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新任担当者のための労働法セミナー [2015.08.25]

第40回 就業規則④ 法令・労働協約との関係(労働基準法92条)、罰則(労働基準法117条~121条)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 当社の就業規則には、定年は65歳と記載してありますが、ある労働者の雇用契約書には60歳と書いてあります。この場合、どちらの年齢が適用されますか?


A1 就業規則に反する労働契約はその部分が無効になります(労働基準法93条、労働契約法12条)


【解説】

 労働契約は就業規則の定めを下回ることはできません。就業規則に達しない部分は、その部分が無効となり、就業規則に定めたとおりになります。
 もし逆に、就業規則の定年は60歳、雇用契約書の定年は65歳と記載されていた場合は、就業規則の定めに達している雇用契約書の65歳の記載は有効となります。
 就業規則と労働契約等との関係をまとめると[図表1]のとおりになります。

[図1]就業規則と労働協約等との関係


■労働基準法は最低基準を定めた法律(労働基準法1条2)

 労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律です。この法律の定めがあることを理由として労働条件を引き下げることはできません。
 例えば、労働基準法で定められたよりも多い日数の年次有給休暇を付与していたものを、労働基準法の定めがあることを理由として日数を減らすことは、この法律に違反することになります。


■法令や労働協約に反することはできない(労働基準法92条、13条)

 就業規則には、法令に反することを記載することはできません。
 特に、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分は無効になります。無効になった部分は、法律で定めるとおりになります。
 また、就業規則は労働協約に反した記載をすることもできません。
 労働協約は労働組合と使用者が、団体交渉などで合意した内容を書面に記載し、署名・捺印したものです。就業規則は、第38回でご説明したとおり、会社が一方的に作成することができますが、労働協約は、会社と労働者が合意して締結するものです。そこが就業規則と労使協定の大きな違いであり、労使が合意して作成する労働協約のほうが、会社が一方的に作成することができる就業規則よりも優先するよう定められているのです。


■労働基準法は罰則のある法律(労働基準法117~120条)

 労働基準法は、罰則のある強い法律(強行法規)ですから、たとえ労使双方で合意していたとしても、違反することができません。例えば、残業をしても割増賃金を払わないと労使双方が合意していたとしても、労働基準法では違法です。これに対しては、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が定められています。労働基準法違反の罰則については、[図表2]のとおりです。

[図表2]罰則例
1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金 強制労働の禁止
1年以下の懲役または50 万円以下の罰金 中間搾取の排除、最低年齢、坑内労働の禁止
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金 均等待遇、男女同一賃金の原則、公民権行使の保障、賠償予定の禁止、前借金相殺の禁止、強制貯金、解雇制限、解雇の予告、退職時等の証明(秘密の記号の記入)、労働時間、休憩、休日、時間外及び休日労働(有害な業務の延長時間)、割増賃金、年次有給休暇、年少者の深 夜業、危険有害業務の就業制限、妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限、産前産後、妊産婦の労働時間等、育児時間、災害補償、寄宿舎、監督機関への申告による不利益取り扱い、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等による休憩または休日の付与命令、監督上の行政措置としての工事の着手の差し止め・計画変更命令、労働時間および休憩の特例 など
30万円以下の罰金 契約期間、労働条件の明示、強制貯金の返還命令、退職時等の証明、金品の返還、賃金の支払い、非常時払い、休業手当、出来高払い制の保障給、変形労働時間制協定の届け出、1週間単位変形労働時間制の労働時間通知、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等の届け出、事業場外労働・専門業務型裁量労働制協定の届け出、年少者の証明書、未成年者の労働契約、未成年者の賃金請求権、帰郷旅費、生理休暇、就業規則の作成・届け出、就業規則の意見聴取、制裁規定の制限、法令等の周知義務、労働者名簿の作成、賃金台帳の作成、記録の保存、就業規則変更命令、労働基準監督署の臨検の拒否等、労働基準監督署への報告・出頭命令等 など



