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新任担当者のための労働法セミナー [2015.01.23]

第33回 女性②


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 製造業のラインで働くパートタイマーから、「妊娠した」という報告がありました。何かあっては大変なので、しばらく休むよう言ったところ、「働きたい」と言われ、困っています。どうしたらいいでしょうか?


A1 本人が希望していないのに働かせないことは、不利益取り扱いと考えられ、禁止されています


 男性にとって妊娠は未知のことであり、対応に苦慮することが多いようです。
 母子の健康を考えての言動でも、本人からすれば「差別的取り扱いを受けた」と感じることもあるかも知れません。ご質問のケースも、「不利益取り扱い」として禁止されている行為の一つですから、休むよう強制することはできません(男女雇用機会均等法9条3項)。

【解説】

■妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いは禁止されている(労働基準法19条、男女雇用機会均等法9条)

 労働基準法19条では、産前6週間(多胎妊娠は14週間)、産後8週間とその後30日間の解雇は禁止されています。
 男女雇用機会均等法9条でも、妊娠、出産、産前産後休業を取得したことを理由とする解雇を禁止しています。また、妊産婦(妊娠中および出産後1年を経過していない女性)の解雇は、妊娠・出産などを理由とする解雇ではないことを証明しない限り、無効とされます。
 このほか、男女雇用機会均等法では、産前産後休業を取得しようとしたことや母性保護措置を受けようとしたことなどによって解雇その他不利益な取り扱いをすることも禁止されています[図表1]

[図表1]妊娠・出産などでの不利益取り扱いの禁止

不利益取り扱いが禁止される理由 不利益取り扱いと考えられる例
  1. 妊娠したこと
  2. 出産したこと
  3. 妊娠中、出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を受けたこと
  4. 坑内業務の就業制限もしくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、またはこれらの業務に従事しなかったこと
  5. 産前産後休業をしたこと
  6. 軽易な業務に転換したこと
  7. 変形労働時間制の場合で、1週間または1日について法定労働時間を超える時間について労働しないこと。時間外労働、休日労働、深夜業をしなかったこと
  8. 育児時間を取得したこと
  9. 妊娠、出産に起因する症状により労務の提供ができないこと、もしくはできなかったこと、または労働能率が低下したこと
  10. 育児休業、介護休業や看護休暇の申し出をしたことや取得したこと(育児・介護休業法10条
  1. ①解雇すること
  2. ②期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  3. ③あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  4. ④退職または正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  5. ⑤降格させること
  6. ⑥就業環境を害すること
  7. ⑦不利益な自宅待機を命ずること
  8. ⑧減給をし、または賞与等において不利益な算定を行うこと
  9. ⑨昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
  10. ⑩不利益な配置の変更を行うこと
  11. ⑪派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと

[注] 不利益取り扱いが禁止される理由のうち、3~8は申し出をしたことによる不利益取り扱いも含む。


■健康診査等を受診する時間を確保しなければならない(男女雇用機会均等法12条)

 事業主は、妊産婦のための健康診査等を受診するために必要な時間を確保できるようにしなければなりません。その回数は、妊娠週数に応じて定められています。

妊娠週数確保する回数
 妊娠23週まで4週間に1回
 妊娠24週から35週まで2週間に1回
 妊娠36週以後出産まで1週間に1回


 産後については、医師が健康診査等を受診することを指示したときは、その時間を確保できるようにしなければなりません。

■医師の診断に基づいた対応が必要(男女雇用機会均等法13条)

 妊娠中は、満員電車による通勤が母体に悪影響を及ぼす場合があります。医師等(医師または助産師)の指導に基づいて、労働者から通勤時間をずらすなどの配慮をしてほしいと申し出があれば、対応が必要です。そのほかにも、労働者からの申し出によって、担当医師等の指示の下での適切な対応が義務づけられています[図表2]

