jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

新任担当者のための労働法セミナー [2015.03.23]

第35回 育児休業、その他の制度②(看護休暇、時間外・深夜労働免除)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 育児休業から復帰し、1年が経過した労働者がいます。子供が熱を出したという理由で、当日に看護休暇を申請することが多く、周囲の労働者の負担になっています。そのため、「当日の申請は認めない」と規程を書き換えることを検討していますが、可能でしょうか?


A1 看護休暇は当日の申請でも拒否することはできません


 子供が小さいうちは熱を出すことも多く、会社をたびたび休まなければならないことがあります。そんなときに会社を休みにくいことが、仕事と育児の両立を難しくする原因の一つになっています。
 そのため、小学校入学前までの子を養育する労働者は、次の場合に看護休暇を取得することができます(育児・介護休業法16条の2。以下、「育介法」と略)。

①負傷または疾病にかかった子の世話をするとき
②子に予防接種や健康診断を受けさせるとき

 この制度は年次有給休暇とは異なり、急な発熱などでも取得できるよう、当日の申し出でも拒むことはできません。また、業務が忙しくても、拒むことも取得日を変更することもできないとされています(育介法16条の3)。
 なお、会社は、事実確認のための証拠書類の提出を求めることはできます。例えば病院の領収書や、保育園を欠席したことが分かる連絡帳などが考えられます。

【解説】

■看護休暇は1年度につき5日取得できる(育介法16条の2)

 看護休暇は、1年度につき5日を限度として取得することができます。対象になる子が2人以上の場合は、10日が限度です。子が2人の場合でも、1人の子につき5日しか取得できないものではなく、1人の子のために10日を取得することもできます。
 この制度には、年次有給休暇の「比例付与(所定労働日数が少ない労働者には付与日数が少なくなる)」の考え方はなく、所定労働日数が少ない労働者であっても、5日(子が2人以上は10日)を取得することができます。
 これは、年次有給休暇とは別に取得できるものですが、年次有給休暇とは異なり、無給でも構いません。また、取得は、1日単位と考えられていますが、半日単位や時間単位での取得など、法律を上回る制度を導入することは可能です。
 なお、1年度は、4月1日から3月31日までをいいますが、会社で別に定めても構いません。
 前回ご説明したものを含め、育児関連の制度を[図表1]にまとめましたので、参考にしてください。

[図表1] 育児関連の制度(クリックして拡大)
 

■所定外労働は3歳まで免除される(育介法16条の8)

 3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて働かせることはできません。「所定労働時間」は、「法定労働時間(1日8時間・1週40時間)」とは異なり、就業規則などで労働すべき時間として定められたものです。
 労働者が請求した場合に免除が必要になるものであり、労働者が希望しない場合には、所定労働時間を超えて働かせても構いません。

■小学校入学前までは時間外労働を月24時間、年150時間に制限される(育介法17条)

 小学校入学前までの子を養育する労働者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、月24時間、年150時間を超える時間外労働をさせることはできません。
 ここでいう「時間外労働」は、「法定労働時間」を超える時間をいい、先ほどの「所定労働時間」とは異なります。

■深夜労働は小学校入学まで免除される(育介法19条)

 小学校入学前の子を養育する労働者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜(午後10時~午前5時)に働かせることはできません。
 ただし、所定労働時間の全部が深夜にある労働者や、深夜に常態として子を保育できる同居の家族がいる労働者は請求できません。
 深夜に常態として保育ができる同居の家族とは、16歳以上であって、次のいずれにも該当する者をいいます。
 ・深夜に就業していない(深夜就業が月3日以下)
 ・負傷、疾病、心身の障害により保育が困難でない
 ・産前6週間(多胎妊娠は14週間)産後8週間以内でない

■転勤には配慮が必要(育介法26条)

 会社は、労働者を転勤(就業場所の変更を伴う配置変更)させる場合には、その育児または介護の状況に配慮が必要です。
 具体的な配慮の内容は、次のように例示されています。(「指針」(※)第2・14)

①子の養育または家族の介護の状況を把握すること
②労働者本人の意向を斟酌(しんしゃく)すること
③就業場所の変更をする場合には、育児または介護の代替手段の有無の確認をすること

 転勤を命じることが全くできないというわけではありませんが、労働者が被る不利益の程度が著しければ、転勤命令が権利濫用にあたる可能性があります。
 判断は個別に事情が異なるため、簡単ではありませんが、負担が大きくなる労働者の転勤命令は慎重にする必要があります。

 なお、ここでいう「育児」には、年齢の限定はなく、小学生や中学生も含めます。

[編注]上記「指針」の正式名称は「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が 図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針 」(平21.12.28 厚労告509)。以下も「指針」と略。

■不利益な取り扱いは禁止されている(育介法10条、16条の4、16条の9、18条の2、20条の2、23条の2)