■労働基準監督官は労働法令に関し警察官と同じ権限がある(101条、102条、104条の2)

 労働基準監督署には、法令や労働協約に反する内容の就業規則の変更を命じる権限があります。法令違反の記載をした就業規則を届け出しようとすると、違反の部分を修正するよう命じられます。
 また、労働基準監督官は、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などに違反した者を、警察官と同じく逮捕または送検する権限を持っています[図表3]

[図表3]労働基準監督官の管轄と権限

【管轄】

①労働基準法 ⑤作業環境測定法
②最低賃金法 ⑥じん肺法
③家内労働法 ⑦賃金の支払の確保等に関する法律
④労働安全衛生法 ⑧炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法

【権限】(労務法関係)

①事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検(立ち入り調査)する権限(労基法101条)
②帳簿および書類の提出を求める権限(労基法101条)
③使用者もしくは労働者に対して尋問を行う権限(労基法101条)
④労働者を就業させる事業の付属寄宿舎が安全および衛生に関して定めら
れた基準に反しかつ労働者に急迫した危険がある場合に、即時使用停止
等を命じる権限(労基法103条)
⑤労基法等の違反について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う
権限(労基法102条)
⑥労基法を施行するため必要があると認めるときに、使用者または労働者に必要な事項を報告させ、または出頭を命ずる権限(労基法104条の2)


 このほかにも、①事業場などの建物に立ち入り調査し(臨検といいます)、②帳簿、書類の提出を求め、③使用者、労働者に尋問し、または④使用者、労働者に報告させ、出頭を命ずる権限を持っています。
 これらの臨検を拒んだり、尋問に対して陳述をしなかったり、虚偽の陳述をした場合などには、30万円以下の罰金に処せられます。そのため、労働基準監督署から呼び出しを受けた場合や、報告を命じられたときには、誠実に対応しなければなりません。


■監督署に申告したことで不利益な取り扱いをすることはできない(104条2)

 労働基準法違反や法令違反があれば、労働者は労働基準監督署などに申告することができます。使用者は、申告したことで解雇したり、不利益な取り扱いをしたりすることは禁止されています。


《復習&応用問題》

Q2  労働基準法には罰金や懲役といった罰則があることを知りましたが、現実にこのような罰則が適用されるケースはあるのでしょうか?


A2 通常は、「是正勧告」に対して改善を行えば、罰則が適用されるケースはそれほど多くありません

 労働者からの申告、または、定期監督等によって法違反が判明したとき、労働基準監督署から「是正勧告書」が出されます。これに対して改善し、報告すれば、現実に罰則が適用されるに至るケースはそれほど多くありません。
 労働基準監督署からの指導には、誠実に改善することが重要です。
 なお、各都道府県労働局のホームページには、労働基準法違反により送検されたということが書かれていることがあります。

Q3  使用者が労働基準法に違反した場合、処罰されるのは誰ですか?


A3 事業主と違反行為をした者の両方が処罰されます(10条、121条)

 労働基準法で「使用者」とは、事業主または事業主のために行為をするすべての者をいいます。具体的には、労働者の労働条件を決定したり、指揮監督をする人などを指します。
 この場合、部長、課長などの形式にとらわれず、実質的な権限を与えられているかどうかで判断されます。単に上司の指揮命令の伝達者の場合は使用者とみなされません。
 労働基準法に違反した場合、処罰されるのは、実際に違反行為をした者と、事業主の両方です(両罰規定)。ここでいう事業主とは、個人事業主の場合は個人事業主、法人の場合はその法人そのものをいいます。
 ただし、事業主が違反防止のために必要な措置をしていた場合は、事業主には罰則の適用はありません。
 労働者に直接的に指揮命令する者には、労働基準法等の内容を説明し、どのような行為が法違反となるのか、違反した場合はどのような罰則があるのか等をよく理解してもらう必要があります。
 なお、労働契約法では、使用者は「労働者に対して賃金を支払う者をいう」と定義されていますので、労働基準法とは異なり、事業主のみということになります。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年7月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

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 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやま ちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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