[図表2]男女雇用機会均等法で定められた母性健康管理措置

妊娠中 産後1年以内
  • 妊娠中の健康診査の時間を確保しなければならない。ただし、医師等がこれと異なる指示をしたときは、その指示に従う(12条)
  • 妊娠23週まで4週間に1回
  • 妊娠24週から35週まで2週間に1回
  • 妊娠36週以後出産まで1週間に1回
  • 医師の指導に基づく措置(13条)
  • ①通勤緩和…時差通勤、勤務時間の短縮、交通手段の変更等
  • ②休憩…休憩時間の延長、増加、時間帯の変更
  • ③症状等に対応する措置…作業の制限、勤務時間の短縮、休業
  • 医師が健康診査等を受けることを指示したときは、その時間を確保できるようにしなければならない(12条)
  • 医師の指導に基づく症状等に対応する措置 (13条)…作業の制限、勤務時間の短縮、休業

[注]上記はいずれも、労働者の申し出があれば対応が必要となるもの。

 また、労働者から、「母性健康管理指導事項連絡カード」の提出等により、主治医等から指導を受けた旨の申し出があったときは、必要な措置を講じなければなりません。このカードは、医師等から伝達が確実にされるために利用されています。診断書と同様に扱い、記載内容に従って対応しなければなりません。
 妊娠中の女性は流産や早産の危険性があります。母子の生命にかかわることですから、十分に注意しなければなりません。申し出があったのに対応を怠り、母子の症状が悪化すれば、会社責任(安全配慮義務)を問われる可能性があるという認識が必要です。

 なお、医師等からの指導事項を守ることができるようにするために必要な措置として次の三つが掲げられています。
(1)妊娠中の通勤緩和
(2)妊娠中の休憩に関する措置
(3)妊娠中または出産後の症状に対応する措置

■生後1歳まで育児時間を取得する権利がある(労働基準法67条)

 生後1年に達しない子を養育する女性が請求した場合は、会社は休憩時間のほかに、育児時間を与えることが義務づけられています。この制度も労働者の請求によって与えなければならないもので、請求がなければ与える必要はありません。
 育児時間は、1日2回、それぞれ少なくとも30分を与えます。労働の始めや終わりでも請求されれば拒否できません。育児休業や介護休業は男性でも取得できますが、育児時間は授乳を目的としているため、女性だけに与えられた権利です。
 生後1年まで、育児休業を取得する労働者が多くなったので、この制度を利用する者は少なくなりました。

■生理休暇を取得する権利がある(労働基準法68条)

 生理日に働くことが著しく困難であると労働者が請求した場合、その者を就業させてはなりません。
 これは単に生理日であるというだけで休暇を認めるものではありませんが、医師の診断書まで求めることはできません。
 また、休暇の日数を制限することはできませんが、有給扱いとする日数を限定することはできます。休暇は1日単位に限らず、半日や時間単位で請求されれば、会社はその範囲で就業させなければよいとされています。

■働かない分を減額することはできる

 会社は、産前産後休業や生理休暇などを与えることが義務づけられているだけで、休んだ分の賃金を支払うことまで求められているわけではありません。
 年次有給休暇以外は、いずれの制度も働かなかった時間の賃金を減額しても構いません。ただし、有給か無給かは、就業規則または賃金規程に定めておく必要があります。
 また、休んだ時間以上に減額したり、降格したりするなどの不利益な取り扱いは禁止されています。


《復習&応用問題》

Q2 妊娠した労働者から、混雑した時間帯を避けるため、始業時間を1時間遅くしてほしいという申し出がありました。「母子健康管理指導事項連絡カード」には、何も記載されていませんが、このような場合でも対応すべきでしょうか?


A2 担当の医師等と連絡を取り、判断を求めるなどの対応が必要です

 「母子健康管理指導事項連絡カード」の提出があった場合は、指導に基づく対応をしなければなりません。医師等からの具体的な指導がない場合でも、本人からの申し出があれば、会社は必要な対応をしなければなりません。具体的には、本人を通して医師に判断を求め、それに基づいて対応するとよいでしょう。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年12月にご紹介したもの
 です。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

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 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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