 会社は、ここで記載している制度の利用を申し出たことや取得したことで、解雇などの不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
 不利益な取り扱いとして、例えば次の行為が挙げられています(「指針」第2・11)。

①解雇すること
②期間雇用者の契約更新をしないこと
③契約回数の上限を引き下げること
④退職を強要すること、正社員をパートタイマーにするなど契約内容の変更を強要すること
⑤自宅待機を命ずること
⑥労働者が希望しないのに、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務などさせること
⑦降格させること
⑧減給したり、賞与で不利益な算定をすること
⑨昇進・昇格の人事考課で不利益な評価をすること
⑩不利益な配置変更をすること
⑪就業環境を悪くすること

■働かなかった分の賃金を支払う必要はない

 不利益な取り扱いの一つとして、「⑧減給したり、賞与で不利益な算定をすること」が例示されています。
 働かなかった期間や時間に相当する賃金を支払わないことは、ノーワーク・ノーペイの原則により、不利益な取り扱いに該当するものではありません。しかし、働かなかった期間や時間の分を超えて減額すれば、不利益な取り扱いに当たります。
 例えば、賞与の計算で、基礎となる出勤日数に産前産後休業を取得した日を含めず、算定期間の出勤率が90%未満だったために、賞与を支給しなかったことを無効とした裁判例があります(東朋学園事件 最高裁一小 平15.12.4判決)。

 

《復習&応用問題》

Q2 所定外労働免除の制度(育介法16条8)と時間外労働の制限(同法17条)とよく似た制度が二つあり、よく分かりません。制度の特徴をもう少し詳しく説明してもらえますか?


A2 会社の所定労働時間を基準とするか、法定労働時間を基準とするかという点が大きな違いです

 所定外労働免除(育介法16条の8)が就業規則などに定める労働時間を基準としていることに対して、時間外労働の制限(育介法17条)は法定労働時間を基準としていることに大きな違いがあります。
 また、3歳未満の子を養育する労働者は、育児短時間勤務と所定外労働免除の制度の両方を同時に申請することができます。つまり、1日の労働時間を6時間とした上で、その時間を超える労働の免除(育介法16条の8)を申請することができるということになります。
 もともと、時間外労働の制限(育介法17条)があったところへ、法改正により、平成22年6月から所定外労働の免除(育介法16条の8)と育児短時間勤務が義務化されました。
 また、時間外労働の制限(育介法17条)は小学校入学前まで使えますが、所定外労働の免除(育介法16条の8)は子が3歳になるまでしか使えません。子の年齢に応じて仕事と育児を両立しやすい制度を選べばよいでしょう[図表2]

[図表2] 所定外労働の免除(育介法16条の8)と時間外労働の制限(同法17条)の違い

  所定外労働の免除
(育児・介護休業法16条の8)
時間外労働の制限
(育児・介護休業法17条)
基準となる
労働時間
所定労働時間(就業規則などに定める労働時間)を超える労働 法定労働時間(1日8時間1週40時間。変形労働時間制の適用は可能)を超える労働
超過する
労働時間数
なし(免除される) 月24時間、年150時間まで
対象となる
子の年齢
3歳に満たない子 小学校入学前
     

 

Q3 残業免除の制度、時間外労働の制限、深夜業免除の制度などは、「事業の正常な運営を妨げる場合」には拒むことができるとされています。このたび、残業免除の制度を申請してきた労働者がいますが、その部署の事業の運営上、残業をしてもらわないと困ります。このような場合、利用を拒否することはできますか?


A3 事業の運営上必要というだけで拒むことはできません

 「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するかどうかは、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代行者の配置がしやすいかどうか、などの事情を考慮して客観的に判断すべきものとされています。単に事業の運営上必要という理由だけで拒むことはできません。
 例えば、繁忙期において、同じ時期に多数の専門性の高い職種の労働者が請求した場合で、通常考えられる相当の努力をしても、事業運営に必要な業務体制を維持することが著しく困難な場合が「事業の正常な運営を妨げる場合」として考えられます。

Q4 これから出産、育児をする労働者がいます。育児休業中、会社の賃金は休んだ分だけ減額すると社内規程に明記していますが、その期間中は何か補てんされるのでしょうか?労働者に説明してあげたいので、整理して教えてください


A4 詳細は次回ご説明します

 育児休業期間中の社員に対しては、給与分の補てんとして支給される育児休業給付金や社会保険料の免除などさまざまな制度が設けられています。これらについては、次回に詳しくご説明します。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年2月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

●人事・総務担当者なら知っておきたい、よくあるケース・実務のポイントを123問のQ&A形式で解説!

●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

書籍の詳細、内容見本の閲覧、ご注文はこちらをクリックしてください

下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


労務管理、人事評価、ハラスメント対応など充実のコース!

労務行政eラーニング 詳しくはこちら

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品