し、事務作業中は耳栓を使用している。耳栓を使う前は、周りの同僚に「これから耳栓します」と声をかけ、生徒たちには「耳栓で聞こえないから用事があったら肩を軽く叩いてね」と頼んでいる。妻の説明によると、もし耳栓を使わなければ「道路工事の現場で試験勉強をしている感じ」だと言う。
 これは、わがままでもマイペースなふるまいでもなく、発達凸凹の人々にはなくてはならない配慮だ。
 職場にはそれぞれ社風があり、なによりスピードや成果などの生産性が求められる時代でもあるので、このような個別対応の環境づくりは簡単なことではないだろう。

 また、個別対応をしようと思っても、発達凸凹な人とそうでない人を見た目だけで見分けるのは専門家でも難しい。複数の医療・福祉の専門家に確認したところ、生育歴や複数の検査、言動観察を経て診断されるのが一般的であるらしい。
 ただ、専門知識のない者が職場で発達凸凹な人に気づくヒントがある。それは、当事者たちの大多数には、悪意がなく、それどころか、困惑している人が実に多い。周りの人々を困らせている発達凸凹人こそが、実は一番困っているのだ。ただ問題なのは、外見上はまったくと言っていいほどそう見えない上に、当事者本人が気づいていないことが多い。なぜなら客観的に自分の言動を把握して分析するのが苦手だからだ。本文の冒頭で当事者らしき同僚への告知は「やめた方がよい」と助言した根拠がこれに当たる。
 また、病院の受診をし、診断名がついたからといって、すぐに問題が消えるわけではない。特性は脳、性格は心と分けて考えることが大切だ。なおかつ、重要なのは診断を受けることよりも問題の解決だ。
 職場でのフォローの第一歩は、発達凸凹という特性より、まずは"職場で問題が起きている"ということに着目することだと考える。違いを受け入れ、問題を一緒に考えて乗り越えて行く姿勢こそが、困っている当事者を救い、なおかつ職場を活性化することになるのだと思う。

参考資料 【人口の約1割の根拠】


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