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新任担当者のための労働法セミナー [2015.04.22]

第36回 出産・育児に関する給付


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 当社には、妊娠した労働者がおり、出産後も働き続けたいと言っています。会社からは出産・育児で休んでいる期間の給料は出ませんが、どのような制度を受けられますか?


A1 産前産後休業中は給料の約3分の2、育児休業中は約50%が健康保険やハローワークから給付されます


 このほか、妊娠・出産や育児に際し、保険料免除や特例の制度などもあります[図表1]。下記[別添]の例を参考に、こうした公的制度と自社の就業規則・育児休業規程に基づいて、社内で説明するためのシート等を作成されてはいかがでしょうか?
 なお、公的制度の中には申請期限が厳しいものもあるので、滞りなく申請しましょう。

【説明用シート例のご紹介】
 女性が働きながら出産する場合を想定した、社内説明用シート例を別添としてご紹介します。なお、政府管掌健康保険の制度を記載していますので、健康保険組合によっては異なることがありますのでご注意ください。
  ⇒クリックして[別添]シート例をダウンロード

[図表1]出産・育児における給付金と保険料等の特例(休業前の月給30万円のモデルケース)

      ※クリックして拡大


【解説】

■産前産後休業中は3分の2もらえる

 労働基準法では、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)から産後8週間までの休業を定めています(労働基準法65条)。健康保険被保険者がこの期間に出産のため働けず、賃金を受けられない場合は、健康保険から出産手当金が受けられます。
 1日当たりの支給額は、健康保険の標準報酬日額(標準報酬月額÷30)の3分の2です。
 産前の日数は出産予定日から計算するので、実際の出産が予定日よりも早ければ少ない日数分となり、遅ければ多い日数分を受け取ることになります。出産当日は産前にカウントされ、産後の日数は実際に出産した日の翌日からカウントします。
 この制度は、国民健康保険にはありません。また、任意継続被保険者は対象になりませんが、1年以上継続して被保険者(任意継続被保険者の期間は除く)だった人が、すでに受給要件を満たしている場合は対象になります。

■産前産後、育児休業中の保険料は免除される

 育児休業中は、子が3歳に達するまでを上限として、会社、労働者とも保険料が免除されます。免除される期間は、育児休業を開始した月から、終了日の翌日の月の前月までです。
 同様に、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)産後8週間のうち、妊娠・出産のために働けなかった期間についても、保険料が免除されます。免除される期間は、産前産後休業開始月から終了日の翌日の月の前月までです。
 以前は、産前産後休業中についての免除制度はありませんでしたが、平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了する被保険者を対象として新たに制度ができました。
 なお、育児休業中の保険料については育児休業をしている間に、産前産後休業中の保険料は産前産後休業をしている間に申請しなければなりません。

■標準報酬月額が下がった場合の特例

 育児休業が終了(育児休業を取得しない場合は産前産後休業が終了)し、育児短時間勤務をして賃金が下がったとき、標準報酬月額が改定されます。会社が届け出をし、育児休業等が終了した後3カ月間の報酬額を平均して4カ月目から標準報酬月額を決定します。このとき、原則として17日以上働いていない月は除いて計算します。
 通常の月額変更の場合は2等級以上の差があることが要件となっていますが、この場合は1等級の差でも改定されます。
 ただし、年金受け取りの際には、改定前の標準報酬月額を基に計算されるという特例があり、この特例は、子が3歳になるまで(3歳に到達した日の翌日の前月まで)が上限です。
 この制度は、これまで、育児休業が終了したときの特例とされていましたが、育児休業を取得せず、産前産後休業だけを取得した方でも対象になるように改定されました。平成26年4月1日以降に産前産後休業が終了する方が対象になります。

■子供が生まれたら1人42万円もらえる

 被保険者が出産した場合、1人当たり42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は39万円)の出産育児一時金が協会けんぽ(または健康保険組合)から支給されます。42万円は、暫定措置として本来の金額より4万円引き上げられてきましたが、平成23年4月1日以降も引き続き42万円とされています。
 双子などの多胎妊娠の場合は、人数分だけ支給されます。
 ここでいう「出産」とは、妊娠85日(4カ月)以後の出産をいい、流産や死産、人工妊娠中絶でも支給されます。

■出産費用を立て替えずにすむ直接支払制度

 自然分娩(ぶんべん)をすると、その費用のほとんどが健康保険の「療養の給付」の対象外であり、全額を本人が負担することになります。後で支給されるとはいえ、病院等での出産費用は高額となり、いったん支払いをするのが困難なことがあります。
 そのような場合は、直接支払制度を利用していただくと、一時的に資金を用意する必要がありません。
 直接支払制度は、被保険者を通さずに、協会けんぽ(または健康保険組合)から医療機関へ直接支払う制度です。実際にかかった費用が出産一時金よりも少なかったときは、後日、差額を請求でき、多かったときは、自分で不足額を医療機関等に支払うことになります。手続きは、本人が医療機関に申請します。
 なお、帝王切開で出産した場合は「療養の給付」の対象になり、自己負担額が一定額を超えるなど要件に合致すると、高額療養費の請求ができます。

■育児休業中は給料の50%が給付される

 育児休業中は、給料の40%(当分の間は、50%)が「育児休業給付金」として支給されます。
 これまでは、健康保険・厚生年金保険の制度を説明してきましたが、「育児休業給付金」についてはハローワークから支給されます[図表2]
 この制度は、育児休業終了後に離職することが、育児休業を開始する時点で予定されている方は対象になりません。また、同一の子については、2度目以降の育児休業は、対象になりません(出産後8週間以内に育児休業を取得した父親が再度育児休業を取得する場合は対象になります)。

※なお、2014年3月中旬時点で、育児休業給付金の引き上げを盛り込んだ「雇用保険法の一部を改正する法律案」が国会で審議されており、原案通り成立した場合は、当分の間、休業開始から180日間は支給水準が67%に引き上げられます。

[図表2]育児休業給付金の概要
(1)対象者 ①1歳(要件を満たした場合は1歳2カ月、または1歳6カ月)に満たない子を養育
 する雇用保険一般被保険者

  かつ
②育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上
 ある
 (病気やケガで働けなかった期間がある場合は、最大4年まで延長できます)

 ※男性も対象になります

期間雇用者の場合は、さらに次の要件もすべて満たす必要があります。

 ①育児休業開始時に同一の会社で1年以上雇用が継続している 
 ②1歳に達する日を超えて引き続き雇用される見込みがある
 ③2歳までの間に、労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない
(2)支給額 賃金月額×50% (賃金月額=休業開始時賃金日額×支給日数)
 ※2014年3月現在審議中の改正法案が成立した場合は、休業開始から
  180日間は67%支給(本文参照)

○育児休業開始日から区切った1カ月ごとに(支給単位期間)支給されます。
 10日を超えて以上働いている場合は支給されません

○休業開始時賃金日額は次の計算式で計算します(上限、下限あり)
 育児休業開始前6カ月間の賃金÷180
 育児休業開始前に産前産後休業を取得している場合は、産前産後休業開始前
 6カ月間の賃金を基に算出します。

○この期間に賃金月額の30%を超える賃金が支払われている場合は、支給額が
 異なります。

・30%以下のとき    …50%が支給されます
・30%超80%未満のとき …賃金月額の80%と賃金の差額が支給されます
・80%以上のとき    …支給されません
○各月(支給単位期間)ごとの支給額の上限額は、21万3450円です。
 ※この解説が掲載された2014年3月現在。原則として、毎年8月に改定

 

《復習&応用問題》

Q2  ある労働者から、「妊娠したので退職したい」という申し出がありました。妊娠・出産でもらえる制度のうち、退職後ももらえるものを教えてください


A2 次の制度は、要件に合致すれば、退職後ももらえます

①出産手当金
 被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日にすでに出産手当金を受給しているか、受給できる状態にあれば、退職(資格喪失)後も引き続き受け取ることができます。
②出産育児一時金
 被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格を喪失後6カ月以内に出産すれば出産育児一時金を受け取ることができます。
 会社を退職した後、家族の被扶養者になった場合は、被扶養者としての家族出産育児一時金を受け取ることができます。ただし、両方を受け取ることはできず、いずれかを選択することになります。

Q3  妊娠初期の労働者から、切迫流産のために1カ月程度会社を休みたいという申し出がありました。年次有給休暇は残日数が10日しかありません。どのように対処すべきでしょうか?


A2 妊娠したときに、切迫流産やつわり(妊娠悪阻(おそ))、切迫早産などのために仕事を休まざるを得ないことがあります。このようなときにも、要件を満たせば傷病手当金を受給することができます

 傷病手当金は、被保険者(任意継続被保険者を除く)が次の要件を満たす場合に標準報酬日額(標準報酬月額÷30)の3分の2が1年6カ月まで受け取れる制度です(国民健康保険には制度はありません)。
 ①病気やケガで療養中であり、働くことができないこと
  入院中だけでなく、自宅療養でも対象になります 
 ②連続3日間以上休むこと(土曜日、日曜日など会社の休業も含む)
 ③賃金を受けられないこと

 傷病手当金は、4日目以降支給されます。最初の3日間は年次有給休暇とし、それ以降は傷病手当金を受け取られてはいかがでしょうか? 本人の希望により、4日目以降も年次有給休暇とすることもできますが、その場合は傷病手当金を受け取ることはできません。
 なお、傷病手当金と出産手当金の両方を受け取ることができるときは、出産手当金が支給されます。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年3月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

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●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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